工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

春・花便り、3題

花3種
今日は週末でもあるので、花便りでも。
この週末、ソメイヨシノは各地で満開を迎えているようだ。
今日はサクラではなく、身近で見かけた花々をパチッ !
Top画像左から、
《スミレ》、《源平枝垂》花モモ、《ツタンカーメンのエンドウ豆》
スミレ
まずスミレ。
このスミレ、庭のそこかしこに咲き始めた。
毎年咲くスミレだが、いつも咲く場所が違う。
画像のものは工房入り口ドア付近のコンクリート土間の割れ目に、もっこりと芽を出した「ど根性スミレ」だ。
10日ほど前に気付き、水やりをしてきからね。
スミレも様々な色があるようだが、この濃い紫色のものは格別な(高貴な?)感じがする。
以前も書いたことだが、このスミレの名称の語源として「墨入れ」から来ているとの説は有力だ。

源平枝垂れ

源平枝垂れモモ次は「源平枝垂」というモモの花。花モモの一種。
白のベースに赤のブチが入る。あるいは紅色のみのものもある。
これらが同じ1本の幹からというので、ちょっと驚くよね。
この対照的な2色が混合するので「源平」と命名されたようだ。
しかも枝垂れなので、なかなか趣がある。
当地の農家の庭では好んで植えられているのをよく見かける


最後は「ツタンカーメンのエンドウ豆」
昨年11月に頂いた8粒をプランターに植えたものだが、早くも花をもたらしてくれた。
マメの花は概して綺麗なものだが、このツタンカーメンのエンドウ豆は格別の美しさ。
実を付けるのが楽しみだが、この花と同じような濃い赤のサヤだそうだ.。
ツタンカーメンのエンドウ豆

製材後の天然乾燥は

割れ止め剤
昨日に続き、今日も半日ほど製材所でお仕事。
木口割れ止め剤の塗布作業と雨対策の屋根設置。
製材直後の材木はたっぷりと水分を抱え込んでいる。
木工制作の材料として供するためには、大気が含む水分と同程度(平衡含水率)になるまで乾燥させなくてはならない。
一般には含水率12〜15%ほどまでに落とさねば制作後に反張など様々な障害をもたらしてしまう。
天然乾燥の場合、通常1寸の厚みの板で1年、などと言われるが、うちではその倍の時間を1つの目安としている。
材種によっては、その後人工乾燥のプロセスを経た上で、制作へと回される。
天然乾燥でも、時間を掛ければかなりの程度まで落とすことが可能だが、ただこれだけではどうしても環境の状態に左右されやすい。
人工乾燥によって、含水率を一端かなりの程度まで落とし、その後、目的とする含水率にまで戻すことによって、環境の変化にあまり影響を受けることのない安定した状態を保持できる。これが木材乾燥における重要な概念の1つである。
つまり天然乾燥では目的とする含水率まで低減させることは至難であり、予備的段階、プレ段階としての天然乾燥という位置づけになる。
市場で流通している製品などでは、長期の天然乾燥は資金を寝かせるようなものであり、積極的な位置づけはされていない。
あくまでも人工乾燥の釜に入れるための必要条件を満たすためのものでしかない。

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沈丁花の香漂う製材所

沈丁花
桜もほころび、今朝も春爛漫の陽気だった。
実は昨日の朝は雷鳴で起こされ、あわててADSLモデムのライン、電源を抜くなど春先には良くある大気の怒りに震えてしまったが、何と、雷鳴が止んだかと思ったら、屋根を叩く音は豪雨のものとも違う金属的な音に替わった。
はぁ?、何とそれは雹(ヒョウ)。金平糖大(こんぺいとう、って知っている年齢層は50代以上?)の小さなものだったが、一時は積もらんばかりに降り注ぎ、間もなくそれも止み、気温が高いのであっという間に溶けてしまった。
しかし今朝はおだやかな霞掛かった晴天。
やっと製材所のスケジュールが空き、今朝3本の丸太を製材することができた。
以前は工房から比較的近いところに賃挽きを請けてくれる製材所があったのだが、まだ若かった主人が突然病に倒れ、閉鎖されてしまっていた。
しかしここ島田という地域は昔より製材業が盛んなところ。
南アルプス山系を背後に控え、大井川という水運の地の利、東海道に面しているという陸路の利を活かし、一地域は丸々製材業で埋め尽くされるほどの産地であった。
一頃に較べれば、その勢いは衰えてきているとはいうものの、数カ所の賃挽き業者も残っているようだ。
数週間前に丸太の皮むきを7割ほど済ませておいたのだが、今朝は製材の予定時刻より1時間ほど早く到着し、残る皮むきから始まった。
しかしTop画像の楢材(道産)の何と皮の剥き辛いことか。
残り2本のブラックウォールナットはベロッと比較的簡単に剥けるものの。外の鬼皮と甘皮、そして幹肌がびっちりとくっついている。
近くに咲き誇る白い沈丁花の香に助けられながら、何とか剥き終えた頃には、予定時刻になり、製材所のご夫婦と力合わせて、3本を製材し終え、次いで桟積みもやり終えた。

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季節の移ろいは足早に

今日は一段と春めき、工房内の寒暖計は20℃を越えるところを指していた。
熱戦が展開されている甲子園では選手の一人が熱中症でタンカで運ばれたとか。
もう、こうなると鉋掛けも作業服を一枚脱ぎ、一枚脱ぎして、最後はTシャツ1枚になって、なお額に汗状態。
ちょっと焦ってくるのが先に購入し運送されてきた原木の製材ができていないこと。
可能な限りに早めにやっておきたいところだが製材所のスケジュールになかなか組み入れてもらえない。 汗 !、焦 !、あせる !。

老木の開花

ソメイヨシノ
今朝は時ならぬ豪雨に見舞われた。
一昨日22日、ソメイヨシノが開花したとの発表がなされた静岡だが、近くの河川土手の桜並木はまだ画像のような状態。
巨木の枝々にびっしりと並んだ蕾は、今にも咲き揃いたいとばかりに色づき膨らんでいるが、ほころんでいるのは1本の幹に数枚(数葉?、数個?)ほど。
咲き揃った後の豪雨ではあまりに侘びしいが、この週末ほどに見ごろを迎える桜にとっては、むしろ恵みの雨だったかも知れない。
(画像は雨上がり、正午頃のもの。花びらも濡れそぼって少しだらしないね。コンパクトデジカメにて)
今日は所用を兼ねて、この川を渡った先の床屋に立ち寄り、バリカンを入れてもらった。
この床屋、いわゆる価格破壊のチェーン店。
以前どこかでも書いたように記憶しているが、地域の理髪業組合に加盟しているようなところは利用しなくなって久しい。
「次の方、どうぞ〜」
「ハイ、お願いしま〜す」と鏡を前にして座ったのだが、このスタッフ、いきなり「お客さん、白髪が増えましたね‥‥」と、心配そうに一言。
これには、半分「ムカッ」と来て、あと半分「‥良く以前の状態を記憶していたね」と感嘆。
2つ思いが交叉する。(こうした店舗では一人あたり約20〜30分ほどで済ますので、個々の客のデータなど覚えていられないはず。しかもボクは所用の序でに立ち寄るので、広い地域のいくつかの店舗をアットランダムに訪れているのだし)
この茶髪で髭面のスタッフ、聞いてみれば年齢は36歳。それでいて白髪染めの世話になっているとか。
良かったら染めてみません?と薦められもしたが、
(ウォールナットの白太を人工乾燥過程で黒く染めて偽装させるが如くにかい?、と、言葉を返しても分かってもらえるワケがないので、一人でブツクサ‥)
「あなたのように格好良くなる保証があれば良いけど、この年齢ではね。
‥‥、大体あなたのお父さんぐらいの年だしね、ボクは」
「エッ、見えない、見えない。ウソでしょ」
「嘘言ってどうなるのよ。‥いやむしろボクはいっそのこと、藤本義一のように真っ白に早くなってみたいよ」
などとアホな会話の中で、短い時間ながらもその後は快適に過ごさせてもらい、頭も心も軽くなることができたのだった。
そうか、白髪が増えたか。
あまり鏡で写すこともなくなっているからね、自覚が足りないのはその通りかも知れない。
昨日も、地域の寄り合いで宴を囲んだのだが、同年齢のご近所さんも多く、それぞれの体力と容貌の衰えを相互に確認する場になってしまったしね。
抗えないことと、抗わねばならないことと‥‥、加齢と共に新たな問題に直面させられることも多くなってくるが、しかしまだまだ人生は長い。
河原の老木だって、まだまだ美しい花々を咲かせる精力も魔力も宿り、若い樹では見ることのできない絢爛豪華な花吹雪を見せてくれるのだから。

“手作り家具”と機械設備(その17)

米国など海外の木工との比較において考えてみる

国内の木工界における海外からの影響はどの程度に及ぶのであろうか。
確かに現在の木工家たちにとって、インターネットの普及による恩恵でとても容易く海外の木工スキル、インテリア家具デザインの情報が手にはいるようになっている。
あるいはオンラインではなくても、関連する様々な文献も手軽に入手できる。
さらには国境を越えての木工留学、海外木工家との人的交流も盛んに行われている。

ところでこうした交流は決して今に始まったものではなく、限られた諸条件の下であったとしても古来より連綿として続けられてきたものであることは、正倉院の宝物を典型として確認することができる。
無論この中には宝物そのものがシルクロードを辿り、日本へと帰着したものも少なくないようだが、一方では海外からの工匠の渡来がもたらした木工に関わる様々な技法、デザイン、道具の数々があったことだろう。

つまり木工に限らず、芸術分野、工藝全般において、いつの時代にあっても決して閉ざされた世界で独自に形成されてきたと考えるには、多くの無理があるだろうし、様々な物的交流、人的交流を介した技術体系の相互流入というものを前提としたところでの、それぞれの共同体、あるいはそれぞれの国における独自の発展形態があったと見るのが自然であろう。

これらはその時代における世界的な生産様式、あるいはその国々の支配形態に規定されつつ、既存の技術体系の基盤に影響を与え、あるいは国々の国民性、エートスなどにも影響され、さらには社会的要請(社会的需要)に従いつつ、独自に換骨奪胎されたものとして定着、発展していったということもあるだろう。

これまでこのようにして歴史的に形成されてきた技術体系の特性というものも、ネット社会という1つの情報革命を経て、大きく変容しつつあることも確かだ。
良く言われるようにフラットな世界になりつつあるということは、この技術体系においても例外ではないのかも知れない。

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彼岸の一日

ミモザ
春をたぐり寄せるものか、遠ざけるものなのか、ともかくも冷たい雨の一日だった。
今日は所用で出掛けた街中でのスナップ数葉。
彼岸の中日、雨を突いて父と兄が眠るお寺へと墓参。
雨中でいつまで持つかも知れない線香は一握りほどもの量で供えてきたが最後まで燃え尽きてくれたかな。
画像Topは墓地に咲く、これはミモザに似ているけど?違うかな(自信なさげ)。
違いました。山茱萸(サンシュユ)というものです。ご指摘のY.Oさん、ありがとうございます。
ストリートギャラリー
次はJR藤枝駅南口の再開発敷地の壁面に貼られた子供達の絵画のギャラリー。
「ストリートフェンスギャラリー」と命名されている。
中に知人の娘の名前もあった。
これらの図画は、原画の紙ではなく、樹脂などにプリントしたもののようで、雨風にも劣化しない工夫があるようだ。
こうした子供の作品で街中が飾られるのは地域のコミュニティー活性化という意味からも良いことだろう。
木蓮
最後は白木蓮。個人的にはこの季節の花々では何故か子供の頃から印象深い花として愛でる。
葉が無く、真っ白い花だけがツンと天を向いて、凛としていて清々しい。
そうした好みからすれば蕾状のものの方が良いのだけれどね。

塗師屋Aさんの習作

升
画像の升、この仕口は何というのだろうか。
捻り天秤?
過日、MacBook Airでの公衆無線LAN接続の記事で触れた、塗装依託の引き上げに出掛けたときの撮影。
そう、塗師屋、Aさんの習作。
ここの市が運営する伝統工芸の伝習のためのワークショップに参加してのものだとのこと。
彼は塗師屋としてはここ静岡という産地でも指折りの優れた職人さんだ。
難しい塗装の仕事はもっぱらこのAさんに託す。
また塗装においての見識に留まらず、家具制作全般にも旺盛な関心を示し、積極的に行動する人でもある。
このワークショップでは、失われようとしている木工技法を伝えるため、元宮大工の棟梁を講師とし、家具制作に従事する職人を対象として研修を行ったようだ。
何故かこの塗師屋も手鋸と鉋を抱え参加したのだという。
その成果がこの画像のもの。
升2習作ではあるが、決めるべきところはビシッと決めているし、なかなかの出来映えだ。
楽しんでやっているというのが彷彿とさせるようなものだね。
塗師屋にしておくのがもったいない‥‥。
おっと失礼。(塗装を甘く見ちゃいけません)
ところで地板の両木口はどうなっているのかって?
これだから、木工の仕口の遊び心はいいよね。
ボクも訓練校に在籍していた頃は、与えられた課題をさっさとかたづけて、こうした高度の仕口にチャレンジしていたのが懐かしく思い出される。
‥‥つまり、今はほとんどやらない、ということになるかな(苦笑)。
今度は習作ではなく、作品を作ってもらいましょう。
聞いていますか、Aさん。

宮保鶏丁

鶏料理
ボクは時折、木工家ではなく調理人になっていたら大成したかも知れない、などと家人には変な自慢をすることがあるが、どっちも似たようなところでしょ、と軽く鼻であしらわれてしまう。
‥‥つまらない話しはさておき、週末恒例の買い出しで生の落花生が手に入った。
この品種では中国産というのが市場での一般的な認識であると思われるところ、何とそれはオーストラリア産と記されていた。
中国産であったら手を出したかどうか、というのはビミョウなところだが、農薬入り餃子事件の膠着状態は如何ともし難いですな。
またさらには何でもかんでも中国のものは悪と言ったようなメディアなどの潮流は全く同意できないし、不快でさえある。
これまでお前さんたちの胃袋をさんざ満たしてくれたのじゃなかったのかい?
冒頭から少し本件とかけ離れていく気配であるが、
今日はピーナッツと鳥肉の炒め物だ。〈中国名:宮保鶏丁(ゴンバオジーディン)〉
落花生

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反張は炎の力で

炎扉の鏡板として5分厚のウォールナットを木取ったのだが、ややプロペラに反り返っていた。
そのままの状態で平面を出せば、歩留まりは悪くなり、所定の厚みは望めない。
こういう時はどうするかと言えば、状態にもよるが、最も良い方法は炭火などで加熱した後にテコを使い湾曲させる方法が良いようだ。
これは木の組成の特性を利用するものだ。
含水率12〜18%のいわゆる乾燥材でも、まだまだ内部には水分が残っているもの。いわゆる結合水というものだ。
反りの最大のところを中心に万遍なく直火で加熱し、軟化させ、テコを利用して反りと反対側に曲げてやれば、大体において戻すことができるものだ。
コツはいくつかあるが、

  • 過度に加熱させることは良くない(焦げるほどには過熱させない)
     過ぎたるは、木の細胞組織の特性である可塑性を無くし、過度に硬化させてしまう。
  • かといってあまり火が弱いと良い結果は産まれない
  • 材の厚みにもよるが、高熱で焦げる寸前ほどまで万遍なく手早く加熱し、強制湾曲の操作も強い力で一気にやることが重要。
    だらだらとやっていては戻らない。
  • 戻した後、しばらくシーズニングの時間を置いてから加工に入る。

うちでは元々良質な材木を用いることが多いが、薄く製材したものなどでは乾燥後の在庫管理が悪かったりすると、思わぬ反張で苦労させられることもある。

因みに今回の板は、いわゆる突き尻(ツキジリ)と言われるものの再製材品。
「突き尻」はその目的からして、元々良質な材木であることが多く、我々にとっては廉価で良質なものを手にすることのできる裏技の1つだ。

こうした加熱での強制的な曲げ木も駆使することで、限られた資産を有効に使うということもボクたちの大切なテクニックと言えるだろう。
画像だが、セルフタイマーでの撮影とはいえ、絞り優先での設定であったため、5秒もの露光だったようだ。
炎の上にかろうじて水平方向に影のように見えるのが反った板。
いずれまた機会があればちゃんと撮影し直そう。 (-。-;)