「第6回 暮らしの中の木の椅子展 」入選
数日前だったか、朝日新聞社から「第6回 暮らしの中の木の椅子展」の審査結果が届いた。
応募していた中から1つの椅子が入選、という結果。
実は2点応募していたのだが、そのうちの本命の方は、第1次審査段階で早くも選外となって落胆させられていたのだったが、残る“押さえ”の方が意外にも難関突破、ということになったという次第。
今回入選したのは「ちょこっとハイスツール」と名付けた小椅子だ。(最下段の画像)
“押さえ”と位置づけたのは、昨年春頃だったか、ある女性の客から制作依頼された椅子をもう一つ余分に制作していたものを応募するという少し不埒なものであったし、またハイスツールの小椅子という、椅子という世界の中にあってはマイナーなジャンルのものであれば、あまりまともな評価の対象にはならないのではと腰が引けていたものだったからね。
何が幸いするかは分からないものだね。
ん?、選外になった本命は?
あまり詮索するのは止めておこう。
これは他のあることろではしっかりと評価され、既に数台制作しているもので、決して品質的に劣るものではないと確信している。
ま、落選したものを作家があれこれと恨めしく語ることは、ただの犬の遠吠えにしかならないだろうから、これ以上は言うまい。
むしろ、期待もしていなかったものを入選させてくれた審査員に感謝しておくことの方が、応募した者としての矜持の示し方であろう。
ボクはこの朝日新聞社の「暮らしの中の木の椅子展 」初回には1つ応募して、これが入選するという経緯があったのだが、この時はとても驚いたことがあった。(こちらのもの)
川上元美、岩倉縈利、須長壮太郎、佐々木敏光、清水忠男、井上昇など各氏、著名で第1線級の世界大的な活動をしている人を含むデザイナーが応募し、入選を果たしていることを知った時のことだった。
既に功成り名遂げたデザイナーたちだ。応募してくる作品を審査員の側から点数を付けるにふさわしい面々でもあるだろうに。
このコンペの企画は朝日の名古屋本社、企画部が立てたものだが、実はこの企画へ向けての経緯を少し知りうる立場にいた。
元は名古屋での木工家の椅子の展示会をこの企画者が見たことが1つのきっかけとなり、大々的な公募展へと発展していったのだが、こうした初発のきっかけからして上述のような面々が応募してきたことに驚いたのだ。
もちろん、陶芸展、現代クラフト展、など工芸界各界における大きな公募展を運営してきた朝日新聞社という企画本体への信頼性、ブランド力、などへの魅力というものがあっただろうし、椅子の公募展という、極めて分かりやすいものでありながら、これまでなかったジャンルへのチャレンジ精神もあっただろう。
驚いたのは、我々のようなほとんど無名な木工家、木工志願の若者と伍して、肩を並べて一線に並び、よーい、ドンとスタートするという潔さであり、これはまたプロ意識の何たるかを知らされるものでもあったのだ。
なおこれは企画が決まり、まだ知られていなかったこのコンペについて企画担当者からの依頼で多くの関係者の方々に、企画関連情報を流していた時のこと。
地元の少し売れっ子の木工家に言われたものだ。
「どうしてオレが、君たちと並んで応募しなきゃならないの?もうボクはこう言うのは、いいのよ‥‥」と。
なるほど、とその時は、それ以上応募を促すことはしなかったが、この審査結果での著名なデザイナー、木工家の名前が並んだリストを前にして、この応募を不要なものと断じた売れっ子作家にはどのような思いがめぐったのかは知るよしもない。
ボク自身も、実はその頃のこの人とほぼ同じ年齢を迎え、ある思いが去来することも事実だ。
どういうことかと言えば、この年齢になって如何に創造性を枯渇することなく、維持し続け、チャレンジ精神を燃やすことができるのかということについてである。
しかし上述した面々のうち少なからぬ人々は、そうした姿勢を示し続けていることを見せてくれているのであって、後塵を拝し、少しでもそうした姿勢に近づけるようにもう少しがんばり続けねばと、この入選を機に思ったものだ。
*参照サイト
■ 「第6回暮らしの中の木の椅子展」
■ 「第6回暮らしの中の木の椅子展」作品募集
acanthogobius
2008-3-10(月) 12:33
入選おめでとうございます。
5月にOZONEで対面できるのを楽しみにしています。
artisanさんの作品に東京で触れられる数少ないチャンス
だと思いますので。
kent
2008-3-10(月) 20:39
入選、おめでとうございます!!
このスツール、以前見て気に入ってましたので
入選と聞き、密かに喜びましたよ。
このスツール、新居にほしいなぁって思ってましたし。
製作依頼しちゃおうかな(^^)
(家の基礎工事もまだなのに、気が早いって)
artisan
2008-3-10(月) 21:43
acanthogobiusさん、祝意をありがとうございます。。
例え小椅子でも“押さえ”でも、評価されればここは素直に喜びたいですね。
ただ目の肥えたacanthogobiusさんの前ではこの椅子も赤面するかもしれません。
○──────
kentさん、さすがにお目が高い(笑)
新築、いよいよのようですね。気合いを入れていきましょう。
kokoni
2008-3-11(火) 11:40
おめでとうございます
なかなか素敵なデザインですね
カウンターにいいかな?
artisan
2008-3-11(火) 23:03
この〈ちょこっとハイスツール〉はあなたに出会うために作られたのです。
kokkoniさん、このコピー、どうでしょうか。ちょっとクサイですかね。
‥‥、実はこれ、MacBook Airのガイドブック、冒頭のメッセージからの拝借なのです。
ユマニテ
2008-6-29(日) 08:15
おはようございます。
昨日OZONEに行ってきました。
精緻な仕事に背筋をのばされる思いでした。
artisan
2008-6-29(日) 20:14
ユマニテさん、 OZONE楽しめましたでしょうか。
貴Blogにありますように、複数の会場に分散展示されたのには、合理的な理由もあったのでしょうが、いささか疑問に感じますね。
記憶が薄れないうちに、選考委員による講評についても記述せねばいけません。