工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

LEDは未来を拓く

はじめに

あなたの周りには、LEDはどれほど使われているでしょうか。

住宅内ではLED電球、夜間の足下灯、玄関灯、あるいは自転車のヘッドライト、尾灯。
懐中電灯にヘッドランプ、さらにはキーホルダーにもボタン電池で駆動する小さなLED照明器具が付いているかも知れません。
最近、新車に替えられた方は、ヘッドライト、テールライトがLEDであった可能性が高いかも知れません。

さらには、大型液晶TVのバックライト、そしてPC、Macのモニターの液晶バックライトも徐々に蛍光管からLEDに切り替わりつつあります。
スマホは恐らく、ほとんどがLEDバックライトを採用しているのでは無いでしょうか。
なお、こうした液晶バックライトの場合は単にLEDの省電力性だけではなく、それまで液晶バックライトに用いられてきた蛍光管には必須の水銀使用が避けられる意味も大きいです。
また、私たち木工職人にとり欠かせない充電式の電動工具の多くには、手元照明として欠かせないLEDランプが内蔵されていることは知っての通りです。

今後開発される電動工具には必須の付属機能になることは明らかで、これが搭載されない電動工具は見向きもされなくなってしまいかねませんね。

一歩外へ出れば、交通信号も雨の日などの視界の悪い環境でも強い輝度を出せるLEDに徐々に切り替えられつつありますし、新設の街路灯にも取り入れられるなど、こうした公共空間の照明設備には積極的に導入設置されているようです。

LED

事ほど左様に、LEDは現代社会の生活の隅々にまで普及しています。

昨日スウェーデン王立科学アカデミーから発表された2014年度のノーベル物理学賞は青色発光ダイオード開発の3名の科学者、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授天野浩・名古屋大教授赤崎勇・名城大教授に授与されました。

この3名の科学者による世界的で歴史的な貢献は、誰の目にも明かで、また実に分かりやすい受賞対象であったことは疑いようが無いですね。
スウェーデン王立科学アカデミー、2014物理学賞発表の席(公式Webサイト、動画から借用)

スウェーデン王立科学アカデミー、2014物理学賞発表の席(公式Webサイト、動画から借用)


すばらしい受賞ですし、日本全体が沸き立っているのも、十分に理由のあることで当然です。

これまでのノーベル物理学賞が、どちらかと言えば基礎物理の分野が多かったのに対し、今回は応用物理、物性の実践的研究としての、まさに民需での汎用LEDへと連なる開発であったことが特徴的で、また現在の私たちにの生活には欠かせない分野が対象になったことは嬉しいものです。

このLEDは、現在急速にその応用技術が進化しつつあるところで、この3名の開発者にとっても、その汎用性は思いもよらない分野へと拡がりを見せており、計り知れないほどの応用活用に期待できるところがすばらしいです。

あるいはまた、特筆すべきこととしては、低開発国における照明インフラの遅れに対し、ソーラーパネルと併せた、この省電力のLED照明の普及は、大いなる文明的発展へのテコになるだろうことは間違いないところだと思います。

さて今日の記事は、LEDを住宅照明への導入という切り口で、個人的体験に踏まえた側面から書き記します。

個人的体験から

私がLEDの商品を間近に手に入れたのは何だったのか、良く覚えていませんが、2002年に購入したApple社のiPod(第二世代)に使われた液晶バックライトが最初だったかも知れません。
あるいはその前年に購入した PowerBook G4のスリープランプがLEDでした。

MacBook Proスリープ表示灯

MacBook Proスリープ表示灯

上蓋を閉じることで、スリープ状態になるわけですが、システムが終了されていない状態を表すため、駆体前面の側面に小さな高輝度白色LEDのパイロットランプが点灯し、ゆっくりとした周期で明るくなったり、暗くなったりするのです。
つまり、こっくりこっくりと居眠りする時の呼気のような動作であり、それはそれはかわいいものです(現行機種にも搭載されています)。
他機種はあまり分かりませんが、Apple社のウィットに富んだデザインですが、LEDならではの演出法でした。

その後はマグライトがLED対応したのを機に、自転車のヘッドライト用に導入したりと、小型のライトは専らLEDに切替わっていったのは言うまでもありません。
このBlogでも触れたことがありますが、木工機械の手元灯として、LED素子の照明器具を比較的早い段階で導入しました。

また、数年前に購入したMacBook Proの液晶バックライトはLEDでしたし、こうして徐々に私の周囲にもLED導入が拡がりつつあったのですが、我が家では昨年から今年に掛け、一気にこれが促進されました。

室内の照明のことですね。住まいと工房を新しくしたことを機に、工房、作業場の蛍光灯は残念ながら既存ののものを使わざるを得なかったのですが、住まいと、Galleryの照明はほとんど全てをLEDにしました。

数年前までは、LED照明器具は高価というイメージが拭えませんでしたが、3.11東日本大震災を機に、一気にLED照明が普及することで、導入コストも大きく低減してきています。

今では口金E26の電球型 普及版であれば1,000円を切る価格で流通しています。
このように割高感がほとんど無くなりましたし、大体、日本のメーカーは白熱灯のランプを製造しなくなりましたので、新たに購入するのであれば、無条件にLEDか蛍光灯という選択になるわけです(蛍光灯型のLED照明器具もありますが、こちらはまだ高価です)。

LED照明器具の効用とその特徴

LED照明器具の最大の特徴は省電力であるという点にあります。
一般によく使われる電球40W形相当で7w前後、電球100W形相当で14w前後といったように、大きく省電力に貢献しています。
今後はさらにLED素子の高効率化で省電力性は高まるものと思われます。

またLEDはこうした省電力への開発普及だけではなく、調光・調色機能を持たせたり、演色性にも優れたものが一般的になりつつあるようです。

1つの事例を挙げますと、我が家のダイニングテーブル上のペンダント照明は、平板でシンプルなディスク型に、数多くのLED素子が溶着された簡単なものですが、食品の色がとても鮮やかに演色されます。

さほど高価な商品ではありませんでしたし、デザインが気に入って購入したものですが、その時点では発色がどのようであるのかの懸念は拭えませんでした。

あにはからんや、取り付けて最初の夕食の時には、その発色性と明度、照射面積の広さなどに感動を覚えたほどでした。

一般的にLED照明に用いられるLEDは、今回のノーベル物理学賞の対象になった青色発光ダイオードが用いられているのですね。

LED

ご存じのように、青色発光ダイオードが開発されるまでは赤色、緑色の2種のものだけでしたが、この青色発光ダイオードが開発され、光の3原色が揃ったことにより完全な白色発光が可能となったわけです。同時に、白色だけでは無く、基本的にはこのRGB3原色の組み合わせで全ての色が出せるようになったということでもあるわけです。

ただ一般的な照明における白色発光の場合は、3種混合を使うのでは無く、青色発光ダイオード1つに黄色の蛍光色を被せ、結果、白色で発光させているのです。
それだけに演色性に欠かせない赤色側に傾斜した色調を出すのは困難なようなのですが、これを克服してきていることも、この体験により知ることができました。

さらにまた、部屋の照明の一部には、周囲の光と、人の動きに反応するセンサースイッチ機能を持たせたLEDランプを導入していますが、とても気に入っています。
玄関の天井やトイレに向かう廊下上のダウンライトなどです。
常時通電にしてあり、暗くなり、人が近づくと点灯するという機構が内蔵されていて、とても便利です。

電球型の本体にこのセンサーを組み込んだものであれば、数千円で販売されています。(右の画像;クリック拡大すれば分かるかと思いますが、電球本体の最下部にポッチリと盛り上がったところがセンサー部です)

トイレでは、換気ファンとダウンライトのセンサースイッチを設けています。
周囲が明るければ、人の気配でファンだけが駆動し、暗くなると、両方が駆動するといったスイッチ機能です。

一方、キッチンの手元ライトは、数多くのLED素子を埋め込んだ棒状のもの(2×4×40cm)を使っていますが、とても気に入っています。

まず何よりも、顔から近い位置で発熱はゴメン被りたい位置関係にあり、LEDはその点ほとんど発熱せず、気になりません。

またスイッチも、調理で濡れた指先でも、本体端末部の皮膜カバーの上から軽くタッチするだけでON、OFFする機構となっています。
こうした優れた製品が手軽に入手できる時代なんだなと、感じ入っているところです。

LEDは半導体素子の1つと言うことで、様々な電子機器との親和性が高く、それだけに汎用性があるとともに、様々な機構が組み込みやすいということにもなるわけです。


LED

これまで、日本の住環境での照明は白熱灯がごく一部に用いられる他は、ほとんどが蛍光灯であったと思います。例に漏れず我が家も同じでした。

LED主体の現在の環境になってみて気づくのは、蛍光灯のフラットな明るさで部屋全体が均等に照らされるのに対し、必要以上に照射するのではなく、必要な個所にスポット的に照らされることや、ON、OFFの多機能で便利な機構を内蔵したLED照明器具は、品質の高い演色とともに、夜の闇を感じ取ることができるなど、その評価はとても高いものがあります。

つまり単に省電力というコスト的なメリットを超え、住宅照明の在り様を考えさせる良いきっかけになったことを高く評価したいですね。(続く

少し長くなりそうですので、残りは次回に回します。
次回は、「今後のLED活用の世界とは」とでもしましょうか。

スウェーデン王立科学アカデミーの2014年ノーベル物理学賞決定を知らせる記者会見
[youtube]http://youtu.be/VqvoEDa7F54[/youtube]

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  • 以前、このブログで紹介のあったZライト、Z-618ですが
    標準はクリプトン球ですが、LEDも使えるようですね。
    気になっている商品ですが、まだ手が出ずにいます。

    • Z-618、ワークベンチ用には良い選択だと思います。
      実は私、重厚な家具の組み立ての最中、このZライトのアーム部を破損させてしまい、あらためて購入せねばと思案中でしたが、対応するLEDランプがありますか。

      E17という口金ですが、電球部、かなり細身で無いと対応しませんのでね。
      シャンデリア用などとして、33φほどのものがあるようですが、これでは明度が不足するのではと、
      付属のものは60Wですので、相当品のLEDを探したいところです。

      acanthogobiusはどんなものを探されたのでしょうかね。
      請う、アドバイス。

  • こちらのページの交換ランプの所を参照してください。
    http://www.zlight.net/product/incandescent/Z-618/
    破損の具合にもよりますが、山田照明で部品の調達が可能だという
    評判があるようです。

    • さっそくのアドバイス、感謝であります。
      確かに、公式Weサイトに掲載されていますね。

      会社に電話して確認しました。
      案内されている三菱のLED球は検証済みであるとのこと。
      ただし、440lm、40w相当で、デフォルトのミニクリプトン球、60wのものと較べると暗いとのこと。
      残念ながら他に対応するもので、より明るいものは見あたらない。
      また、より明るいものを選ぶと、ソケット部の発熱で耐久性に懸念があるとのことでした。

      このあたりは、私も良く理解できるところ。
      暗くてもLEDで対応するか、デフォルトでいくか。
      私はこの機種においては、後者でしょうか。
      (これは数年間使用しての経験を含む評価です)

  • なるほどですね。
    amazonのレビューを見てみると、付属のクリプトン球は
    明る過ぎるという人や、蛍光灯に変えて使っていると言う人など
    色々のようです。

    • 確かに、このライトの下で、どのような作業をするか、あるいはその人の、明度、光線の種類、演色、などの好みは実に様々でしょうからね。
      acanthogobiusさんもぜひ、好みに合ったものを選んでください。

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