工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

材木市況

このところ、材木屋の訪問が相次いでいる。
名刺を渡されても聴いたこともない業者で、またそのほとんどがアポも取らずのいきなりの訪問。
こちらも忙しくしていることもあり、相手が期待するほど良い対応ができないので困ることになる。
以前はこういったことはなかった。
見知らぬ業者が訪ねてくるようになった理由はいくつか考えられる。
昔は業界の名簿、あるいは職業別電話帳などを調べてアクセスするという手法だったろうが、これでは詳細な業態はあまり分からない。
比して、現在ではネット検索すればどこにどのような木工屋がいるか、たちどころにリストできる。
うちのようにWebサイトを設置していれば、どのような樹種で、何を制作しているのか、丸裸。
ネット上には至便な地図サイトもあり、ピンポイントで検索できるし、また車のナビでは電話番号入力で玄関先までガイドしてくれる。
あえて事前にアポを取って場所の案内を請う必要もないというわけだ。
またこのところの経済不況が木材業者を営業に走らせているということがあるのだろう。
ご用聞きという奴だ。
昔はだまって倉庫で整理していれば、客の方からトラック持ち込みで訪ねてきてくれた。
今はそうは行かない。ちょっとでも可能性があるならば、鼻も引っかけなかったうちのような零細木工所まで「工房さん、良い材があるのですが、支払いはいつでも‥‥‥」
「工房さん」はないだろう。固有名詞であるかのように一般名詞を勘違いしている人は少なくない。
それはともかくも、うちのような個人工房に売り込みに廻るのはさぞ大変だろうからと、機械を止めて話しを聞いてみることもある。
しかしその話しの時間の長さだけ、落胆の度合いも大きくなる。
時にはこちらから手近にあるミズメ樺、ミズナラ、本クルミ、あるいはウォールナットと、こんなのがあれば買うよ、と差し出してみることがあるが、途端に物静かになる。
今ではそのような品質のものは無理です、社長 !(その社長 ! というのだけは止めなさい)
本来は国産の広葉樹であるものが、今では北朝鮮国境など、極東ロシアあたりからの供給となっていて、そのほとんどは従来の国産のものと比肩できるものなど望むべくもない。
あらゆる事象は変転するというのがこの世の倣い。
しかし木材市況の変容というものはいささか尋常ではないようだ。
(疲労でぶっ倒れそうなので今日はここまで)

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