工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ミュージックスタンド 更新と課題


ミュージックスタンド、いわゆる譜面台。
既に1つのモデルが作られていたが、これを更新した。

基本的なデザインに大きな違いは無い。
以前、メジャーなオーケストラの常任指揮者をしているN氏宅の食卓セットなどを制作させていただいたのだったが、この指揮者にミュージックスタンドの使い勝手などのアドバイスをもらったところ、いくつかの問題を指摘された。

このNさんからの指摘というわけではなく、実はそのご夫人からのものだった。
彼女はバイオリン奏者。

彼女からの指摘は、曲の練習をする場合、譜面に書き込みをすることも多く、このデザインでは背面が格子状であるために、それができない。

さらには、ペンホルダーが欲しい。
もっと言えば、それは弓を置くトレーぐらいの大きさであればなお良い。
とのこと。

なるほど、いずれの指摘も的を射るもので、
そうしたバージョンを作ることが必要だと感じさせられていた。

元のデザインは、演奏会用としては恐らくは相応のクォリティーを持ったものと自負しているので、今後も継続して作っていくことになると思うが、読者からの批評的な視点でのコメントをいただけるとうれしい。(右画像が元のデザイン)

こうした譜面台、一般にはもちろんスチール製がほとんど。
木製のものは少なく、しかも市場には良いものは少ない(この評価は単にボクの見立てに過ぎないが)。

→ Google画像検索(こちら

したがって、木製で高い品質のものがあれば十分に市場からの評価を受け入れられるだろう。
ただジャンルからすればさほどの需要があるわけでもないので、商いとして考えると勘違いしちゃうよ。

こういうものは、どうしても作りたい !! 俺ならこんなデザインのすばらしいものを作ってやる ! というパトスの方が重要。

そんなわけで、彼のバイオリニストのアドバイスに応え、基本的なデザインは変えること無くいくつかの新機能を付加させ、更新することになった。

正面の大部分をフラットな板面とし(今回はフルフラットにはしなかった)、下にペントレーを兼ねた、弓置きのトレーを付加させた。(詳細は画像下)
背部は格子状のデザインを残した(こういうのを“拘泥”という・・苦笑)

ミュージックスタンドは過度の重量は厳禁、いかに軽快に設計するかがキモだが、しかし一方、堅牢性において問題が出てしまうようでは困る。

このミュージックスタンドの場合、上部の琴型のヘッドもさることながら、馬蹄形のズリ脚に、傾斜した支柱というのがチャーミングのポイント。

ここをいかに重量バランスを解決しながらデザインするかが鍵で、楽しい。

支柱を傾斜させ、かつテーパーに絞り上げ、出口は黒(ローズウッド)で締める。
傾斜させるためには馬蹄型へのホゾ指しもそれなりの困難が強いられるが、その加工工程を楽めるようになれば、木工職人という仕事も捨てたものでは無い。

年が明けて、落ち着いた頃にでも、このバイオリニストに厳しいチェックをしてもらおうかと思っている。

今後はさらなる軽量化、重量バランスの適正化などに、チャレンジしていこうと考えている。

まずはフルフラットへ向けての課題をクリアしていこうか。

でも、こうしたジャンルの創作というのは、制作者としてもとても楽しいもので、さらにまったく新たなデザインも考えてみたいと思う。

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 竪琴の形をイメージしたデザインでしょうか。
    演奏会に足を運ぶこともあまり無い私ですが、どうでしょう?
    これを演奏会で使うと、奏者よりも譜面台の方が目立ってしまうかも
    しれませんね。
    客席からは格子が全部見えてしまうことになるでしょうし。
    バイオリン奏者の彼女が言われるように、自宅での練習用には
    すばらしいと思います。

    • >奏者よりも譜面台の方が目立ってしまうかも

      良くピクチャーフレーム(額縁)を作ることがありますが、同じようなことを指摘されることは少なくないです。
      何事もほどほどが良いようで ‥‥

  • 形が良いですね。
    上に格子が見えるのはどうでしょう?
    つるっとした感じに見えますが楽譜を置くとき、
    押さえの棒を準備する前に、滑ったりしないでしょうか。
    譜面台上部の角度は変えられますか?
    座って弾く時と立って弾く時では微妙に角度が違うかもしれません。
    こういうものは たぶん注文生産ですね。

    唯一譜面台を使わない奏者、ピアニスト。。。からでした

    • >上に格子が見えるのは
      ちょっと違和感がありますか?

      >滑ったり
      下はベースがありますからね。ダイジョウブ

      >譜面台上部の角度は変えられますか?
      もちろんです。
      指揮者などは、ほぼ水平に置きますからね

      >唯一譜面台を使わない奏者
      kokoniさん、一瞬、ピアノコンチェルト、全て暗譜かと思いました
      確かにピアノ弾きは無用ですね。

      しかし、いろいろとアドバイスをください !
      (ついでに‥‥ 売り込んでください ! )

  • 初めて書き込みさせて頂きます。。。
    譜面留がスチール一枚板だと、しばしば譜面を切り裂いてしまって、涙、なものですが、木製ならそんなこともなく具合が良さそうですね。
    譜面留を譜面置きと平行にして仕舞った時、オスメスで同面に格納出来ると美しいと思うのですが、やり過ぎ??譜面留を更に濃色の堅木なんかにしてアクセントにしつつ。

    • kurimotomatoさん、ようこそ !

      演奏家の方とお見受けします。

      >譜面留を譜面置きと平行にして仕舞った時、オスメスで同面に格納出来ると美しい
      なるほど、Good Idea ! ですね。

      木製ということで、この機能を可能ならしめる譜面置きの巾(厚み)と、軽量化、
      のバランスが難しくなりますが、良いアイディアです。

      ありがとうございます。

  • 自ブログに載せてみます。指揮者さんもリンクしているので。
    指揮と管などでは、載せる楽譜の厚みとか重さも違うので、
    やはり実際に使っている人のアドバイスがいいですね。

  • 初めてまして。
    ネット検索してたどり着きました。 
    とても素敵な譜面台ですね。当方趣味でヴァイオリンを弾いてます。
    初代のタイプ惹かれました。ヴァイオリニストのご指摘ごもっともですが、デザイン性が失われてしまいます。私も後ろが開いた譜面台を使用していますが、厚めのアクリル板を置くことでカバーしています。
    更なる発展楽しみにしています。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.