工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

切削方向を考えて(面取盤の安全な活用 ─ 2/2)

ルーター+面取り盤
画像は座卓の脚部の成形加工の作業。
手前に「ピンルーター(ルーターマシーン)」、後ろが「高速面取盤」(画像は合成)
厚みが3寸(90mm)ほどあるので、こうした厚みの成形加工(倣い加工)は一般には「高速面取盤」で行うものだが、曲面のRが結構きついデザインで、どっちから運行させても部分的には大きな逆目となり、材厚を併せ含め考えれば、かなりリスクが高くなる。
そこで回転が逆になる「ピンルーター」との併用を行うことで、このリスクを回避する。
大きな工場では、こうしたことを想定した「2軸高速面取盤」というものを設置していたりするらしい(見たことはないが、世話になった親方のところではこれがあったらしい)
確かに「ピンルーター」では「高速面取盤」に較べその切削力ははるかに劣る。
しかし逆目切削で過度な負荷が掛かり、材を破損するよりは良いだろう。
厚みへの対応は、深さ設定を2度に分けてやればさほどの問題ではない。
面取り盤このような理由から機械のレイアウトも隣り合わせに設置する。
曲面切削における良いコンビネーションというわけだ。
さて、前回の工場内での退職前の職人さん。
面取盤に張り付いて、どのような作業をしていたのか詳しく観察していたわけではないが、よどみのない動作で作業に専念していたようだし、また先輩職人がアドバイスするような気配もなかったので、良い結果を得られたのであろう。
ルーターやら、面取盤やら、いわゆる木工房では、決して普及している機械ではないようなのだが、その決して小さくない理由の1つとして、この種の機械はキケン、
木工房が積極的に使うようなものではない、といった頓珍漢で間違った噂が流布しているという話しも漏れ伝わってきている。
こうした見解がこれらの機械にどれだけ習熟してのものであるのかは知らないが、これらの機械の性能と、その特性をよく理解し、これを自家薬籠中のものとしていくならば、私たち木工房における製作加工精度の高度化、生産性の高度化にどれだけ寄与してくれるのか、これはやはり経験してみなければ理解できないのかも知れないね。
いずれ機会があれば、この彼女にこれらに関する見解を質したいと思うが、恐らくはボクの認識と大きな違いを語ると言うようなことは無いだろう。
では、こうした木工機械を使うことのできない環境で同様の曲面加工をする場合、どのような手法があるのだろうか。
恐らくは帯ノコで丁寧にカットし、後は手鉋、つまり反台鉋、南京鉋の類でのアプローチとなるだろうかね。
厚みがあるので、これを高精度で仕上げるのは、かなりの難易度がある。
あるいは、サンディングマシーンでの成型加工というような手法があるのかもしれないが、これは当然にも切削精度において期待できるものとはならない。
前回触れた家具製造会社でそのようなことを試みたとすれば、親方からの手厳しい叱責を受けること請け合いだね。

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