工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

反張は炎の力で

炎扉の鏡板として5分厚のウォールナットを木取ったのだが、ややプロペラに反り返っていた。
そのままの状態で平面を出せば、歩留まりは悪くなり、所定の厚みは望めない。
こういう時はどうするかと言えば、状態にもよるが、最も良い方法は炭火などで加熱した後にテコを使い湾曲させる方法が良いようだ。
これは木の組成の特性を利用するものだ。
含水率12〜18%のいわゆる乾燥材でも、まだまだ内部には水分が残っているもの。いわゆる結合水というものだ。
反りの最大のところを中心に万遍なく直火で加熱し、軟化させ、テコを利用して反りと反対側に曲げてやれば、大体において戻すことができるものだ。
コツはいくつかあるが、

  • 過度に加熱させることは良くない(焦げるほどには過熱させない)
     過ぎたるは、木の細胞組織の特性である可塑性を無くし、過度に硬化させてしまう。
  • かといってあまり火が弱いと良い結果は産まれない
  • 材の厚みにもよるが、高熱で焦げる寸前ほどまで万遍なく手早く加熱し、強制湾曲の操作も強い力で一気にやることが重要。
    だらだらとやっていては戻らない。
  • 戻した後、しばらくシーズニングの時間を置いてから加工に入る。

うちでは元々良質な材木を用いることが多いが、薄く製材したものなどでは乾燥後の在庫管理が悪かったりすると、思わぬ反張で苦労させられることもある。

因みに今回の板は、いわゆる突き尻(ツキジリ)と言われるものの再製材品。
「突き尻」はその目的からして、元々良質な材木であることが多く、我々にとっては廉価で良質なものを手にすることのできる裏技の1つだ。

こうした加熱での強制的な曲げ木も駆使することで、限られた資産を有効に使うということもボクたちの大切なテクニックと言えるだろう。
画像だが、セルフタイマーでの撮影とはいえ、絞り優先での設定であったため、5秒もの露光だったようだ。
炎の上にかろうじて水平方向に影のように見えるのが反った板。
いずれまた機会があればちゃんと撮影し直そう。 (-。-;)

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