Appleという奇跡
Steave Jobs 死去を巡る世相から
スティーブ・ジョブズ死去をめぐる、この異様な“騒動”はいったいどういうことなのだろう。
それはまるでキリストが没した時の全世界からの哀しみと敬慕を集めたかのような様相を見せているではないか。
このBlogでもApple公式サイトで報じられた直後に訃報を上げたのだが、取り巻く周囲の勢いには気圧されそう。
米国大統領バラク・オバマ氏のステイツメントからはじまり、多くの著名人から追悼が寄せられ、世界の主要紙が最大級の扱いで訃報を伝え、それらは数日経過した今でも紙面を埋め尽くすといった風だ。
IT関連企業からも関係悪化が取りざたされているSamsung[1] 、GoogleなどもTopページで伝えていた。
また全世界に展開しているApple Store店頭には手に手に花とカードを携え追悼に訪れる人々が引きも切らず、ネット上には哀しみと敬慕の文字が膨大に集積している。
この光景だが、さすがにキリスト没には立ち会わなかったので類比できないが、JFKやジョン・レノンが凶弾で斃れたとき以来と言った感じだ。
いかに株式時価総額が最大の企業とはいえ、一民間企業の経営者の死去を扱うにしては、あまりに衡量を欠く騒動ではないか。
いやしかし、スティーブ亡き後の真の喪失感を覚えるのは、5年後、10年後のことになるような気がする。ボクたちはまだ彼という人物の存在の大きさを十分に自覚していないのかもしれない。
Apple傾斜への歩み
ボクがMacとの“交歓”がスタートしたのは、Windpws 95 が大ブレークしたその年のこと。
それまではコンピューターとは全く無縁の生活だった。
つまり最初にコンピューターとして認識したのがMacであり、その後も一貫して脇目もふらずMacとの交歓を続けてきている。
因みに音楽プレーヤー iPod を手にしたのも初代発売の翌年、2代目(4つボタンの奴)の2002年からという早い時期で、また携帯電話 iPhoneを手にしたのは、iPhone 3G、日本上陸のその日だった、という風。
もちろん携帯電話は所持していたものの、ほとんど外出時の緊急連絡のためのようなもので、稼働実績はまるで死蔵に近い状態だったが、iPhone入手後は大きく様変わりして必須のツールになってしまっていた。
こうしたことはAppleユーザーとしてはごくごくありふれた姿だろうと思う。
コンピューターにしろ、MP3プレーヤーにしろスマホにしろ、ほぼ同等のスペックを持ったマシンは他にもいくらでも探すことはできる。
しかし、禁断の林檎をかじってしまった快楽から逃れることはとても難しい所業に思え、やはり次もApple社のマシンに手が伸びてしまう。
問題はこの“禁断の林檎の味”ということになるわけだが、これこそがスティーブ・ジョブズ氏がまぶした秘薬だったということだ。
Macがはじめてうちにやってきたその翌新年の朝のこと、お屠蘇気分でOSの起動音、ジャ〜ンに続いて現れたのが「Happy NewYear ! 」のかわいらしいアイコンだったことは忘れもしない。
このようなOSの様々なところに埋め込まれた遊び心、そしてクールなOSと、スタイリッシュで視認性、操作性に優れたGUI(Graphical User Interface)は、MacのMacたる真髄だ。
コンピューターを身近なツールとして再定義したMac
冷たい駆体の物言わぬコンピューターという概念を覆すようなとても人間くさいマシン。
Macのデザインの良さについては誰しもが均しく語ることだが、それは駆体デザインを指すだけではない。
友人らのWindowsなどに触れることもあるが、あのモニタに映されるカクカクした文字の汚さといったら何なのだろう、といつも辟易としてしまう(Winの文字処理にはアンチエイリアス処理がされていないためのもの)。
文字の美しさなどは些末な領域のことかもしれないが、コンピューターと人間の関係を追求したMacに親しむことで、そのユーザーの世界を快適で美しいライフスタイルに染め上げていくという哲学を志向するのがAppleの経営理念といえるだろう。
そうした理念をマシン設計、製造現場に貫徹させるためのシステムが、基本ソフト、ハードの自社一環生産という独自のスタイルに見ることができるわけだが、自社で全てを抱え込むことのコスト計算上のデメリットに目を塞いでも、なおMacのMacたる洗練されたコンピューターを我々に届けるために決して譲ることのできない考え方だったわけだ。
カウンターカルチャーの魂
訃報が知らされ2日と半日が経過するが、多くの追悼の中にはスティーブ・ジョブズ氏の若い頃のエピソードとして、ヒッピーだったということが数多く取り上げられている。
ボクはそれについては詳しくないので触れることはできないのだが、ただスティーブ・ジョブズ、そしてAppleという社風には、このヒッピーという精神が背景に潜んでいるらしいことは明らかなようだ。
コンピューターエイジであるという前提に、実はアメリカ近代文化におけるカウンターカルチャーとしての気風と魂が潜んでいる、というところに、Appleの秘薬の謎が潜んでいるように思えてならない。
ロングスリーブの黒いTシャツにブルージーンズという風采は、世界大の企業Topとしてはいかにも異色だが、しかしそれがAppleであり、スティーブ・ジョブズなのだ。
こよなく愛したミュージシャンがボブ・ディランとビートルズ(なかでもジョン・レノンには心酔していたと言われる)ということになれば、いよいよ何も疑う余地が無い。
まさにアメリカが生んだ天才であり、70年代という時代が生んだ寵児だったというわけだ。
ボクはそうした時代に共に生き、彼のような類い希な才能と、魂のそばにいられたことに、あらためて深い感謝と、敬意を表さねばならないだろう。
ありがとうスティーブ 。
週末のYouTubeは彼が好きだったジョン・レノンの「Imagin」から。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=uC5AAqDrAmM&feature=relat[/youtube]
*参照
■ iPhone 4 とApple.incの戦略
■ Apple社Special Eventとスティーブ・ジョブズ氏
■ iPhoneという衝撃
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❖ 脚注
- SamsungとGoogleは予定していた新Android搭載スマートフォン発表イベントをジョブズ氏に敬意を表し延期(Samsung, Google Cancel Launch Event Out of Respect for Steve Jobs)するといった [↩]