工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

「作家のきもち“椅子のチャリティー”展」開催中

ギャラリー 杜間道

被災地、仙台市内の「ギャラリー 杜間道」(とうげんどう)にてタイトルの企画展が開催中。
私も知人から出展を請われ、ありがたく参加させていただいている。

市内、青葉城址公園に近接する立地であるが、奥行きのあるゆったりとした広いスペースに厳選された工芸品、家具が展示されている。
ボクも好きで所有している作家のものもあったり、著名な方のものなども並び、ギャラリーオーナーの趣味の良さが伺える。

壁を隔てた独立スペースの方に「椅子チャリティー展」の椅子が並ぶ。
参加された作家も多く、それぞれに秀逸で個性豊かな椅子たちだ。

被災地に立地するギャラリーがこうした企画を起ち上げるというところに、この企画の妙があるのだろう。

ボクは今回19日に発ち、日本海周りで北へ向けて1,000kmを走り、盛岡での仕事から始まり、三陸沿岸部を南下するという行程を取り、21日に仙台市内に入った。

3,11から半年近くの月日を数え、復旧はさぞ進捗のスピードが上げられているのではと思いきや、あに図らんや、未だ沿岸部ではガレキの山々が腐臭を放ち、陸に上がった大型漁船は朽ちるに任せており、あるいは石巻市内駅南部の交通信号の多くが警察官の手信号という状態。
これらの意味するものを果たしてどのように説明すべきか、ボクは言葉を見付けられないでいる。

「作家のきもち“椅子のチャリティー”展」


被災地の惨状というものは言葉や文章で表現できる限界を超えたものがあり、どのように語っても言い尽くせないもどかしさが伴うものだが、上述のように壊滅的な被害を被った地域は沿岸一円に拡がりを見せている一方、同じ地域でも道を挟んだ西側(山側)は本棚の本が落下した程度で済んだといったように、まだらな状況もまた被災状況の特徴でもあるわけだ。

仙台市内とてまた同様の状況であるようで、壊滅的な被害を受けた市民も大勢おり、中には帰らぬ人となった身内の初盆を迎えた方も少なくない。
あるいは市内でもほとんど被害を受けていない市民がいるという実態もそこにはあるわけだ。

そうした同地域の方々のまだら模様というものを少しでも埋めるような活動を、と言うことで多くの若者たちを中心とし激甚被災地へとボランティアに入る市民も多いと聞く。
軽微な被災者が激甚被害者という他者に関わろうとする関係性というものは、普段の〝平和な社会〟では、残念ながらあまり見受けられる光景では無い。

3.11というあからさまな自然の猛威、激烈な暴力の結果として、それまでの市民同士の関係性が攪拌されつくし、あらためていま、整序されはじめている、と言い換えることのできる光景である。
これもまたレベッカ・ソルニットが言うところの“災害ユートピア”の一形態だろう。

そうした文脈の中で、この「作家のきもち“椅子のチャリティー”展」を考えるとき、とても良い企画だろうと思った。
作家が椅子を無償で提供し、これを仙台市民に広く呼びかけ、オークション方式で投票してもらい、最高額の方が落札し、この売上金(経費を除き)を義援金として託す。

椅子というモノを媒介として、作家と市民による緩やかな繋がりというものが被災者との繋がりをもたらす。

あるいは仙台市内のギャラリーでこうした企画がされるということの意味もまた小さなものでは無い。
3.11以降、過度に緊張し、こわばった状態でこれまでこられた市民の心を、少し和らげる装置となり得るだろうからね。


■【作家のきもち】 椅子のチャリティー   
■ 8月20日(土)~8月28日(日)
  11:30~18:30 最終日17:00まで 水曜日休業
 *詳細:http://www.tougendo.jp/gallery%20space.htm

ギャラリー店内、常設コーナー

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  • 仙台にいらっしゃるのですか、暑さは同じでしょうか。展覧会盛況をお祈りします。

    • 仙台も20、21日はとても肌寒く、慌ててUNIQLOでロングTシャツを買い増ししましたし、22日は降りましたよ。
      楽天人気はスゴイですね(当たり前か )

  • こんばんは☆

    突然 牛タンの写真が掲載されましたので
    もしやまた復興支援に??なんて思いましたが、展示会でしたね。
    ギャラリーの写真からステキ空間のにおいがぷんぷんします。
    いってみたーい….。

    しばらく仙台ネタが楽しめるかしら….と思っていたら
    もう次の記事がUPされていてビックリです。

    artisanさんの一日は絶対に24時間じゃないですよね?
    なんか36時間はある感じのフットワークです。
    すごい….。

    • 19日からわずかに4日間(予定より1日短縮しちゃった)の東北行でした。
      2,000Kmを超える走破で、さすがの私もややお疲れモード。

      “復興支援”と無関係ということでもなく、仙台市内の椅子展も復興チャリティーですし、広域にわたっていろいろと次の支援についてリサーチしてきたというところですね。

      サワノさんのコメントで、また牛タン定食喰いたくなっちゃった (^^ゞ

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