工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

アジャストカッター

カッター
画像は座卓脚部の加工途上のものと、これに用いたカッターブロック。
畳ズリと2本の脚の接合部。
今日はカッターについてのお話しを少し‥。
この接合部は幅90mm、深さ15mmで底を除き三方を欠き取る。
ここで用いるのは、アジャストカッター。
この場合21〜41mmまで、0.1mmステップで切削幅が変えられる、超硬チップのカッターブロックを選択し、31mmほどの切削幅に設定する。
アジャストカッター最大の切削幅41mmを大きく越える部位なので、あえてこのカッターを使わなければならない加工ではないのだが、うちの固定幅のカッターは15mmが最大。
したがってこのような大きな幅の場合においても41mmまでの一発切削が可能なアジャストカッターに依存する。
まずは両サイドで寸法合わせし、残るところをもう1回、トータル3回の切削操作で美しく平滑に切削できちゃう(このカッターには毛引刃が付いているので、数カ所、この痕跡が残るが、組み上げれば完全に隠れるので影響はない)
このアジャストカッターだが、うちでは以下の4組みを用意している。
・3〜5.5 mm
・6〜11 mm
・11〜21 mm
・21〜41 mm
片側に4枚のカッターチップ(カーバイドチップ)、および同数の毛引き刃が付く。
これが左右2枚あり、その間を0.1mm〜のスペーサー(間座)で幅を調整し、重ね合わせる。


超硬刃であるのでかなりの負荷にも耐え得る。
切削能力は高くとても高品質な加工ができるので、今では木工業界のスタンダードなカッターとして活用されている。
この種のカッターでは一部にはまだ自在カッターとか、Dado headカッターなどが使われているかもしれないが、その理由については判然としない。
Dado headカッターは、ハイス、あるいは超硬チップなどが普及する一時代前のものであるので一般的ではない。
ダイヤル式の自在カッターも、切削能力では問題が多いように思われる(切削肌が美しくない、切削における刃物の回転運動の機械的合理性からして無理がある)ので、現場作業は別としても工房内で大型の木工機械に装填して使うという選択にはならない。
したがってこうしたカッターでは、定寸幅のものをいくつか用意し、その間を埋めるものとして、このアジャストカッターを整備すれば万全だ。
うちの定寸のものは、6mm、15mmの2種。6mmはチップ枚数の多い、いわゆるノコカッターというものもある。
あるいは15mmのものでは毛引きがないクロスカット専用のものがある。
毛引きが邪魔な場合もあるからね。
あるいは試作などの場合、あえてカッターを用いず、横挽き(100Pほど)でアサリ幅単位の切削を数10回も切削を繰り返して所定の幅までもっていくということもあるが、あまりこれもお勧めできるものではないね(ノコを傷めるだろう)
なお、アジャストカッターも場合によっては径の大きなものを用意する。
一般には7″(≒178mm)だが、8″(≒203mm)のものがあればなお良いだろう。
研磨屋さんにお尋ねしたところ、現在の家具製造業界では自在カッターとか、Dado headカッターなどを使用しているところはほとんどないはず、ということだった。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 工房から車で5分ほどの所に研磨屋さんがあります。
    実はそこは以前勤めていた会社のお客さんでドイツ製の
    研磨機を導入しています。
    私は営業ではなかったので、研磨屋さんはその辺の事情を
    知りません。特に私から話すこともしていませんので。
    今はドイツメーカーの日本法人がメンテをしていると
    思われます。
    先日、yahooのオークションで定寸のチップカッターを
    2枚入手しました。
    まだ十分チップが残っていたので今、その研磨屋さんに
    研ぎに出しているところです。
    調整式のチップカッターも時々オークションで見かけますが
    やはり人気が高く、いつも競り負けてしまいます。

  • acanthogobiusさん、どうも。
    >ドイツ製の研磨機を導入
    良く分かりませんが、どうもこの業界では、made In Germany というのがむしろ一般的なようですね。
    ボクも、今度その背景を尋ねてみますね。
    >yahooのオークションで定寸のチップカッターを
    へぇ〜、そんなに良く出品されているのですか。
    ボクは遅れているなぁ。

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