椅子制作、いくつかの覚え書き

はじめに
猛暑が襲いかかっています。木工に従事されている方々の体調が懸念されますが、いかがお過ごしでしょうか。
梅雨入りの期間は記録的な短さで驚きましたが、これが気象変動というモードの1つの表象という認識が正しいとすれば、大変な時代に突入したんだなと、妙に得心がいく昨今ですが、この猛暑を凌ぎ、収穫の秋を準備する時期として淡々と勤しんでいきたいものです。
前回に引き続き、椅子制作における木工の要諦について、いくつか書き記しておこうと考えています。
椅子制作は部品1つ1つにいくつもの加工工程があり、またそれらの加工工程のいずれもが傾斜角や曲線で構成されていることが多く、直線と定常的な角度で構成されるハコモノなどと異なり、柔らかな思考と柔軟なアプローチが必要です。
こうした制作手法は一般的な木工技法を基軸としつつも、椅子制作特有の領域も多く、こうしたところへの個別のアプローチにおいては制作者固有の技法を取ることも多く、どれがベストな手法なのかを定義づけることはあまり意味のあるものでは無いように思います。
ここで紹介する手法はあくまでも40年近い木工稼業の中から編み出した私なりのものになります。
ただその中にはいくつかのエッセンスが詰め込まれているかも知れず、そうしたところを読み取っていただき、必要とあらば取り込んでいただければうれしいです。
ところで、椅子制作固有の問題として、傾斜角、曲面などのアプローチが多いところから、一般的な木工技法からは精度の確保が難しかったり、生産性に問題を抱え込むと言うこともあるでしょう。
加工精度や、生産性の低さをどのように解決していくのかは、椅子制作における大きな課題です。
これらの工程をいかに高い精度を維持しつつ、生産性を高めるかに、プロとしての腕が問われてくるところです。
そうした観点から数回にわたり、加工工程ごとに、その考え方、アプローチ、手法についての要諦を考えていきたいと思います。
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