ある相欠きのカタチ
画像は卓、脚部のズリ脚と貫の接合部。
このズリ脚、上部は柔らかな円弧状。断面は両角を大きな坊主面を取った逆台形。
ここに鎬面を持つなだらかな円弧状の貫がかぶさる。
これを相欠きで納めるわけだが、ズリ脚側は途中までなので、画像のような加工になる。
一般には相欠き加工は丸鋸傾斜盤でのカッター切削で簡単に終えることができるが、こうした場合はルーターなどによる少しばかり特異な切削能力が要求されてくる
なぜこのような加工が必要なのかは説明不要とは思うが、いくつかの理由がある。
いくつかの理由があるが、一言で言ってしまえば、“納まり”である。
例えば、上述のようにズリ脚側が台形をしているので、そのままでは一般的な相欠きでは納まらない。
逆に言えば、このような相欠きをすることによって、台形に留まらず、様々な面形状に対応してくれることになるわけで、それだけデザイン的にも自由になるということだ。
またこのように相欠き部分を露出させずに内部に封印させることで、経年変化による収縮がもたらす結合度の劣化、視覚的劣化を防ぐことができる。
あるいは全般的に接合度が強化されるという側面も評価できるだろう。
ついでなのでちょっとコツを付け加えれば、ルーター作業が伴うことは触れたとおりだが、このルータービットの径をいくつにするかはよく考えてから臨んだ方が良いだろう。
例えば、12φのビットを使えば、貫の下部の両角の坊主面は6mmで回すことで、ピタリと“納まる”、という風にだね。
ついでにもう1つ。
作業工程だが、最初にルーター加工するのは得策では無い。
あらかじめ傾斜盤で基本的な相欠き切削をやり終え、その後に、この切削されたライン延長上にルーターのテンプレートを合わせることで、誤差の無い切削作業ができる、というわけだね。
作業工程というものは、個々、それぞれのケースにおいて、もっとも無理の無い、無駄の無い、合理的なプロセスを踏まないと良い加工はできない。
ところでこのような相欠きによる組み手だが、ボクは椅子の座と、脚の結合などに用いることがある。
それを教えてくれたのは、S・マルーフの手法だった。
この場合は、今回紹介した方法とは若干異なるが、基本的な考え方は同じだ。