工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

BOSCH ドリルビットシャープナーの効能

BOSCH ドリルビットシャープナー本体にドリルビットを装填しているところ

あれば良いのにな、と思う工具は数知れずあるが、購入への飛躍はその必要性の度合いによって優先順位が定まるのは当然としても、ちょっとしたきっかけでポチッしちゃうこともある。

このドリルビットシャープナーもそれにあたる買い方だった。
ある太さのドリルビットを折損させてしまった。
刃物の価格は1本1,000円ほどだろうからさほどの出費ではないが、実はうちには他にも折損させてしまった刃がゴロゴロと。

この際、それら全てを復活再生してやろうと思い立ち(我ながら見上げた心構えだ)、購入に踏み切った。
なんか、めちゃくちゃ高価な買い物のような物言いだが、実勢価格8,000円ほどのもの。
飲み会を2回パスすれば届く金額(実際その場に立ったら、そんな天秤など掛けないけど‥‥ 笑)。

ホントのところは、この「ドリルビットシャープナー」なるもの、その実力のほどは如何に?という懸念が購入に踏み切る阻害要因となっていたことも確かで、荷が届くとさっそく開梱し、テスト、確認。

研ぎ上げたところ(中央シルバーのもの)

結果、杞憂は払拭され、大いに利用価値ありと観た。
中折れした刃物の復活はもちろん、切れ止んでいたビットの全てを研ぎあげた。

最初はその勘所を掴むのに数回の失敗を余儀なくされたが、1度体得してしまえば、後はルーチンで首尾良くいく。

ただ中折れしたものなどは、あらかじめグラインダーなどでプレ成形しておいた方が良い。
ある程度の刃の形状を作っておくといった程度で十分。

研磨できるサイズは2.5mm〜10mm。
実はうちの折損したビットは2.0mm以下と、このシャープナーの規格範囲外のものが多かったのだが、苦労しながらも何とか刃を付けることができた。
当然のことだが、規格外の細い径のものほど難しい。

重要なポイントは2つ。

  1. 左右2個所の研磨は均等に。センターをしっかり出すこと(一定の経験も必要)
  2. 切れ刃角は穴に挿入すればほぼ間違いなく確保できるが、逃げ角(約12°)を必ず付けること。このBOSCHドリルビットシャープナーは機構上、この逃げ角も確保できるようなものとなっているようだが、しょせん手作業での制御なので、「逃げ角、逃げ角‥‥‥」と心の中で呪文を掛けながらやること。

本体の内部(ピンクが砥石)

この工具の機構は画像の通り。
ツイストビットの規格、先端切れ刃角、118度を維持するように14度の傾斜をもった砥石が回転し、それぞれの刃径に応じた口の先端には、ビットの一定の領域だけが砥石に当たるような機構になっていて、これを手先で180度反転させることで均等に研ぎ上げる、という機構だ。

ところで、ドリルビットだが、うちでは主要な刃径ではほぼ2本づつ揃えている。
1本はツイスト(Twust)形状(金工用)そのまま。
もう1本は、ブラッドポイント(Brad-point)形状(木工用)に成形加工したもの。

一般に市場に流れているブラッドポイント形状の木工用ドリル刃は、そのほとんどが炭素工具鋼。
これでは針葉樹に対応はしても、軟弱であり、雑木、堅木には刃が立たない。
したがってHSS、SKH(ハイス鋼)以上の高度を持つ鋼でなくてはならない。
つまり良質な鉄工用のものを使おう、ということ。

ただツイスト形状では先端が逃げやすいので、しっかりとセンターが保持でき、かつ外周にバリが出にくい毛引き刃を持つ、ブラッドポイントに改造してやることが必要となる。

それに適合する先端形状の砥石を探してきてやれば、意外と簡単にできるもの。(詳細は過去関連記事に)
無理であれば、丸鋸の研磨をしてもらっている研磨屋さんに頼むのが良いだろう。
そんなこともできない研磨屋であれば願い下げだよ。

ツイスト(Twust)、ブラッドポイント(Brad-point)の違いは、2つめの画像の通り(クリック拡大)。
ブラッドポイントのものは全て自分で成形研磨したものなので下手くそなところはお目こぼしを。

*参照
BOSCH ドリルビットシャープナー

hr

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