工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

iPhoneのマイナンバーカードの朗報と、マイナ免許証の憂鬱

iPhone ウォレットの〈マイナンバーカード〉
iPhone ウォレットの〈マイナンバーカード〉

先頃、運転免許証の更新手続きを行いました。
私はここ数十年、無事故 無違反でGold免許証にカテゴライズされていますので、更新手続きもラクチン 👍

いえいえ、運転距離が短いからというわけではなく、昨年も北は盛岡、南は岡山までひとりで走ることもありましたからね。

おっと…、こんなケチな自慢話など不興を買うだけなのでここまでとしますが…、

高齢者による自動車事故多発から、免許返納の話題に事欠かないご時世。
今日はそんな年齢に差し掛かって来ているとは言え、長距離運転でハンドル握るのは嫌いじゃ無い私と同じような人向けのお話とでも言っておきましょうか。


さて、運転免許証の更新手続きの際、併せて本年3月からスタートした〈マイナンバーカードと運転免許証の一体化〉って奴も行いました。

実は、これまでマイナンバーカードの取得はセキュリティ問題などから忌避し続けてきていたのですが、この運転免許証との一体化を含むいくつかの理由から、マイナンバーカードの取得へと大きく転換することになり、今日はそのあたりのことについてお話しします。

ネガティヴなマイナンバーカード取得からの脱皮

私は数次にわたって展開された総務省による「2万円くれてやるからマイナンバーカード申請してくれ〜」とのキャンペーンにはまったく心は動かされることなく、知らんっぷりで推移してきました。

そんな人参ぶら下げるような行政のあざとい誘いにはむしろ忌避する思いを硬化させるだけでしたからね。
(一時期、この報道がある度に、「馬鹿にしないでよ〜♪」と、山口百恵の一節がつい口に出たもので、それも飽きるほどリピートされ…、百恵ちゃん、お疲れさまでした🤣)

それよりも何よりも、近年、年金機構など行政からの個人情報流出が相次ぐなど、日本政府における私たちの重要な個人情報がダダ漏れしてしまう管理のずさんさ、インターネット社会の圧倒的な利便性の影に潜む、膨大な情報がワンクリックで漏洩してしまう怖ろしさへの無自覚な、有能とされるにしてはあまりにお粗末な中央官僚の役人どもの意識。
こうしたことへの信頼性への欠如から、マイナカード取得へと踏み出すことに二の足を踏んでしまう気弱さを抱えるartisanでした。

ところが、健康保険証がマイナカードに搭載されることとなり、マイナカード無くても紙の保険証、あるいは資格確認書等で対応可能とは言うものの、何かと不便をかこつ可能性が出てきたこと。

さらにこれらに加え、運転免許証もマイナカードに一体化され、〈マイナ免許証〉として使えることとなってきたことはご承知の通りで、

さらにまた、これらの一部において、生体認証によるログインが前提となるスマホへマイナカードが搭載可能となるというアナウンスに、私の情報漏洩への杞憂は徐々に薄れ、これらを実効たらしむるため、マイナカード取得へと意識が向いてきたのでした。

マイナカードの iPhone搭載によるセキュリティ課題の克服

運転免許証については時期未定ですが(後述)、本年6月からマイナカード、およびこのマイナカードと一体化された〈マイナ保険証〉がiPhoneのウォレットに格納されるとのアナウンスがついにトリガーとなってしまったのでした。(デジタル庁

さて、私がマイナカードを取得してこなかった理由の一つは、マイナカードを携行して外出した際の紛失のリスクでした。

ここ20年間ほどは運転免許証を封入した財布の紛失はありませんが、過去50年間を遡れば、1度だけ紛失したことがありました(この際は、紛失経緯が明らかでもあり、紛失自覚から1時間後には手元に戻っています)。

マイナカードに一体化されたマイナ免許証を使う場合、当然にも日常的に持ち歩くことになりますので、この紛失への懸念は小さからぬものがあります。

しかも、マイナカードには運転免許証のみならず、健康保険証はもとより医療関連情報や税金など、極めて秘匿性の高い個人情報が格納されていますので、紛失による情報漏洩のリスクはとても高く、こんなもの、とても持ち歩くだけの蛮勇は持ち合わせません。

しかし一方、マイナカードを自宅で然るべく管理し、その機能をiPhoneに格納して持ち歩けるとなりますと、情報漏洩におけるセキュリティは格段に高まります。

なぜなら、スマートフォンの読み出しには生体認証Face IDまたはTouch ID)が必須ですし、万が一の紛失時は「探す」あるいはカードデータの「リモート消去」も可能ですので、物理カードの携行よりも圧倒的に安全性が高くなると言われています。

Face ID について
〈Face ID〉は、2017年にAppleが開発した顔認証システムです。
それまでの〈Touch ID〉(指紋認証であるため、寝ている間にロックを解除されたり、指紋をコピーされるリスクがゼロでは無かった)から置き換えられたセキュリティ機能です。
〈Face ID〉は 30,000以上の目に見えない赤外線ビームを顔に照射し、これを赤外線カメラで認識することで顔の凸凹などの深度情報を捉え、認証する〈3次元顔認識認証システム〉で、誤認識率は約100万分の1とされています。

因みに米国では既に多くの州でスマホ免許証の運用が進んでいるとのことです。(「モバイル運転免許証が個人情報保護の新標準に、12州で導入進む」)

マイナンバーカード、および iPhoneへのマイナカード搭載の経緯

昨年5月、岸田首相はApple.inc CEO・ティム・クック氏とのTop会談があり、マイナンバーカードの機能をiPhoneに搭載することが話題になっていました。

■ デジタル庁:マイナンバーカード機能のiPhoneへの搭載について

これは世界的には米国に次ぎ、個人認証のモバイルデバイスへの搭載となるもので、いわばデジタル後進国、日本の汚名を濯ぐ画期的なものと話題になっていたものです。

これは米国に次ぐ、個人認証のモバイルデバイスへの搭載となるもので、いわばデジタル後進国、日本の汚名を濯ぐ画期的なものと言えるでしょう。S

Secure Enclave について

iPhoneには〈Touch ID〉、〈Face ID〉という生体情報によってしかアクセスできない、高度なセキュリティで守られている〈Secure Enclave〉というROM(ストレージ)があり、暗号化キーを含む機密データの安全な処理を行っています。
この領域にはAppleでさえ踏み込むことができないとされています。

マイナンバーカードのような高度な個人情報のデータ管理も、この領域に納められるところから、日本のデジタル庁からの要請を受け、Apple社による高度なレヴェルでの開発構築作業が必須となり、日本政府とApple.incのTop会談が行われたということになります。

これはAppleとしても、まず日本でこうした個人認証システムを先行的に開発するということは、ひいては世界的規模でのサービスへと拡大させる大きな経営的メリットがあるところから、むしろ積極的に日本政府の求めに応じているように思えますね。

Androidのマイナカートは?

因みに、Androidのスマホの場合、スマホ用の電子証明書の機能はiPhoneより先行して搭載されていましたが、iPhoneの〈Secure Enclave〉に相当する機能については、複数のベンチャー
により構成されているAndroid端末の性格上、開発には多くの時間が必要になっているのでは無いでしょうか。
(2025年 9月19日、デジタル庁は「2026年秋頃に「Androidのマイナンバーカード」として提供を開始する予定と発表しています)

こうした堅固なセキュリティに関わる領域では、ハードウェアから、OS、および基本的なソフトウェアまで、一体的に開発構築しているApple社ならではの優位性があるのは、ある種、必然的なことと言えます。

マイナカード、マイナ保険証、そしてマイナ免許証を巡る経緯


マイナンバーの交付開始が2015年でしたので、私のようにこれを使い回しするようになるまでは10年の月日が掛かっているということなのですね。
感慨深いものがあります。

iPhoneにマイナンバーカード

6月24日、iPhoneの「Apple Wallet」にマイナンバーカードが搭載されることが可能となり、運用が本格的にスタートしました。
対応機種は iOS 18.5以降が動作保障される、iPhone XS以降のモデルです。

因みに私は〈iPhone XS Max〉を6年半使い続けてきていたのですが、このiPhoneへのマイナカード実装のアナウンスが出て以降、マイナカードそれ自体取得していなかっただけに、これを機に取得へと動こうかと思案し、その期日を2025年秋のiPhone更新時に定めていたのでした。
6年半前の旧い機種ではiPhoneへのマイナカード実装の動作保障の枠外になるだろうとの想定があったからです。

しかし年初以来のトランプ相互関税の嵐に翻弄され、iPhoneの高騰化は避けられないとの判断から、これが施行される前にiPhoneを更新せねばと焦り、この4月に、昨年モデルの iPhone 16を購入したのでした。
しかし、蓋を開けてみれば、マイナカード搭載可能なモデルは、私もそれまで使っていたiPhone XS以降であり、かつ、10日ほど前に発表された iPhoneの新モデルは、価格据え置きとのことで、大いに落胆させられたのでした。
‘何てこった〜’ の嘆き節。

ところで、iPhoneのマイナカードですが、それ自体は法的な位置づけからはマイナンバーカードそのものというものではありません。
「ウォレット」に搭載されるマイナンバーカードは、物理カードのデジタルコピーという考えです。
それ自体、自律したものではありません。したがって、物理カードの効用を逸すれば、iPhoneマイナカードの方も失効します。
物理カードの紛失で、失効手続きを取った場合も同じで、iPhoneマイナカードの方も失効します。

また、iPhoneマイナカードのアカウントおよびこれを搭載しいたデバイスはあくまでも単一です。複数のiPhoneに搭載させることはできません。

前述した通り、iPhoneマイナカードの安全性は〈Face IDまたはTouch ID〉による認証により担保されており。登録した本人のみが使用できる設計になっていて、ログイン漏洩のリスクがあるパスコードなどは使えません。(こうしたいくつもの制約が課されているからこそ、iPhoneマイナカードの安全性が担保される建て付けになっているということになります)

デジタル庁作成「マイナンバーカードの iPhoneへの追加」

このマイナカードは、身分証明などの本人確認、年齢確認などに活用されます。

スマートフォン搭載でますます便利に(イメージ)
スマートフォン搭載でますます便利に(イメージ、デジタル庁)

iPhoneのマイナカードの利用方法

利用方法はとても簡単で、iPhoneのサイドボタンをダブルクリックし、マイナンバーカードを選択。
Face IDで認証し、その状態で読み取り機にかざすだけで OK!

パスコードの入力などの煩雑さとは無縁です。
…って言うか、漏洩のリスクがあるパスコードは使わない、という考え方がキホンにあるのです。

昨年、偽造マイナカードを使いスマホを乗っ取られた地方議員が高級腕時計を不正購入されるなどの被害が報道されましたが(読売)、
これはマイナカードのICチップの読み取りを怠り、ただ目視しただけで“本人確認”の壁が突破されたことによるものでした。

こうした犯罪を防止するには、券面記載事項の目視ではなく、マイナカードに記録されたICチップのデータの読み込みが必須なのです。

そこで、このiPhoneマイナカードによる身分証明などの本人確認、年齢確認について、自治体窓口、およびコンビニなど事業者向けに〈マイナンバーカード対面確認アプリ〉というものが 8月5日に、App Store、およびGoogle Playからリリースされています。

スマホにこのアプリを搭載することで、対面での本人確認、年齢確認など「基本4情報」(氏名、住所、生年月日、性別)が読み取れることになります。

これまでも物理カードの「マイナンバーカード対面確認アプリ」はあったようですが、ここに「iPhoneのマイナンバーカード」の確認機能が付加されたということのようです。

デジタル庁「マイナンバーカード対面確認アプリ 店舗や窓口での 本人確認を確実に」

これにより、自治体の窓口での手続き、店舗での年齢確認といったシーンで、事業者のスタッフが持つiPhoneに搭載された「マイナンバーカード対面確認アプリ」があれば、このiPhoneを利用者のiPhoneに近づけるだけで、基本4情報の確認が読み取れることになりました。(デジタル庁

〈マイナンバーカード対面確認アプリ
〈マイナンバーカード対面確認アプリ

物理カードによる本人確認の場合、カメラアプリで券面を撮影するなどのプロセスが必要となるようですが(券面情報と、ICチップ内の情報の照合が必要となるため)、こうしたプロセスは不要になり、よりスムーズに確実な本人確認が可能となるというわけです。

Android版は今のところ、こうした機能はありません。

物理カード、iPhoneのマイナカードの〈対面確認アプリ〉利用イメージ
物理カード、iPhoneマイナカードの〈対面確認アプリ〉利用イメージ(画像はデジタル庁)

因みに、日本国内におけるスマホのシェアですが、 AppleのiPhoneが約6割とされており、2025年5月からのマイナカードのiPhoneへの機能搭載は、それまで取得へはネガティヴな思いを抱く私個人はもとより、多くの同様の思いを抱える人々の閉じた心を開かせる大変重要な転換点となり、マイナカードの利用はスマホからの利用が基本になっていくものと思われます。

これにより、本人確認や公的サービスがスマホさえあれば利用できるようになるため、利便性と安全性の向上が飛躍的に確保されることになったと言えます。

活用事例としては、自治体での手続き金融機関の取引携帯電話、不動産の契約時中古品の買い取りなど各種契約での本人確認や、飲食店での年齢確認など、幅広い対面での本人確認が期待されます。
日本社会のデジタル運用社会への画期と言うべき結節点です。

iPhone ウォレットによる身分証明書機能の展開と、これを拒否する自治体

こうして、デジタル敗戦と言われ続けてきた日本社会ですが、いよいよまともなデジタル社会への制度的整備が一気に整いつつあることを喜びたいところですが、
実は今、マイナカードが搭載されたiPhoneでの「本人確認」が、なぜか多くの自治体から拒否されているという現実があることをご存じでしょうか。

この8月5日の「マイナンバーカード対面確認アプリ」のリリースとほぼ同時に、全国各地の自治体が
「(お知らせ)「iPhoneのマイナンバーカード」は当面本市窓口での本人確認書類として利用できません。」と一斉に、〈マイナンバーカード対面確認〉拒否をする事態に至り、失笑させられることになったのでした。
(東京新聞 9月4日〈iPhoneマイナは「窓口で使えません」 自治体が次々に表明 「本人確認」機能が追加されたのに、なぜ?

以下は首都圏のとある自治体の公式Webサイトに記載された、「iPhoneのマイナンバーカードはダメ!」という通告文書のスクショ。

首都圏のとある自治体の通告事例

これら〈iPhone マイナンバーカード対面確認〉を拒否している自治体の、その拒否理由の多くは「対応する設備が無い」といったものです。
⁉️ はて、その「設備」って…、専用設備が必要ではなく、iPhone のことですよ ⁉️

職員のものではなく、自治体に管理権のあるiPhoneが装備されていないのかも知れませんが、例えば、本人確認を求められる「市民課」の窓口担当の職員のiPhoneに「対面確認アプリ」を入れるだけで OKのはず。

因みに、このアプリには個人が特定できる情報は保存されません。 履歴として、確認日時など一部の情報がアプリに保存される場合があるだけです。

デジタル庁、総務省が必死になってデジタル社会への移行を進めている一方、これに応ずることを拒む地方自治体。この図柄の香ばしさは何ともはや・・・

こんな基本的な行政サービスを拒むような自治体には、国からの補助金のカットを求めたいものです。

お役所仕事の弊害などと昔から良く言われますが、役所の窓口の方でも、こうしたデジタル化は利便性が高まると考えられるものの、事務手続きのデジタル移行を忌避するのは何故なのでしょう。

考えられることとしては、

  • デジタル庁からの事前通告が不十分で、対応するiPhoneの準備ができなかった(職員が持つiPhoneにアプリを入れるだけで済むはず)。
  • IT関連システムの導入は全て外部委託してるので、役所での対応能力が無い(業者にやってもらう必要など毫も無く、iPhoneにアプリ入れるだけで済むはず)
  • iPhoneのマイナカードを提示するような市民はまだ極めて限られた人数だろうから、今のままで放置すりゃ良い(行政の不作為そのものでしょ)

およそ、こんなところでしょうか。
いずれにしましても、事務手続きのデジタル移行を忌避する対応力の欠如、無知で、脊髄反射的な幼児退行のようなものに思えてなりません。

■ デジタル庁「「iPhoneのマイナンバーカード」を確認できるようになりました」


早晩、このような恥ずかしい自治体の拒否姿勢も、デジタル運用の利便性の理解が進み、iPhoneに〈マイナンバーカード対面確認アプリ〉をインストールするだけで完結する容易さを知れば、たちどころに解決するものと思いますが、これらも自治体首長の資質(デジタル運用の利便性を理解し、職員に指導力を発揮できるか否か)に依るということになるのでしょう。…知らんけど。

事実、いくつかの自治体では、〈iPhone マイナンバーカード対面確認〉できませんとのアナウンスのWebページを削除していることもWeb検索結果から覗えます。
つまり、一端〈iPhone マイナンバーカード対面確認〉拒否をアナウンスしたものの、その利便性、容易さを理解したからか、あるいは住民からの指摘、抗議などから、姿勢を転換したものと思われる節もあります。

あなたが暮らす自治体ではどうでしょうか?

今回はここまで、
次回は「マイナ保険証のスマホ対応」や「マイナ免許証」について考えていく予定です。でわ〜、

iPhone日本上陸(2008年7月11日)の朝、Softbankの店舗に駆け込んだ artisanでした

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