工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

「2011アメリカ広葉樹アーキテクトセミナー in 浜松」に参加して

こうしたセミナーを良く知る人に聞けば、これほどに参加者が多いのもめずらしい、と感嘆させた100名を超える満席の聴衆の一人になった。

この種の講演会、研修会に出るのはさほど熱心ではなく、しかも6月は直接的な業務の繁忙もさることながら、いろいろと催しが多いのでパスしちゃおうかとの思いもあったのだが、講演聴講、レセプションでの交歓、それぞれに得るものが多いセミナーだった。



以下簡単にセミナー内容の紹介。

  1. アメリカ広葉樹輸出 協会会長John Brown氏による「アメリカ広葉樹の合法性、持続可能性と環境への対応」
    ボクは内外の良質な木材を用い家具を作らせてもらっているが、必ずしもその供給側の態勢、つまり自然保護が叫ばれている中での高いハードルを課せられている供給側の対応について、さほど真剣に考えることもなく、いわば漫然と使い続けていると言うのが偽りのないところ。

    この日の講演は、ブラックウォールナットもチェリーも需要を満たすに十分すぎる供給態勢を維持、強化していることを様々なデータを駆使して紹介され、そのことにより漫然と使い続けていることの後ろめたさは少しばかり解消してくれたようで内心安堵した。
    2つめには、違法伐採を排除した市場形成の問題。
    つまり合法性証明を取得されたものを、供給側から末端消費者側まで検証、確認して活用することの重要性だ。

    供給側からすれば、市場価格の攪乱要因となる違法伐採は許容しがたいだろうし、消費者側からすれば、単に倫理的な問題に留まらず品質への信頼を阻害し、それもまた市場の攪乱要因を助けることにも繋がるので、留意したいところだ。
  2. 2人目の講師、中村好文氏の講演「木の仕事」は家具づくりに焦点を絞った内容であったことも幸いしているが、限られた時間枠の中ではあったものの、吉村順三設計事務所時代からはじまる家具設計の歴史を、数多くの作品画像を投影させながら、それぞれのいきさつ、その背景、あるいは家具職人との交流の中から産み出される造形のブラッシュアップの過程などを交えた、楽しい内容だった。
  3. 3人目はキャピタルペイントの長澤さん。「建築現場における広葉樹内装材の塗装」
    この方、「木材塗装研究会」「日本木材加工技術協会」「色材協会」などといくつもの関連団体に所属し、多方面にご活躍の由。
    手板をいくつも準備し、実践的な塗装方法に関するレクチャーをしていただく。
    オイルフィニッシュの項では、オイル研ぎがいかに大切か、などと、オイルフィニッシュにおける昨今のコンビニ仕上げへの警句を含むお話し。
    自社のウレタン系オイルフの商品名が、ここでは出せない(商品の紹介はできない)ので、とのどまで出かかった名称を封印しての解説。

その後の、場所を移してのさすがに老舗ホテルのバンケットと舌を喜ばす料理の数々をいただきながらのレセプションでは、横浜から来られた同じく塗装の先生でもある戸山(戸山家具社長)さんに長澤さんを紹介してもらってのオイルフィニッシュ談義で盛り上がったが、木地の仕上げがいかに大切か、というオチだね。

また本Blogの案内を見てエントリーしてくれた、都内大手建築事務所勤務の若い建築家夫婦を交え、講師の中村好文さんとも楽しい話ができ、さらには地元浜松の建築家の方々との交流もでき、思いの外楽しい夕べだった。

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