工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

2014年を超えて

今日は大晦日。2014年から2015年へと暦が替わります。

若い頃は地方の鄙びた温泉宿とか、都心のホテルとか、旅先で迎えることも多かったものですが、ここ数年は静かに自宅で迎える年越しになっています。

また、仕事納めも、昨日いったんすべきことを終え、1日残しての年越しのつもりだったのですが、結局は今日も半日仕事になってしまった。

それというのも、工房の玄関ドアのリニューアル、設置に関すること。
これは年越しさせるわけもいかず、賀状作成もそっちのけで奮闘。

大きな建具の吊り込みは、「奮闘」と形容するにふさわしい難行です。
このドアについてはまだ画像も無く、稿を改めてご紹介したいと思いますが、普段、さほど言葉を交わす人でも無い隣人が「さずがに木工屋さんらしい、良いドアですね」と話しかけてくるなど、まずまずの出来映えです。

工房を改めるにあたり、今回の玄関ドアを含め、いくつかの建具を制作してきましたので、やり残している他の部位の建具を含め、Webの作品コーナーでも新たなカテゴリーを設け、詳しく紹介していきたいですね。


家具屋の制作対象にあって、建具は異分野であるかもしれません。
異分野というのは、建具という立派な業界があり、彼らにはとても太刀打ちできない領域であるということです。
技術内容においても、恐らくは一般の家具制作より一段高いものが要求されるところも多いです。

ただ、私たちのような無垢材を扱う家具屋は、彼ら建具屋とは異なるアプローチでの構成、デザインにチャレンジし、独自の世界を構築できる可能性があるのではと妄想したりするわけです。

また、建築に極めて近い関係にあり、施主の予算枠でも、家具よりは建具の方により余裕を持った設定がされるものですので、そうした実態を踏まえてもやりがいのある分野と言えるのでは無いでしょうか。
(もちろん、それに見合う内実を伴うことを求められるのは当然です)

さて、こうして工房や住まいに関わる建築付随の制作に翻弄されつつ1年が過ぎ去ろうとしているわけですが、まだ残余のものがたくさんあります。
こんな自家消費のものばかりでは収入が断たれてしまいますので、受注の仕事を優先させつつの業務内容になりますが、来年の今頃、果たしてどのような報告が出来るのか、ですね。


ところで、このBlogも二ヶ月後の2月には開設10周年を迎えます。
最近でこそ、更新もままならぬ状況を呈していますが、一時は日を置かず、かなりの分量の文字を叩き込んできたこともあり、あるいは浮き世の許せぬ事象への異議申し立てなど、立場を超えての書き込みなど、様々に展開してきたものです。

ログを視れば、過分なアクセス数をカウントしているところからも、サイバー空間とは言え、発言における責任は自覚せねばなりませんし、一方、多くのアクセスに比し、コメント投稿は寂しい限りという実態にも、こうした営為の難しさを感じたり、自己嫌悪に陥ったりもしますし、それらを振り払いつ、弛まぬ勇気を振り絞り、10年も続けてきたわけです。

Blogなど、しょせん、ルーチンで続けているとも思われがちですが、私の場合、それだけの余裕も卓見も無く、ガチでの営みであるわけです。

最近、このBlog読者からある真摯な問いかけがありまして、それへの回答は保留したままでの年越しになるのですが、そうした若い木工家、木工職人の読者の眼差しを受け止めつつの、少しだけ彼らよりキャリアを重ねてきた者としての社会的責務において、伝えるべき事は正しく、真摯に向き合い、届けて行きたいと思います。


木工業界を見渡せば、大きな時代の転換点になっていることは、静岡のような産地にいますと、イヤでも知ることになり、揺さぶられくるものですが、一方で、それだけにこの世界に青春を燃やそうと入門してくる若者への希望を繋ぐものとして、ささやかながら彼らとクロスできることができることができれば、このBlogの存在価値もあろうというものです。

耐えがたく軽薄な世相に反する場合もあるかもしれませんが、真摯に良い作品を世に問う仲間もいますし、木工というものへの高い指標を与えてくれる先輩もおられますので、そうした方々の指導を仰ぎつつ、自身を鍛え、このBlogも10年を超え、さらなる遠くへといくだけです。

どうぞ、2015年もお付き合いいただければうれしく思います。

皆さまにとり、2015年が少しでも佳い年でありますように、心から祈っています。
ここでは触れませんが、来年はたいへん難しい時代になることは覚悟せねばならないでしょう。

しかし、私たちのようなモノ作りに勤しむ者は、確かな素材と仕事に助けられ、生きていくことができます。

ただ一方、そうした至福の一面だけに寄りすがっていたのでは社会と断絶したものになったり、芸術至上主義に偏倚したものに堕してしまいかねません。

そうしたことを自覚しつつ、2015年を生きて行こうと思います。
読者の方々への感謝とともに。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 2014 年 良く働きましたね。5963
    ドアー吊り込みは一人ではしんどいですね。分結ヒンジが出てから楽になりましたが。ドンピシャリに納まると物足りないものがでるから不思議です。
    玄関など周り汚れないうちに下端に水性のカルバナム蠟Waxを拭いておくとだいぶ違います。見事なビンテージ糠目水楢ですから作品実作展示で売り物に.値段・スペックをぶら下げるのもおもしろ玄関です。スペアーないし、売れると寒いし、こまるけれど。わ!
    今年も4649  キコルABE

    • 玄関ドアを無垢板で、というかなり無謀な構成ですから、耐久試験しているようなものかも知れません。
      阿仙で少し染め上げ、ウレタンでシールし、オイルフィニッシュ。
      劣化は避けられませんが、テクスチャー、色調変化を楽しみつつ、メンテナンスしていくことでしょうね。

      分結ヒンジ(旗丁番)も考えましたが、結局128mmのステン平丁番です。
      ただ、枠の方も半分の厚みを彫り込み、つり込みを容易にした積もりです(作業性はかなり違ってきますね)

      ABEさん、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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