工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

「縦軸面取盤」導入は進むか(講習会を終えて)

はじめに
去る8日、阪南にある「工房夏安居」において、「縦軸面取盤」の講習会が開催され講師として参加させていただいた。

主催者・岩崎さんからは近郊の関心を持たれそうな知人木工家へ、そしてこのBlogでの告知により、予想を超える関心を寄せていただき、業種を越えて、また広範な地域から有為な木工家、木工職人、オルガン制作者などの参加を得て、催すことができた。
まずは参加者の方々へ、そして工房を開放していただき、準備に奔走いただいた主催者、工房夏安居・岩崎さんに感謝とお礼を申し述べておきたい。

Shaper切削能力への驚き
既に記述したこともあるので一部繰り返しになるが、この機械への関心というものは国内の木工房ではあまりにも疎んじられているという現実を考えた時、時間的制約、慣れない工房での講習という制約、そして適任とも思えない不慣れな講師の問題はあったものの、参加者自らの実践を含むミニワークショップから受けた少なからぬ切削精度の驚きを見れば、まずはその初期的な目的は果たせたのではないかと感じている。

その切削精度の高さ、そして決して言われるほどに危険なものではないこと、さらに異口同音に語られた、その切削運行の軽さ、などはテキストでは感じ取ることのできない、実践的講習ならではの得難い体験であったようだ。

強力助っ人
これはボクの準備を越えて、木材加工における機械依存の主たる機種として位置づけ、実践しているオルガン制作者のY氏の参加に依るところが大きい。

ドイツより取り寄せ使いこなしている安全なフェンス、集塵アダプタなどの持ち込み、貴重な文献、資料の開示、そして有益なアドバイスにより、この機械の性能と特徴は、より確かなものとして参加者に届いたのではないかと思っている。
あらためてこの講習のためにはるか本州の端っこからやってきていただいたY氏には深い感謝を記しておきたい。

この講習会は言うまでもなくプロの中級者以上の人たちを対象としたものであるので、その成果とは、やはり参加者がこの機械導入に踏み切り、そして制作精度を高め、生産性を高め、自身の制作フィールドを豊かにしたときに試されるということになるだろう。


仕口機械加工
また付随的に試みた、いくつかの仕口の機械加工の開示は、先に記述したように、やはり参加者のほとんどの人にとってユニークなものであったようで、これも意味のあったことと思われる。

直接的には框組のスキルではあるが、椅子などを含めあらゆる木工加工において有用な仕口であるので、大いにそれぞれの現場で活用され、デザインの自由度を高め、また制作品質を高める一助になれば幸いである。
なお、これらは様々な制約から十分な開示はできなかったので、不明なことがあればあらためてメール、お電話などで承りたいと思うので遠慮無くいただきたい。

講習会の今後の展望
ところで、こうしたプロ向けの講習会は地域の木工関連団体、あるいは木工機械、木工刃物販売サイドで行われることも少なくないと思われるが、昨今これらはご多分に漏れず不況業種であり、こうした講習企画については今後の展望は決して明るくないというのが現状ではないだろうか。

一方木工家自身の企画と実践ということでは、経費負担を含め様々な制約がある一方、より実践に即した講習内容になるという優位な面もあると思われる。

今後も様々な地域で、様々な内容でのこうしたスキルアップの場の機会を設けられるというのが望ましい姿であろうと思うので、木工家の方々の積極的な協力と助言を得て、新たな企画実施に向けて展望を拓けるように考えていかねばならないというのが、今回の実施を踏まえての新たな課題であろうか。

先に開催された名古屋での「木工家のネットワーク」(木工家ウィーク)も、そうした機能(権能)を包含する(Linkする?)ようなものでありたいと個人的には考えている。

結び
この大阪南端の山中での小さな小さな講習会実施ではあったが、これまでほとんど繋がることの無かった有為ある若手木工家、そして強力なスキルを有する木工家の参加を前にして、講師という立場を忘れて木工家のその未来への力というものを感じ取ることができ、またその責任の重さというものを教えられたありがたい1日であった。(参加者の過半が初対面だった)

同時にまたエントリメンバーのアプローチを考えたとき、このBlog読者が予想を超えて既に大きな拡がりと、インパクトを与えつつあることに運営者自身が驚かされ、またその責任の重さをあらためて感じさせられている。

参加された皆さまにはまた再びお会いする時があることを願い、あらためて主催者、工房夏安居・岩崎さん、そしてエントリしていただいた方々に感謝とお礼を記しておきたい。

下画像はドイツ製の安全対策アイディア満載のフェンスの解説シーン

Shaper_fence

hr

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  • はじめてコメント致します。
    先日はお疲れさまでした。移動や今回のための準備等、大変だったのではと思うのですが、講習会と懇話会、その後の飲み会も含め非常に有意義で楽しい時間でした。個人的には面取盤導入の具体的なイメージができ良かったです。ありがとうございました。

  • こんばんは。
    講習会、盛況のうちに終了したようですね。
    近隣であれば私も是非参加したかったです。
    小さな木工所で内向きで作業してると自分の実力が
    どの程度なのか判らなくて不安でもあるんです。
    もっと簡便で安全な方法があるんじゃないかとか・・・
    そういう時木工家の方たちの横のつながりが
    羨ましく思えたりします。

  • 古谷さん、遠方からお疲れさまでした。
    >面取盤導入の具体的なイメージができ良かった
    古谷さんの仕事内容において、この機械の活用はとても有益と思いますね。
    今回は必ずしも十分な内容でなかったかも知れませんが、不明なことがありましたらお尋ねください。
    コメント、初めてでしたか、どうぞこれからもよろしく。
    (宴席では遅くまで引き留めてごめんなさいね)
    ユマニテさん、次回機会があれば、講師として準備してもらいます(笑)
    >小さな木工所で内向きで作業してると自分の実力がどの程度なのか判らなくて不安でもある
    なるほど、そうしたこともあるかもしれませんが、それ以上に自身のスキルに確信を持ち、周囲の職人さんとの自然な交流ができれば良いのではないでしょうか。
    ご自身はBlogを運営し、こうしてコメントを寄せる柔軟で自由な精神があれば心配することないでしょう。
    むしろ意外とお若い「木工家」と言われる方々の方が、あなたの木工所の職人さんの環境を羨ましく思えたりするのかも。

  • こちらではご無沙汰しております。
    岩崎さんからもご案内をいただき、ぜひ参加したいと思っておりました。しかし年内にメインの仕事を休むことは避けたく、見送らせていただいた次第です。Yさんが本州西端から参加されたとのこと、櫛型安全フェンスや安全刃物形状の話なども、加わってさらに充実した講習になったことと思います。
    何時か当方も導入したいと考えています。その際には、ご指導よろしくお願いします。

  • 宮本さん、週末は教室運営で忙しいのは良く判ります。
    欧米スタイルでの家具制作環境を取り入れられていらっしゃることを考えますと、恐らくはこの機械はなじみ深いものの1つでしょうね。
    ぜひ率先して紹介してください。
    Yさんからは宮本さんとの交流のお話しもありましたよ。

  • 乙と言うより 目から鱗の丙(へ〜イ)でした。
    機械だよりの私として大変勉強になり、強い助っ人を得る思いです。夜の懇親会は、乙(御ッ)に飲まさしていただきました。大変有意義な時でした。有難うございます。感謝!!!!

  • 乙さん、エクスクラメーション・マーク(ビックリマークとも)が4つですか。すごいですな。
    美味い酒は、良い仕事へ向けての新しいスキルと、それをネタに語る友、未来ある若者がいれば、なおよろしいようで‥‥

  • 先日はとても有意義な時間をありがとうございました。
    時間的制約のある中、主催者側の事前準備と段取りの良さに趣旨以外の多くもまた学ぶ機会となりました。
    また多くの先達との出会いの場でもありましたし、とても貴重な時間となりました。
    ありがとうございました。
    また参加できるのを楽しみにしています♪

  • okadaさん、遠方からご苦労様でした。
    決して十分な内容ではありませんでしたが、スキルアップのきっかけになってくれれば嬉しいです。
    また何か交流できることがあれば良いと考えています。
    何かと大変でしょうが、お仕事がんばってくださいね。

  • コメント失礼します。面取り盤の講習があれば参加したいのですが直近でそのようなワークショップはございますでしょうか?

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