工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

鉋掛けという工程について(番外編・鉋台の口埋)

口埋めに関してですが、前回の記事、Top画像に上げたのが、私の鉋の実態というわけで、おそれながら、恥部を曝してしまっていたところですが、
下端のみの画像で、分かりにくいとの問い合わせもあり、恥晒しの序でに、表側も貼り付けてみるることにしました。

160224a

位置関係は前回Top画像のモノと同一に対応しています。
上、左から順に

  • 寸二 小鉋 口埋:赤樫、鉋店による施工
  • 寸八 平鉋 口埋:赤樫、鉋店による施工、木ねじ、スライド式
  • 寸八 平鉋 口埋:赤樫(台も赤樫)、鉋店による施工、木ねじ、スライド式
  • 寸四 中長台 口埋:白樫、自身の施工

160224b

  • 反台 口埋:赤樫、鉋店による施工
  • 四方反 口埋:白樫、自身の施工、木ねじ、スライド式
  • 反台 口埋:赤樫、鉋店による施工
  • 反台 口埋:赤樫、鉋店による施工
  • 四方反 口埋:ロースウッド、自身の施工
  • 四方反 口埋:赤樫、鉋店による施工
  • 四方反 極小 口埋:白樫、自身の施工
  • 南京鉋 口埋:真鍮 自身の施工
  • 南京鉋 口埋:赤樫 鉋店による施工
  • 南京鉋 口埋:真鍮 自身の施工
  • 南京鉋(二枚刃):口埋:ローズウッド 自身の施工

私は道具への拘りは、さほど強いものがあるわけではありません。
ご覧のように、そんな性格も反映し、人目に耐えられるほどの状態では無いというのが正直なところです。

ただ、作業効率性を考え、いかに良いフィーリングで良い鉋屑が出せるかへの追求は、熟練職人としての自覚は強くあります。

そうした家具職人としての鉋の取り扱いにおいて、いかに口埋が必須の仕込み方法であるのかについてご理解いただくため、このような事例の恥晒しをしているとお考えいただければありがたいです。

鉋一般について論ずるのは、今回のテーマではありませんが、少し余談を。
時折、顧客から、親族が大工だった頃の道具を託される、などということがあります。
現在とは違い、トリマーなど無い時代ですので、様々な面取り鉋があったりで、目を細めることになります。
ただ残念ですが、こうしたものはコレクターや博物館では有用であっても、私たちのような現場にはお荷物でしかありません。

他方、平鉋ですが、状態が良ければ補修して使いたいと思うのですが、残念ですが、多くの場合、刃の状態が望ましくないケースが多いです。
ベタ裏になってしまっているのがほとんどなんですね。

つまり、裏を押すことなく、裏出ししてしまっていることが意外と多い。

鉋イラスト

私たちは常に、糸裏を維持すべく、裏の管理(裏押し)を意識するのですが、大工という現場作業では、そうした煩雑な工程に時間を割くのはなかなか難しいのが実態ということもあり、このような現状があるのかもしれません。

今では様々な替え刃の鉋も広く市場に展開しているようで、真っ当な鉋文化の継承者は、私たち木工屋に託されていると言わねばならないのかも知れませんね。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 口埋め 業者の出鱈目 呆れネット
    仕事を知らないで形だけ造ろう
    使う前に入れズ、人に頼むな
    一目でわかる下手仕事
    青山さんの出番
    続けないと
    鉋の命運
    危なし
    愚悪

    • ABEさん、このコメントは、私のTwitterの呟きへの批評コメントのようですね。
      (本Blog読者は何が何やらチンプンカンプン 笑)

      「鉋 口埋」でググって見た結果、Topにヒットした画像が、“おかしろい”手法であったのを取り上げたもの。

      ちょっと見、蟻で嵌め込んであるので、私の鉋の口埋めと同様、上から通したものかと考えたのですが、どうも、さにあらず、樫材の柾目を下端、刃口に薄く貼り付けたもののようでした(なぜ台形に嵌めたのかは不明←この形状から、上から蟻で通したものと見間違えた)。

      もちろん、これでも拡がった刃口を再生するという有用性はあります。

      ただしかし、鉋の下端同様、樫材の板面(木口ではなく)ですので、摩耗度は他の部位と変わらないわけです。
      他方、口埋めに木口をあえてもってくるというところに、耐摩耗性への強い意志があるわけです。
      (加え、スライド式の場合、この木口は何度でも再生が可能であり、鉋そのものの耐久性ははるかに高まります)

      もちろん、件の方式も、拡がった口を再生するという意味はあります。
      したがって、個人の責任としておやりになることですので、何ら他者が口を挟むべき対象では無いかも知れません。

      ただ、私が取り上げた画像の場合、この口埋めを、プロ職人がご商売として広くネット上で請けていらっしゃることで、その「意味」はいささか変容をきたすのでは無いかと考え、あえてTwitterポストとなった次第でした。
      (木口方式を含め、複数の選択肢として、このような方式を提示するのではなく、どうも、これが唯一の方式であるようなのです)


      余談ですが、この口埋めへのコメントとして「ワンポイントのおしゃれなカンナ」とキャッチーな言葉で訴求していらっしゃり、「口埋」の意味を何やら、勘違いされていらっしゃるとすれば、大変残念なことと言わねばなりません。

      もし、青山さんがご覧になれば、悲嘆に暮れ、詫びの代弁で苦しまれることでしょうね。

      ABEさんのご指摘の通り、こうした口埋めなどという加工は、業者に託するのでは無く、ぜひご自身で納得のいく品質で行うのが基本でしょう。

      小っちゃな樫材の端材(私は朽ちてしまったカンナの台を再利用しています)、ノコ、ノミ、が用意でき、一定の木工経験があれば、どなたでもできる程度のものです。
      (私の場合、訓練校在校時、教官の小鉋を参照に、見よう見まねで作ったものです)

      正直申しまして、この種のネガティブな問題を俎上にするのは苦手です(特にネット上という特異な環境下にあって)。
      いかに正論であっても、ネット特有のコミュ欠落傾向の環境下で、広く問題意識を共有することは難しいと感じることが屡々ありますのでね。

      しかしABEさんのご指摘は、Blog管理運営者として、しかと受けるべきと考え、鈍い筆を走らせたところです。

      業界も多様であるのは当然であり、これを顧客が取捨選択することで、悪しき業者は淘汰される、という当たり前の論理さえ生きていさえすれば、大丈夫でしょう。
      そこには、当然ですが、批評精神が横溢していなければあきませんね。

  • 出鱈目を野放しにする総て責任は総て先人にあり
    無頼、狡猾、サッカク、出鱈目は御用
    見逃せば、ばい菌蔓延の三界では
    辻立ちしても説き染めよと
    見て診ないふりは竹刀
    報いなくもプロは
    手を下す。

    手を尽くさないのは以下様
    プロフェショナルでは
    ないない。
    鉋のみ能古霧

    • 木工に限らずのことだろうとは思いますが、
      正統な事柄が時代とともに疎んじられ、やがては安易な手法に取って代わられ、
      そうした正統な実態が失われてしまえば、用語でさえ安易な現代用語に取って代わられ、
      本来の意味内容を持たぬ、薄っぺらなものとして伝播され、
      それは必然的に技法体系総体までもが価値減退へと向かうしか無くなりますね。

      たぶん、こうしたことは近代百数十年の過程で急速に起きてしまったことであり、
      人は前近代的産業であれば、諸々、退場させられてしまうのも必然というのでしょう。

      プロ意識に関してですが、やはりこれも現代社会という時代性の中にあって、
      浮薄なものになりがちであると言えるのかも知れません。
      またこれは、日本社会固有の問題にも目を向ける必要があるように思います。

      伝統的職域の職業的プロを社会は疎んじる。
      したがってプロもそれに相応し、自らを平気で貶める。
      チャライものですよ。

      つまり、双方が、劣化方向へ向け、補完し合っているという醜い姿ですね。

      とりわけ、インターネット社会の普及が、あらたな側面を準備していますので、
      より一層、こうしたことは促進されるのでしょう。
      (こうした危機的事態は一般にはあまり見えず、むしろ、情報の安易な拡散による享受の方に力点がおかれ
      評価されるということになり、ますます見えにくくなる側面もあるでしょうね)

      私もプロの端くれではありますが、双方に脚を掛け、崩れかかるバランスを必死になって護ろうとあがいているだけなのかもしれません(たぶん、楽しんでもいるのですがね)。

  • へたくそ平気でまかり
    見習い恥じとはしらず
    ネット公開人目憚らず
    クラフト気分怪我繁盛
    無知未熟低劣きわまり
    幼稚不出来お釈迦屑を
    作品と宣うなかれ青樫
    始末せねば阿梨嵐峠越
    しばし休んでから片付
    コロリンドン掃除痛ス
    端くれがっっばれ
    アキレス錨の
    青年ヨリ
    黄楊

  • 往復ビンタをくらっていない世代に
    元禄髪型を教えるひともなし
    バット「もみ上げ」現役
    もみ上げ天秤なんて
    蕎麦屋にありそう
    鬢太は前板面横
    知らず解らず
    珍プン患憤
    目立ち隊
    異邦人
    腕梨

    • ABEさん、またこんなところに〜、
      読者、何が何やら、チンプンカンプン。

      私のTwitterへのコメントなんですよ。☟

      “ビンタ“、1つや2つくらったことは誰しもあると思うけれど、“鬢”は知っていても(書けなくとも)、鬢太って書かれるともう分からない。
      建築、木工において、ある種、粋な仕口の1つ。

      私の親方は横浜クラシック洋家具の出ですが、鬢太なんて用語が頻繁に口から出ていて、私にとってはありふれた符牒の1つ。

      学校などでは、何というのか?
      「包み内枘」とか?

      え〜ぃ、めんどい。やっぱり《鬢太》がク〜〜ル。

  • 痛みは消えずとも間酔
    快復祈願酒とあり
    慰謝知らず
    目出度し
    四股踏
    又筋
    UP

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.