工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ドラフターの未来は ?

ドラフターのデジタル角度表示のヘッド部分にトラブル …>_<… 液晶の表示が不安定、表示ができない、などの不具合が発生。 業界Topと考えられるMUTOHのWDN-A1という機種。ちゃちなものではなく、ちゃんとした本格的なものだと思うのだが‥‥。
もう既に17年ほど使用してきたものだが、他には全くトラブルもなく、快適に使用してきただけに何とか修復させたい。

さっそくメーカー、武藤工業株式会社に修理依頼。
連絡先をGoogle検索して気付いたのが会社組織の改編。

まずMUTOHホールディング株式会社というところに統括され、その傘下にこの「武藤工業株式会社」という会社が組織されているが、他には「ムトーエンジニアリング」、「ムトーエンタープライズ」他、欧米4個所の海外法人を含め統括されているようだ。
「武藤工業株式会社」はCAD関連の周辺機器(プロッターなど)、ソフトウェアなどを対象とし、今回の修理対象のドラフターは「ムトーエンジニアリング」というところの扱いになるのだそうだ。

数日後、この名古屋営業所からエンジニアがやってきてくれた。
挨拶もそこそこにさっそく症状をチェック。電池フォルダーの液漏れなどでの接点不良を確認するぐらいで、結局工場でないと詳細な点検はできないとの判断。
持ってきてくれた互換品を付け替え、デジタル表示部を含むドラフターのヘッド(心臓部)を持ち帰っていった。

さてところが、付け替えてくれたこの互換品。デジタルではなくアナログ表示のもの。
メーカーはケチでそうした互換品を持ち込んだものではなく、現在の仕様のものがこれなのだという。
つまりデジタル表示のものは現在製造されてなく、アナログのみなのだという。

これは既に10年以上も前に切り替えられたものだと言う。
果たしてユーザーにとり、これはどのように解釈すればよいものか。

さっそくこのアナログ表示のドラフターで操作したものの、やはり具合が悪いじゃん。
やだよ、やっぱいデジタルじゃ無いと。


ボクは何でもかんでもアナログ拒否、デジタル礼賛と言うことは、ない。
25年ほど昔になるか、電子機器にデジタル表示が一般的になってきた頃、腕時計にも確かカシオあたりからデジタル表示のものが市販されるようになった頃、友人はさっそくこれを身につけて誇らしげにしていたものだが、ボクはそれに動じるということはなかった。
何故なら時間とは切れ目のないアナログ的な概念であり、その表示から時間を把握するのはアナログの方が認識しやすいからだ。
(今日はこのBlogの時計をデジタルのものにしてみたが、やっぱどうもねぇ。
ただ踊り付きなのでお許しを。BGMは右下のスピーカーをクリックすることで鳴るよ:UNIQLOCK – 世界三大広告賞を連続受賞 – より)

しかしこのドラフターのデジタル角度表示というものは、とても便利。
今回互換されてあらためて気付かされたが、アナログ表示と比較して視認性が圧倒的に高い。

アナログの利点をあえて挙げれば、連続する数値としての角度設定が可能というところにあるかもしれない。
しかし家具設計などではデジタルの10分単位(1/6°)の刻みで十分。全く問題がない。

何とか修理していただくのを待ちたいと思うが、しかし必ずしもその展望は明るくない。
何故ならば部品の在庫管理における社内規定での年数は既に大きく超えていて、入手できない可能性が高い。

ところで何故デジタルを停止して、あえてアナログに戻したのかは、説得性のある説明は無かった。

ご存じのように、この世界は既にCADでの製図に切り替わって久しい。
せいぜいドラフターの需要は、教育現場などに絞られるようで、あえて高級な機種を製造するメリットは無いのだろう。

不安な心持ちでムトーエンジニアリング担当者からの連絡を待っている。

余談だが、この会社、話題のGoogle SketchUpの販売窓口にもなっていて、講習なども開催しているようだ。
近隣で行われれば参加してみたいと思うが、東京、名古屋あたりが会場となるので、ちょっとエントリーしずらい。

と、ここまで書いてきたところにMUTOHの件の担当者から電話が。
不吉な予感‥‥。
案の定、修理不能。角度読み取り、デジタル表示のIC基盤が機能不全。互換部品はナシ。
現在、とりあえず付けていったアナログ表示の互換品を買ってくれ、とのこと。
何と請求額50,000円。 あちゃ〜。。どないしょ ?!?!
(本体は確か200,000円ほどのものを、キャンペーン価格で×85ほどで買ったもの)

全く想定外の出費だ。  二の足を踏んで、一両日待ってくれとの返事を返しておいた。
ネットで中古のこんなもの(ヘッドの互換品)あるわけないか。

ドラフター


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  • こんばんは、
    どなたでしたっけ、やはりドラフトを使っていましたね。ディジタル表示かどうかは知りませんが。でも5万円出す位なら、この際CADに移行した方が良さそうにも思えますが。

  • こんにちは!
    僕の父が使っていたのも、デジタル表記の物でした。もうCADに移行したので、この定規部だけを残して製図板は処分したと言っていました。
    全く使っていないとは思いますが、手放さないだろうなあ。一応聞いてみますね。

  • どうやら、同型ではありませんが、Mutoのドラフターヘッド残してあるはずです。 表示は液晶ではなく、赤く光る表示です。購入は1978年だと思います。
    任意の角度から、0設定して、そこからの角度を取るときなどDigitalは便利です。それと、老眼になると読み取りが楽です。
    8月から姫路でオーバーホール作業をしています、戻るのは11月末になります、待ってくだされば提供します(合わないかもしれませんが)。
    Mailは須藤オルガン工房のHP の連絡フォームから下さい。

  • 松本さん、CADの至便性、使い回しの良さと、ドラフターの簡便性、自由さ、いずれも捨てがたい魅力です。
    Ikuruさん、早速のコメントありがとうぎざいます。
    ご心配掛けています。

  • 須藤師匠、出張先からのコメント恐れ入ります。
    ご提供の申し出、心より感謝いたします。
    >老眼になると読み取りが楽です
    どうもボクもその領域に入りつつあることでの憂いなのかもしれません(苦笑)
    問題は互換性があるのかどうかですが、帰還なさってからで結構ですので、まず型番をご確認いただければと思います。
    その上でメーカーに互換性があるかどうか確認したいと思います。
    ありがとうございました。

  • みなさんおはようございます。
    LEDでなくて赤く光ると言えば、LEDの一世代前のニキシー管(ネオン放電管)でしょうね。うわー懐かしいです。それが現存しているなんて、これまたすごいことですね。関係ない話ですみません。互換性があればいいですね。

  •  はじめまして。ドラフターで検索していたら、目に入りました。
     勤務する会社にも武藤のドラフターが置かれています。現在、使うのは社長しかいませんが、ドラフターで黙々と設計する姿は何となくカッコよく見えてしまいますね笑。
     私は普段CADを使っていますが、ドラフターでの製図もたまにしています。書いたり消したり面倒臭いですが、なんか自分の引いた線に愛着が湧いたりして、それなりに楽しいですね。
     今後、CADソフトが更なる進化を遂げても、ドラフター自体はなくならないのでしょね。

  • クラプトンさん、
    > ドラフターで黙々と設計する姿は何となくカッコよく見えてしまいます
    そんなものですかね。笑‥‥なるほど
    アナログ作業における、身体性の愉悦かも、ですね。
    過日、汐留ミュージアムでの「建築家・坂倉準三展」ではいくつもの図面が壁面を飾りましたが、当然にも手描き。ボクにはとても格好良く見えましたね(笑)。
    無論 CADならではの作業性、高精度、汎用性には勝てませんがね。
    ただ造形プロセスの道筋において、アナログとデジタルでは頭脳処理での活用部位が違うというところもあり、この辺りの差異はおもしろいかも‥‥。
    クラプトンさんの仰る愛着も分かるような気がしますよ。
    コメントありがとうございます。

  •  1年ぶりに投稿させていただきます。久々にドラフターで検索していて、ふと立ち寄らせてもらいました。
     あれから1年。時の流れは速い・・・・。
     ドラフターでの製図、設計、私は今でもしています。私は金属加工業に従事していますので、特に治具ですね。1/1で製図し、物の大きさを実寸で感じながら描く意義を実感しています。ただ、修正と保存が大変ですね。
     ドラフターは今でも欲しいです。でも、場所とりますからね。『アナログとデジタルでは頭脳処理での活用部位が違う』という返信について。これは私も興味を持っています。ツールの利便性に、果たして人間の思考は追従していけているのか?
     むしろアナログの『身体性愉悦』=物を造る悦びそこにつながる(?)のでは、とさえ思えてきました。手書き=非効率だけではない効用面を後輩にも伝えたいですね!

  • クラプトンさん、ご無沙汰でした。お元気のようで何よりです。
    (しかし、見知らぬ人とこうして検索で繋がるというのも、考えて見ればネット社会ならではのものですが、不思議な感覚に捕らわれますね)
    おかげで、こうして1年前の記事を再読させてもらうことができうれしいです。
    >物の大きさを実寸で感じながら描く意義を実感
    なるほど、それは同意できるところです。
    私たちのような作り手であれば、アナログも、デジタルも、それぞれに使いこなせることが望ましいでしょうね。
    相補的、とでも言えば良いかも。
    もちろん、私の木工と、クラプトンさんの金工とは大きく異なるところも多いはずですが。
    コメントありがとうございました。

  •  こちらこそありがとうございます。木工と金属加工とでの差異はあるのでしょうが、物を造る、創る、という点では同じだと考えております。
    『アナログも、デジタルも、それぞれに使いこなせることが望ましいでしょうね』という意見には同意見です。
     あと、私見ですがドラフターの利点として、作図途中の図面が常に人目に晒されるということでしょうか。CADですとPCを閉じれば第三者の目に触れる事がありません。
     つまり、第三者=先輩、同僚等、が製図版に貼られている図面、スケッチを見、アドバイス、欠陥を指摘してくれたりしやすいという利点です。「これじゃ強度不足だよ」「こんな形状だと加工しにくい」等の意見を仰げるメリットがあると思います。ホワイトボード的=つまり図面を見ながら、複数人があーだ、こーだと意見を述べやすいのではないでしょうか。
     私自身がまだまだ経験不足で指導される立場にありますので、そういった指摘は非常にありがたいのです。
     あと、やはり”物を創っている”感ですかね(笑)。紙の上の1本の線から始まった図面から、現物が創り出されていく過程は楽しいですね。デジタル時代にあえて、非効率(?)な手書き図面を描く、これって逆に凄く贅沢で幸福な時間なのではないでしょうか。またご意見ください。

  • クラプトンさん、
    なるほど、職場での製図作業となると、私のようにソロでやっているのと違い、いろんな環境要素が絡むというわけですね。
    おもしろいお話しですね。
    しかしこれは製図/CADという世界だけの話しではなく、IT社会にみられるある種の孤独な作業環境への偏倚、という傾向として捉えることができるかもしれませんね。
    なるほど、ですね。
    後段については同意できるお話しです。

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