工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

枕木という材

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8本ばかり枕木を求めました。
これでごっつい家具を作ろうか、などという算段では無く、工房周囲に鉄道を巡らそうという構想。
いやいや、そんなわけはない。

まずは近隣のホームセンターなどで在庫状況を確認したのですが、後述するように、杉材の枕木はあるものの、本来の堅木の中古枕木を扱っているところは実に少ないのでした。

この品薄状況は、どうも園芸などに引っ張りだこで、中古の枕木を主体として需要が逼迫しているからだそうです。

かくいう私も、例に漏れず工房周囲の外構に活用しようという魂胆。
先月、工房南側にパーゴラを建造したのですが、これに付随させる資材というわけです。
主目的は別にあるのですが、それは首尾良く完成したところで触れることにしましょう。

昨今の枕木事情

さて、枕木ですが、ご存じの通り、昨今、もっぱら鉄道に使われるものはコンクリート製です。
ただ、補修とか、引き込み線には、まだまだ木製の枕木が用いられているようで、そうした市場も健在というわけです。

園芸や、建築の外構などに活用されているものの多くは中古の枕木で、これは単に価格的な安さだけでは無く、その古びた風合いがむしろ外構などには向いているということなのでしょう。

冒頭触れたように、現在、中古の枕木は店頭から消えつつあります。
これに代わり、もっぱら杉材に防腐処理されたものが広く一般に出回っているようです。

しかし、杉材そのものは、元々耐腐朽性には弱い木材ですので、いかに防腐処理されているとは言っても、置かれる厳しい環境下での枕木に使われるだなんて、ちょっと信じがたいです。
無論、本来の鉄道枕木ではなく、建築外構、園芸での利用であったとしても、です。

枕木の耐久性を高める防腐剤について

中古の枕木が店頭から消えつつある理由は明確です。
コンクリート製が専らになってることでの枯渇状況がまずあります。
それに加え、防腐剤に使われている注入液剤、クレオソート油(要するにコールタール)は発がん性があるとのことで、公的には使用できない事になっているためです(2004年に改正された家庭用品規制法)。

クレオソート油による防腐処理はとても効果が高く、無処理のものに比し、2倍から8倍という耐腐朽性があるそうです。

しかし人体に悪影響を及ぼすようでは使用に耐えられません。

最近は、これに代わり、「環境配慮クレオソート」という防腐処理がされたものもあるようです。
ただ専門的な業者に尋ねたところ、気温が高くなれば、やはりクレオソート特有の匂いも発散するので、経年変化で薬剤が抜けた中古とさほど変わらないのでは、とのお話しもいただいています。

私が求めたのは、〈リグノケア LC-350〉という加圧注入用木材防腐・防蟻剤を注入した、新品のケンパス材。

確かに現物を確認したところ、匂いは皆無。
無害と言うことで、安心して使うことができます。

新品のケンパス材は本来ピンクがかった白色なのですが、処理材は暗緑色に染まり、落ち着いた感じで良い雰囲気ですね。

リグノケアLC-350について

一般には枕木の材種は国内では栗材を筆頭に、ブナ、松、ヒバ、ヒノキなどが用いられていたものですが、安定供給が困難な中、南洋材の柿科、豆科などの材種が用いられるようになっています。

これらは極めて硬質で堅牢な材種ですが、これらに共通した特徴でもある耐腐食性の強さで選ばれているというわけです。

ケンパス材

この南洋材の枕木として代表的なケンパスという材種が、今回買い求めた材になります。

私も取り扱うのは初めての材ですが、重たいです。
気乾比重は0.7〜0.9という数値ですが、さらにここに防腐剤が注入されているためか、どう判断しても、比重1より重い感じがします。
トラックからはドライバーと二人で荷下ろししたのですが、ずっしりと重く、作業場の上がり框の段差を越えるのもぐらつくほどのものです。

サイズは200 × 140 × 2,100 という枕木の標準サイズ。
防腐剤注入による加重もあり、重量は60〜80Kgほどにもなるようです。

冒頭書いたように、あるモノを作るに当たり、やや細かな細工が必要となってくるわけですが、その重さゆえ昇降盤などで加工はできませんので、手加工、あるいはハンドルーター駆使による加工になります。

この重量物に潰されぬよう、上腕に力を溜め、加工、取付に挑んでいきましょう。

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  • ケンパスは重く、木部は直ぐにバラケマス。バリバリ粘りなく木工刃物いたむ。防腐無しは、一見つかえそうな色気あり。バット、「枕木しかつかえない木」と、専門メーカー小林三之助商店白鳥工場断。最近は、栗などジョイント土台にしてしまい、枕木材が美味しくない。15年前の価格は、上栗・ロシア楢で@5,000- 並@ 4,000-/本 うんちン高い。オニグルミ・朴・楓は安め。買うときは工場でBigギャクリッパから出てきたときに引き抜く強者は、防腐剤ジャブ付け前に引き取り。100本ならば割安感でました。小物・試作、造作仕事などにべんりなサイズ。

    ブナ科の堅木をつかうのは、今でも鉄橋・ポイントです。衝撃・震動吸収。帝国犬釘を探しにいって国鉄保線区で鉄道のジョイントを調べたことがあり。鉄道網は、線路系、信号系、電力系、車両連結とみなジョイントシステムでした。そうだ、格安の鉄道共済売店・職員住宅など、更正施設・福祉が厚いのでやめる人がすくないようです。むかし、商材・生活用品・燃料など鉄道輸送。割りに犯罪が少ないのでは?あの世界は、「鉄路一家」で団結。家族パスあり、賢パスでした。

    • ケンパス材の知見、鉄道会社の特異な企業風土にいたるまで解説いただき、感謝であります。

      家具材対象としての評価ですが、ケンパスの物理的特性から、デッキ用家具には適性があるかもしれません(加工が容易でシンプルな脚物など)。
      帯ノコもOK(半ステライト刃)、手鋸も何とか掛かります。
      硬いですが、珪素、カナスジが入っているワケでも無いので、加工は可能です。

      中古枕木、以前は@1,000ほどで入手できたそうですが、今回の新品ケンパス、非クレオソート防腐処理材で@6,000(並)でした。

      この「国鉄産業株式会社」なるものも、恐らくは「鉄道一家」ででしょうね。

  • 確かに、はじめは使えそうと思いました。
    そのうち敵性がわかると思いますョ。
    結果レポがまたれます。ダンダン。

    • 少し余分に買いましたので、デッキ用テーブルセットでも試作し、適性検証でもしてみましょうかね。

      豆科の材はとにかく硬いので、加工難度はサイコー。
      余りに重く、椅子には向きませんしね。

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