工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

sisyphusの如くの終わりなき戦い(福島での除染実証実験は続く)

二本松、田んぼでの農家との除染方法協議(NHK 国際部による取材も)



下の画像、ガイガーカウンター(GM菅)、Terraは60μSv/h以上の数値を示している。
高性能のサーベイメーターの方は、測定限界(30μSv/hを超えてしまい針が振り切れた)
こんな怖ろしい数値を吐き出すのは、福島第一原子力発電所から60kmと離れているはずの、福島市内のとある大型ショッピングセンターの駐車場の一角。
計画的避難区域や特定避難勧奨地点でもない、通常の暮らしを営んで良いとされている福島市内、中心街からわずかに数kmの場所である。

大人でさえ近づくのはヤバイ。
このポイントは一般道路から手が届く距離のところであるので、子供たちの通学途上に遭遇してしまう、そういう場所だ。

福島市内でも市主体の除染活動が行われはじめたらしいのだが、どこまで厳しく計測
調査し、どれだけ効果的な除染ができるのかは、はなはだ心許ない感じがしている。

数泊、駅前のホテルを取ったのだが、館内、部屋では、ここ静岡の地と変わらない低い数値を示してくれるおかげで、熟睡させてもらった。
前回宿泊させていただいた関係者宅では線量計のアラームが鳴り響き、慌てさせたのだったが、冒頭の駐車場の状況と併せ、このように汚染状況は同一市内、同一地域でも、大きなばらつきがあり、一様では無くまだら模様だ。
周囲の地形、土地利用状況、舗装、未舗装の別、等々、様々な要因でその現れ方はまちまちだ。

駐車場は一般には舗装されており、雨が降れば張り付いたセシウムは流れだし、低い個所へと容易に移動する。暗渠へと流れ落ちるところに土や雑草があれば、そこに吸着、固定する。

3.11直後暫くは重武装で身を固めていたという子供たちだが、今ではマスクをせずに、はしゃぎ歩いている。
あるいは冒頭のような線量計測が管理者(ガードマンなど)などに見つかると、飛んできて不安を煽るような事は止めてくれと居丈高に制止しようとする。

また居酒屋の暖簾をくぐれば、酔客は怖れを隠そうとするためなのか、酔いは深く、彼らの哄笑はより高らかな感じさえしてくる。

3.11後、一時はこうした飲み屋街の灯りも寂しげだったそうだが、ボクが今回観た限りでは大いに繁盛しており、聞けば原発事故由来の仕事に従事する労働者によって賑わいが復活しているのだとか。
原発事故様々という、ひねた苦笑いが聞こえてくるような話しが多かった。

今回ボクは2度目の福島入り。〈放射能除染・回復プロジェクト〉への参加のためである。

前回、民家の屋根などの高圧水洗浄方式では無い、矧がし取り方法を行ったところでの検証、あるいは農地での除染活動の検証、農家が起ち上げたNPO組織を構成する方々との連携した除染方法の協議、などなど盛りだくさんの活動をさせていただいた。

今回も福島のかた方からいろいろと学び、プロジェクトの先生たちの英知にも触れ、そして深く考えさせられた。
福島の現状はとても厳しく、そんな中でも人々は終わりの無い日常を生きていく。

福島第一原子力発電所事故において、政府筋は12月16日にも「冷温停止状態」を宣言、つまりステップ2の年内達成の目標を前倒しするとのこと。(NHK

先に政府は、1号機の燃料はメルトダウンし、圧力容器をたやすく溶け落とし、さらにはその外側の格納容器の底にあるコンクリートを溶かし、底まであと37センチの深さに迫っている恐れがあるとの状態とした。
これは誰も見ることができなければ、様々な計器類すらまともに機能していない状態で、どれだけの科学的根拠を持った分析であるのかは不明。

「原子炉は健全」「ただちに、健康には‥‥‥」と騙し続けてきた人たちの分析をどこまで信頼して良いのか、ボクには全く判然としない。
そうしたこの問題を巡る情報の信頼性の無さからして、「冷温停止状態」の宣言がどれほどの意味を為すのかは推して知るべしだろう。

こうして事態は予測を超えた早さで収拾へと向かいつつあるかのように映ずるが、しかし現地に降り立ち、ガイガーカウンターをポケットに忍び込ませ街中を歩けば、とても子供たちが住まう環境にあるとは言えない実態を突きつけられてくる。

農業生産者と話せば、福島県の安全宣言後に収穫した米を親戚縁者に分け与え、既に美味しく腹の中に収まったものをどうして元に戻せと言うのか、倉庫に大量に積み上げた玄米、椎茸は、今や食品では無く、放射線汚染物と言われ、ただただ悔しく、哀しく、嘆き悲しんでいる。

このようなひどい仕打ちを受けた人とボクたちはどのように哀しみを共有できるのだろう。
代々大切に守り育ててきた有機農法の農家ほど、その打撃と苦しみは深い。
来年の作付けをどうするのか、二本松の農業法人でも段々畑様の田を手放す人が出てくるだろうと言う。
緑豊かで美しい山中の美田は、まさに日本の古来からの原風景。
これらを手をこまねくばかりで荒廃させてしまって良いものなのだろうか。

〈放射能除染・回復プロジェクト〉のプロジェクトリーダー、京都精華大学の山田国廣教授は、田の汚染源をいかに断つか、という考えで、周囲の山からの汚染物質をトラップするための方法をいくつも提案し、試みようとしている。
農家も必死になって、これを受け入れ、自ら実証実験を行おうとしている。

健全な土壌とゼオライト、バーミキュライト、などを混ぜ、この土嚢で田んぼの遮蔽をし、流れ出てくるセシウムを吸着させ、除染された水を流入させるというもの。
田の環境も様々、まだまだ実証実験を重ねなければならない。

〈放射能除染・回復プロジェクト〉について
■「除染に限界痛感 高線量 落ち葉「きりない」 洗浄水 流れ「火種」 
数値下げる思惑? 観測地は福島市実施 (11/26東京新聞こちら特報部1/2
〈放射能除染・回復プロジェクト〉メンバーからの報告。

adobe readerアイコン放射能除染マニュアル第2版その1(PDF形式:1.3MB)
adobe readerアイコン放射能除染マニュアル第2版その2(PDF形式:1.4MB)

福島市街、大型ショッピングセンター駐車場内

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 除染活動、ご苦労様です。
    杉並でも芝の養生シートから高い放射能が検出されたように
    水の溜まる所が乾燥を繰り返すと、とんでもない値を示す所が
    出てきますし、今後局所的なホットスポットは増えるでしょうね。
    これは、原発からの距離だけでは判断できませんね。
    今朝のNHKニュースでも宮城県丸森町の話題が出ていました。
    福島県に入り込んだような場所で福島県伊達市と相馬市に挟まれた
    所で宮城県というだけで除染活動は遅れているようでした。
    一つずつつぶして行くしかないのでしょうか?
    大変です。

    ところで、島田市、頑張ってますね。
    実現すると良いと思っています。

    • 「除染活動」などと語りはじめますと、いきなりナンセンス ! と非難の嵐。
      一方、ご指摘のように首都圏など福島県外では、高濃度のセシウムを検知しているところは少なくありません。
      私たちの〈放射能除染・回復プロジェクト〉は、あくまでも疎開、移住が基本としながらも、しかし「除染」への構想、実証も行っていかねばならないものと取り組んでいるわけですね。
      福島では人は居住できない地域が広域にわたって出てしまっているわけですが、それを超えたところで汚染されてしまっている現状から、それら全ての地域を消失させてしまうという選択は、日本においてはありえないものです。
      広大なロシアと狭隘な日本の国土、国情の差は小さくありません。

      政府筋の「除染」は今や東電関連企業のやけぶとり利権と化してしまっていると言われている中、一民間の有志らによる手弁当での〈放射能除染・回復プロジェクト〉は、たいへん辛い取り組みにならざるを得ませんが、弛まずにやっていこうと思いますね。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.