工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ルーター刃物の話しをしよう

カスタム ルーター刃

〈カマボコ面〉という面形状がある。
うちでは甲板の木端、木口部分にグルリと回したり、テーブル脚部、ズリ脚のTopイメージをを柔らかにしたりと、汎用性の高い面取りカッターになっている。

今回、手持ちの刃物では対応できない厚みの部材に施す必要に迫られ、新たに製作した。
(画像Topは、カスタム設計のルーター刃の一部、今回製作したのは左から2つめ)

さっそく使用したが、良いフィーリングだった。

それまでは、25mm、40mmと2種のカマボコ面のカッター(ルーター刃)が用意されていたが、今回は60mmと、かなり大きなサイズ。
円弧Rは60。

制作してもらったのは、普段から刃物の研磨をしてもらっている静岡市内の刃物屋さん。
ここは木工刃物の研磨をするだけではなく、刃物製作も積極的に受けてくれる。

設計図をFaxしたところ、いくつかのリスクを指摘された。
60mmという長さにしては径が細すぎるとのこと。
細いとスクイ角の設定において制約があり、切れ味が良くないということである。

実は、うちには高速面取り盤があるので、本来であれば、切削性能、作業の安全性からすれば、1”軸の高速面取り盤用のカッターを製作すべきところ。
しかし製作コストからけちり、ルーター刃とした。
加えて使用頻度もとても低いだろうからね。
その価格差は、ほぼ半額。

またこのルーター刃での製作というのは、刃物屋にとっては技術的に、より困難であるようで、苦労を掛けてしまったようだ。
大きなサイズなので軸も12φではなく、16φで設計したのだが、それでも軸が細いことから成形加工に困難を伴ったようだ。

しかし刃物職人としての意地に賭け、見事に作り上げてくれた。
プロとはかくあるべし、という見本のような刃物屋だ。
あらためて感謝を !

画像下は、このカマボコで切削したあるキャビネットの柱(部分)

なお、このようなルーター刃、高速面取り盤のカッター、あるいは昇降盤用のカッターなど、既製品では事足りない場合はいくらでも出てくるが、自身で設計し、近隣の刃物屋で製作してもらうというのが一般的になってきている。

昔は、今のように超硬刃ではなく、ハイス(SKHなどのハイスピード鋼)であったので、グラインダーなどで家具職人自らが作っていた。
今では、ボクも含めてのことだが、そうした器用な職人は少ない。

因みに、今回製作してもらった刃物屋は以下の通り。
もし興味があり、製作したい場合は1/1設計図を送り、相談するのが良いだろう。
製作コストは様々だろうが、大手刃物メーカーへの依頼よりは、はるかに小回りが利き、価格的にもメリット大だ。

【杉山刃物】
・420-0061 静岡県静岡市新富町6-6-4
・Phone:054 252 4761
・Fax:054 251 0521

hr

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  • あれ、杉山さんの親戚ではないんですね。
    以前、artisanさんに紹介していただいた形状の角面カッターを
    作ってもらいたくて、ネットで探した刃物屋さんに問い合わせたら
    「今使っているカッターはありますか?」なんて聞かれたことがありました。
    「今使っているのがあったら頼まないのに」と思って、それっきりになりました。
    結局、既製品で間に合わせたのですが、こういう生の情報は貴重です。

    • >親戚
      静岡ではありふれた性なのですね。

      >「今使っているカッターはありますか?」
      これはサンプルとして貸して欲しい、という意味?
      基本的な刃形状なのに、困りますね。
      木工職人も、刃物職人も劣化の一途?

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