工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

コンパクトでインパクトな12Vドライバードリル

Boschインパクト
〈12V新タイプ発見〉
久々に新しい電動工具がうちにやってきた。
さほど新奇性があるものではないのだが、お好きな方には興味深い記事になるかもしれない。
Model PS40-2AというBoschの小型充電インパクトドライバー。
以前にもこのBlogでは関連記事をupしていたが、そこでうちのこのクラスのものの現状ははなはだ不満なものであることを吐露し、その更新を示唆していたにもかかわらず踏み切れずにいた。
しかしここ1年ほど抱かされてきた不満も解消され、これでやっと落ち着いた日々を送ることができるだろう。
この機種、Google検索しても、国内からの情報は皆無のようでもあり、少し紹介の労を取るのも意味のあることかもしれない。
さて、画像は昨日米国から届いたばかりの小型の充電ドライバーだが、既に2年ほど前から国内市場に出されているBosch「GDR 10.8V-LI」と、瓜二つのものだ。(こちら
形状、サイズともに実は本体は全く同じものとみて良い。
ただ異なるところが1つ。バッテリーである。
「GDR 10.8V-LI」のバッテリーはLi-Ionの10.8Vのもの。
対し、この「PS40-2A」の方は同じくLi-Ionでそのバッテリー部分の駆体も全く同一でありながら、12Vということになっている。
数日前、ネットで電動工具をあたっていたとき、まずamazon(USA)で発見。
最初は国内仕様の「GDR 10.8V-LI」と姿、形が全く同じであるにもかかわらず、バッテリー仕様が異なっていたので、すこし驚いた。
さっそくBosch公式サイトを見れば、10.8V仕様のものはほとんど姿を消し12V 仕様に更新されている。
もはやこれまでの購入へと踏み切れなかったブレーキは解除され、ある販売サイトからプチッして、DHL指定であったため、4日ほどで届いた。


〈パワーの検証〉
さっそくマキタ14.4Vの「TD132D」、同じくマキタ7.2Vの「TD131DRFX」とのパワーを検証(それぞれ記事下の画像を参照)。
さらにご近所の木工所でマキタTD090DWX(10.8V Li-Ion)を使用していたので、これとも比較させていただいた。
「TD131DRFX」をはるかに上回るパワー。これは12V vs 7.2Vの対比からすれば当然か。
同じく「TD132D」とでは、さすがに軍門に下らざるを得ないのも当然か。
さて、マキタTD090DWXとの比較だが、パワーにおいてはほとんど差異はなかった。ただ回転数はマキタの方が高いようだ。(締め付けスピードが高いということ)
このマキタのオーナー、Boschに負けなかったという結果を見てほくそ笑んでいたね。そして次にあることで驚いて、卒倒しそうでもあった。
機会があればいずれBoschの「GDR 10.8V-LI」との比較もしてみたいと考えている。
その他のスペックについては「小型インパクトドライバー・BOSCH vs マキタ」をご覧いただくだけで良いようだ。(こちら
つまり「定格電圧」および「締め付けトルク」の差異を除き、重量などを含め、その数値は同一だからだ。
再掲した方が良いかな
・定格電圧:DC10.8-12V(LITHEON™)
・回転数 :0-1,800min-1(回転/分)
・打撃数 :0-3,000min-1(回/分)
・最大締め付けトルク:??
・質 量 :1.0kg(バッテリー含む)
・充電時間:約15分(空→70%ターボ充電) 約30分(空→フル充電)
・価格  :??(バッテリー2個、キャリングバック、充電器付)
さらに付け加えれば、ヘッド周りには3灯のLEDライトがリング状に配置、トリガーの加減で回転スピードが可変、いわゆるエゴノミックソフトグリップのハンドル、ボデーの主要個所はラバーでバンパーされている、etcといったところは既知のことだろう。
マキタTD090DWXとの比較では、重量は10%ほどBoschの方が重い。
充電時間はマキタが50分に対しBoschはフルで30分、(いずれもバッテリーは2個標準付属)
ところで既にお気づきの方もいるだろうが、この12V。何か変?
気付かれた方はLi-Ionの達人 !
そうなのだね、Li-Ionで12Vというのはあり得ない。
〈LITHEON™とは〉
7.2V、10.8V、14.4Vという単位を考えればお分かりのようにLi-Ionの1セルは3.6V。
一般にニカド、ニッケル水素などの充電池は1つのセルで1.2Vの起電力を持つがLi-Ionは3倍の3.6Vということのはず。
したがって12Vという単位はおかしい。
実はボクにも今日の段階ではこの謎は解明されていない。
(LITHEON™)とは何ぞや、というところ。
詳しい方がいれば教えていただきたい。
ポイントは、このバッテリー仕様の表記が
「Litheon™ 10.8-12V Max」となっているところか。
充電タイプの電動工具の性能は、やはりバッテリーの性能に依るところが大きいと考えているが、ここ数年にあっては何やら少し固定観念があって、マキタの電池性能が他のメーカーのものを圧倒しているのでは思っていた。
しかしその考え方には軌道修正が必要となってきているのかもしれないと見る。
何故か、これは単に電動工具などという狭隘な業界の話し、コップの中の嵐の話しではないではないようである。
既にお気づきの人も多いだろう。自動車の次世代エンジンは、充電池をエネルギー源としたものであることは明らかであるからだ。
もはや20世紀を支配してきたGM、クライスラー、フォードは後景に去り、トヨタを初めとする、先進的な新エンジンを研究開発しているところへとシフトしてきている。
もっと言えばこれまでの既存の自動車業界を押しのけて、電池メーカーが主導で開発していくような様相さえ、夢物語ではなくなってきているのだ。
ここにおいて電動工具メーカーに関連する世界では、やはりBoschが支配者の位置を虎視眈々とねらってきているかのようなのだ。
既に昔から自動車業界との繋がりが深いことは知っていたが、このLITHEON batteryを調べていて気付いたことなのだが、ここ数年のLi-Ion電池の研究開発と、ハイブリッド車への搭載のニュースを見ることで、その意気込みの一端を感じ取ることができるだろう。(自動車機器テクノロジー
〈BoschによるFreud社の買収〉
序でにもう1つ明かせば、このBoschのトピックスにはイタリアのFreud社の「電動工具アクセサリー事業を買収」ときていた。
つまりFreud社の丸鋸、ルータービットなどがBoschの支配下に入り、Boschの販売網を通して販売されるということになるようだ。(北米向けが主たる目的のようで、日本国内の動きは全く不明)
〈最後に〉
このModel PS40-2Aの価格についての話しを失念するところだった。
購入への「命がけの飛躍」は、その性能もさることながら、価格にもあったことは告白しておかねばならないだろうからね。
米ドルで110ドル。つまり9,900円。
現在、同じBoschの同種、GDR 10.8V-LI はメーカー標準価格が32,500円だから、その価格比は申すまでもないだろう。
マキタオーナーが卒倒しそうになったのも肯ける話しではある。
彼はメーカー希望小売価格で買っていたようだ。
米国のリーマン・ブラザースの破綻からの住宅産業の急速な疲弊は、電動工具の販売世界への影響としてドラスチックに表れている。
しかもこのところの為替レートの円高は、このようにも価格差となって表れている。
なお、米国サイトにはなかったものだが、Bosch本国ドイツのサイトからは、この小型Li-Ion電池を使ったLED懐中電灯が新しくリリースされていることを知る。(こちら
無論以前よりこの種のライトは数種あったが、今回のものはLI-Ion10.8Vのコンパクト電池を使ったもので、掌に収まるサイズに新しさがある。
いずれ日本Boschでも取り扱いを開始してくれることを期待しておこう。
【ランプ GLI 10.8 V-LI】
・連続点灯時間:450分
・重量:0.3kg
・LED性能:1W
Model PS40-2A BOSCHアメリカより
* 参照記事
小型インパクトドライバー・BOSCH vs マキタ
小型インパクトドライバーはまだ続く
小型インパクトドリルドライバーの反撃
小型のインパクトドライバー TD020DSW
電動ドライバー(ドリル)2機種の更新
インパクトドライバー

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 充電工具も小型化され、さらに安くなればありがたいことです。
    リチウムイオン電池で自然放電は少ないとは言っても私のような
    週一の作業では多少不便でもコード付きの方が安心かなと思う
    ようになってきました。
    プロの方にとってはコードレスがやはり便利でしょうね。
    DHLとはなつかしいですね。
    少し前まで国際急送システムといえばDHLが代名詞のようになって
    いてテレビでも良く宣伝していました。
    今でも健在なんですね。

  • acanthogobiusさん、どうも。
    >DHLとはなつかしいですね
    そうなんですか。
    今日はちょっと湘南まで所用でドライブしていましたが、オレンジのDHLバンに出合いましたよ。
    今回の末端のの宅配は佐川でしたが、以前はDHLがダイレクトに持ってきたこともありましたね。
    またDHLは荷の運送状況のかなり細かなデータ提供(インターネット、オンライン)もあり、安心できます。

  • 久しぶりにおじゃまします。
    私もBOSCH10.8Vタイプを持っていました。
    ネジ締めの下穴あけ専用ドリルに小型でちゃんと使えるものを探していた時にこの機種を知り、これぞ打って付けと飛びついたのですが、期待はずれで先日オークションで売ってしまいました。
    実際に使ってみると、高回転でトルクフルに回ってくれるのですが非常に簡単にインパクトが働くのでやかましいったらありませんでした。
    ネジ締めはおろかパイン材に25mmのモクネジの下穴をあけるのにさえインパクトが働くのです。こんなものなんですかねぇ。
    12vタイプだと少しはふんばってくれるのでしょうか?
    また、縦置きにしたくてグリップ底部に板を取り付けて使ってましたが電池がグリップに埋め込まれるという構造のため、重心が高くて不安定。これは、しょうがないことですけど。
    形状に関してはコードレスドライバはそんになに小さくなくても細めの握りやすいグリップで縦置きが出来る低重心な構造のもの、、、結局普通の形が一番なのかなと思いいたっています。
    ひさしぶりに書き込みさせて頂いたのにマイナスなことばかり書いてすみません。GDR-10.8には非常に期待したものですからついついです。

  • Pongooさん、コメントありがとうございます。
    “経験者の語りは雄弁”ですね。
    >非常に簡単にインパクトが働くのでやかましい
    ま、これはインパクトという機構が特性とされている機種ですし、ドリル機構だけで良いのであれば、同じ10.8V シリーズで別機種があります。
    (切り替えクラッチ機構がどの時点で働くのかというのはメーカーの差異はあるのでしょうけれど)
    >縦置きにしたくて
    これも、このタイプでは想定していないようですね(マキタTD090DWXでも同様でしょうね)
    14.4Vタイプは電池ホルダー底部が大きく安定していますが、この10.8Vはコンパクトさを追求したものですので、安定性の追求は割り切りなのでしょうね。
    メーカー設計スタッフのようなコメントになりましたが、カスタマーセンターへと、ぜひ要望を上げてやってください。
    因みにカスタマーセンターの話しでは、Bosch日本としては、当面この10.8Vシリーズを推進強化していくようです。
    ヘッドに首振り機構を持たせたドリルとか、カッターブレードを取り付けるものとか、なかなか他のメーカーには無い10.8Vコードレスシリーズが充実してきているようですので期待しているところです。
    なお、また賛辞に値する記事がありましたらコメント寄せてください(苦笑)。

  • 10.8v-12v maxの件ですが、10.8vは公称電圧、12V最大電圧であって表示の違いだけなので、実質全く同じらしいです。どうしてこんなにややこしくなったかというと、Milwaukee社 と Ridgid社が「最大電圧」を製品名につけたからしいのです。

  • sarsonsさん、お助け情報、感謝であります。
    同じですか。なるほどね。腑に落ちました。
    12Vというのは記事にも書いたようにLi-Ionセルではあり得ない数値。
    しかしその「最大電圧」というのは何を指すのか、もう少し詳しく知りたいところですね。

  • 満充電時の電圧は最大電圧で、放電につれて電圧が徐々に下がりますが、常に大まかに維持できる電圧は公称電圧です(この場合ですと、10.4Vですか)。なので、12Vって言う表示はひょっとして詐欺?かも知れませんね。

  • sarsonsさん、しつこい質問に適切な回答を寄せていただき感謝であります。
    良く判りました。
    Li-ion電池のこんな放電カーブのグラフがありましたが、仰るとおりですね。
    http://www.baysun.net/_img4/discharge%20curve.gif

  • 電圧の話はsarsons氏が仰っている内容で間違いありません。
    古い記事にコメントを書いたのは、もうご存知かも知れませんがBOSCHの10.8vシステムは日本と韓国以外では呼称が12vシステムに変更され型番以外は同じ物という話を今日知ったので色々と検索をしていた所でした。

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