工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

iPhone 3Gとは何者?

「今、あなたは3番目のメジャーコンピュータプラットフォームの誕生を目撃しようとしている:Windows、Mac OS XそしてiPhone」
これはNew York Times紙記者、デビッド・ポーグ氏によるiPhoneの定義だ(WWDCで紹介された)。
〓SoftBankモバイルのiPhone発売に関しては、主要各メディアが相次いで詳細情報、あるいはiPhone国内市場への影響などの分析に大きな紙面を割いてきている。
かつて1端末の発売というものがこれほどに話題になったことがあるのだろうか。
対象にできるとすれば、やはり同じApple社のiPod新発売時の喧噪ぐらいかもしれない。
各メディアのWebサイトから収集すると、〓SoftBank社のプレスリリースでは判らなかったことがいくつか判明してくる。
販売は〓SoftBankショップ以外、Apple社でも家電量販店でも取り扱う。
8GB機種の端末代は69,120円、16GBが80,640円。
〓SoftBankではこれを割賦販売。月々の支払いを1,920円ずつ下げる特別割引を適用し、頭金ゼロの960円の分割払いとして、×24ヶ月=23,040円というわけだ。
これは他のキャリアに言わせれば、とても脅威なのだという。いわゆるスマートフォンのカテゴリーでは通常この倍額以上はするのだそうだ。
iPhoneの日本国内への上陸を幕末の黒船になぞらえたメディア記事も散見されるが、確かに日本においてはこれまでの携帯通信事業は、世界的に見てとても特殊な構造にあったようだ。


番号ポータビリティーが認可されたのも数年前であったし、いわゆる端末0円という奇妙きてれつな販売システムは日本市場を起ちあげるための初期における限定的な商慣行であったのだろうが、やっとこの販売奨励金という名目による端末価格のわかりにくさ=料金体系へのしわよせと判りにくさも総務省の行政指導により、少し改善されつつあるようだ。
iPhone 3Gの端末の実質的負担が23,040円という安さ(一括払いの価格は69,120円)は、この販売奨励金によるもので、キャリアにはかなりの負担額となる。
〓SoftBankとしてはこの端末販売での過負担を通信代名目で月々最低7,280円を徴収することで賄おうという魂胆だ。
投資家筋では、この新たなビジネスモデルで果たして〓SoftBankは収益を上げられるのか、という懸念もあるようだが、Apple社との収益配分がどのようになっているのかが判らないかぎり、その実態は見えてこない。
黒船襲来という言葉に込められる国内携帯事業のiPhoneへの脅威とは、これまでの携帯事業における慣行への見直しを迫るだけではなく、やはり何よりもiPhoneが持つガジェットとしての他の追随を許さぬ魅力の前に、国内の端末が見劣りしてきていることも明らかなこと。
Webブラウジングがタッチパネルを縦横に駆使することで、いわゆる携帯専用のサイトではなく、一般のMac PC向けのサイトをそのまま表示できるということ。
さらにはPDF、Microsoft Excel、PowerPoint、WordファイルとiWorkファイルを含むさまざまな標準フォーマットが元のフォーマットのまま正確に表示する。
あるいはMac、PCに接続するだけで必要なデータが同期でき、またMobileMeというApple社のサーーバーを介して、いつでもどこでもユーザーの様々な新しいデータが常に同期されるという至便さ。
さらには世界中のiPhoto用アプリ開発者の成果は等しく全てのユーザーが選択購入可能となる(これまではキャリアが開発したアプリを、そのキャリアの端末に埋め込み、これを使うという囲い込みとは全く異なる新次元の環境が現れる)。
ところでタッチパネルの方式であるために可能となったことがいくつもある。
様々な言語に対応できること。
これは言語に限らずであるが、入力キーがハードに依拠しない、ソフト依存であるために無限の可能性があると言うことだ。
また電卓機能は、この iPhone3Gからは横向きに倒すことで関数電卓の機能も可能となった。限られたボタン数では入力できないからね。
何よりも正面には液晶パネル以外にあるのは電源ボタンのみという端正で美しいデザインは魅力だ。
さらに黒船襲来に込められた脅威とは、日本の携帯ビジネスにおける、通信インフラの建設、端末の開発、ソフトウェアの開発、販売、ネット接続のサービス提供など、これらの事業を全て統括してきたのがキャリアだった。
言われるところの「垂直統合型」であり、いわば囲い込み戦略でユーザーを縛ってきていた。
しかしiPhoneとはApple社が端末を自社で基本ソフトとともに開発・製造し、かつこのOSの下で動く様々なアプリを世界のプログラマーに開発させ、これをiTunesを窓口に販売する、という全く新たなビジネスモデルを掲げて登場したことで、国内キャリア、あるいは製造メーカーは戦々恐々としているのだろう。
iPhone 3Gの日本上陸がもたらす新たな地平がケータイ市場に実際どのようなインパクトを与えるのかは、想定不可能だ。
ただ市場における問題に留まらず、IT社会におけるモバイルの在り様をも変容させていくターニングポイントになることだけは間違いないところだろう。
個人的には、これ以上ネット社会に深入りするのは避けねばと常々考えてきただけに、実に悩ましい問題であることだけは違いない。
うちの若いアシスタント(見習い)はdocomoの契約で月10,000円前後支払っているのだという。でも周りではもっと高額な人がたくさんいるのだそうだ。
7,280円という月額料金イメージに怯えているボクは異端児?

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  • 私の友人にも既に予約を入れている者がおりますが
    彼は7,280円は、ほぼ妥当と考えているようです。
    携帯への依存度によって反応はまちまちです。
    ただヘビーユーザーにとってはバッテリー交換ができない
    などマイナスの評価もあるようです。
    しかし、69,120円と199ドルの差額はどこへ行って
    しまうのでしょうか?

  • acanthogobiusさん、どうされます?
    >69,120円と199ドルの差額はどこへ
    いわゆる「販売奨励金」という旧慣行の制度が吸収するのでしょう。
    つまりは月額負担の7,280円の中に巧妙に埋め込まれるのですね。

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