工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

機械、電動工具をその性能、品質から考える(海外メーカーとの比較において)

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はじめに

このBlogでは最近upしました木工専用のドリルプレス(日本国内での一般名称は「ボール盤」)をふくめ、以前より幾種類もの電動工具のレビュー記事を上げてきました。

その品質、革新性、あるいは製造メーカーの開発設計、さらにはそれらから見え隠れする企業理念などを個別に評価してきたところです。

ここでは、そうした記述を踏まえ、敷衍させつつ、木工機械、電動工具の現況を浮かび上がらせてみたいと思います。

その具体的な方法としては、日本の関連企業の開発姿勢を海外のそれらと比較対照しつつ、機械、工具選択におけるささやかなるサイド的な資料となれば良いでしょうし、またそれを越え、開発姿勢における問題の在り様にも迫ることができればと考え、重い腰を上げてみることにしました。

なお、大型木工機械について考えますと、私が所有しているものは専ら国内のメーカーのものがほとんどで、海外のものでは知人が導入したものを見知るほどですので、評価対象とするには適しません。

ただ、私の愛用する木工機械は、その製造メーカーの多くが廃業してしまっているという現状を鑑みれば、これからの若い方々としては、当然にも海外メーカーのものを選択対象にせざるを得ないという問題も既に現実的なものになってきており、この分野への言及も必要となってくるでしょう。

なお、この記事は、ある読者(意欲的な若い家具職人)からの1本のメールでの問いかけを受けたことから起案したものです。

ただ、私自身も日頃考えていた対象でもあり(あるいはこのBlogでも部分的に書き綴ってきたことでもあり)、私自身の考えを整理するという意味を持つものでもありますので、良い機会を与えてくれたものと、この若い読者には感謝せねばなりません。

この記事はBlogスタイルに1つの記事で納めるには無理のあるものになりますので、複数回に分けての投稿になります

木工への踏み出しに出会った電動工具

私が木工を志し、まだ本格的な修行に入る前でしたが、最初に購入した電動工具はBOSCHのトリマーと、スタンド(ボール盤様のスタンド)でした。1980年代半ばの頃のこと。

trimer

いずれもかなり旧いタイプのトリマー、右がBosch

BOSCHというメーカーの選択でしたが、当時はインターネットなどというツールなどありませんので、他社の製品と真剣に比較検討してのものというのではなく、質実剛健なイメージの強いドイツ製ということと、世界的に名の通ったメーカーであることへの信頼でしかありませんでした。

(加え、ペザントチェアで著名な林 二郎さんのご子息の林遊卯さんが著したご本の中でも、父親から譲り受けたものとして、このBoschのトリマーが使われていたように記憶していますが、既にその本は手元には無く、判然としません)

事実、本格的に木工を始め、独立起業し、その後様々な機械、電動工具を整えていくことになるわけですが、このBOSCHのトリマーと、スタンドはそれから30年を経、未だもって現役で使われていることを考えますと、この選択は間違ってはいなかったと言えるでしょう。

作業者にとり、日々接し、業務の合理的な進捗に寄与する工具というものは、単なるツールという属性を越え、いわば愛玩物的で、よりユーザーに近しい関係になっていくという要素が生まれでてくることは、多くの作業者が経験するところだろうと思います(謂わば手の延長としてのそれ)。

そうした思いはその工具の普段からの注油などの手入れであったり、それが持つ機能をより高らしめるためのジグの開発であったりと、作業者とは切っても切り離せない「伴走者」へと日々更新されていくものでもあるでしょう。

現代の発展した工業社会で、工具などというものは、簡単には消耗しつくされるものではなく、樹脂部分などの摩耗、亀裂、破損、ベアリング、カーボンなどを修理・交換をしていけば、長期にわたり使い続けることができ、職人生命と変わらないほどの耐久性を有していることも多く、そうした意味合いからもまさに伴走者と言っても良いでしょう。

余談になってしまいましたが、
その後、導入した私のBOSCHの主要な電動工具としては1/2”のプランジルーター(1613EVS)を挙げることができます。

 手前左が1613EVS

左から1613EVS、M12、Porter cable、Ryobi

これは残念ながらテンプレートガイドの納まりでの精度が悪く、センターが取れておらず、ずいぶんとストレスを溜め込むということになり、ハンドルーターの主体はもっぱら、木工修行スタートの時期に導入した日立のM12でした。

この日立のM12は数年前に大きくモデルチェンジしていますが、M12はずいぶんと長い期間、日立ルーターの最上位を占めていたマシンです。
FWW誌でも、彼の国の木工職人に人気の機種であったようで、よく見掛けることがありました。

ハンドルーターにおいては、この2つの機種に加え、PoterCableのルーターを導入していましたので、都合3台のルーターで使い回すという状況でした。
(反り防止のための吸い付き桟の溝掘りを効率的に行うには3台のハンドルーターが必要となりますので、最低数の保有状況だったというわけです)

本稿 続く

hr

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