工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

治具についての序章

治具

三寒四温とは良く言ったものだね。今朝は当地でも結氷。でもさすがにそこは静岡。日中には1枚、1枚と着衣を脱いでいかないと作業では汗をかく。
などとTシャツで仕事してたら、な、何と雪がっ〜、降ってきました。

このところ木工話題を記述していない。そうです、遊んでました。(←半分本当)
いろいろと工場周りを整理していて、昨日はたまりたまった治具(ジグ)を整理。
工場の壁の1面には治具が所狭しとぶら下がっている。
整理は不要になった治具の廃番化、整理されていなかった治具のまとめ、などと云ったところ。

治具、型板は家具製作には欠かせない重要なもの。これを用いることで、より製作加工の精度が高まり、また生産性も向上する。
修行した松本では必ずしもこうした型板を活用した製作スタイルを取っていなかったが、その後洋家具を得意とする親方の下で1年ほど修行させていただいた過程でこの治具づくりの大切さを教えられた。

過去、このBlogではルーター(ヘビーデューティー)の活用について何度か記述してきたが、このことも種を明かせば治具の大切さとともにこの親方から伝授されたものだった。(親方 !、感謝していますよ。← 年齢は丁度一回り違う人だがMac使い、なので見てくれるかしらん)

このように木工技法もかなり地域性、あるいは製作内容(ジャンル)によっての差異を見ることが出来るように思う。

良く「職人は旅をしろ」、と云われる。つまり1個所に留まらず、多くの職場を体験しろ、ということだが、これは一理ある話だろうと考える。
様々な職場で様々な技法を学び、これを自家薬籠中とすることで、技法の自由性を獲得し、自身の製作スタイルに適合した手法(機械システム、道具システムなどを含む)、あるいは製作対象に適合した手法を選択することが可能となる。

これは単に加工プロセスの問題に留まらない。
製作する家具のデザインへも影響される問題と言えるだろう。
つまり備わった技法の豊かさが、デザインの自由さを与えてくれる1つの決して小さくない要素となってくるのだ。
頑なな考え方ではデザインの拡がりは生まれない。
木工というある種の鈍くさい工藝ではデザインを決定づける要素の1つは明らかに技法の蓄積という制約から免れないからだ。

数日前、かつてある職場を紹介・斡旋した若い女性木工職人からハガキが舞い込んだ。
パートナーとの「世界は2人だけのもの」と云った幸せそうな2ショットの写真に加えて「入籍しました…」とあったのには驚いて腰をぬかしそうになったのだったが、続いて「最近は、どんな治具をつくれば良いのかを考えるのが楽しいです」と近況が添えてあった。
この女性職人さん、芸術系の大学を修め、その後職業訓練校へと進んだのだが、ちゃんと木工修行の王道を歩んでいるな、とまぶしく感じさせられたのだった。

画像Topは整理中の治具。
画像下は工場裏の大きな椿の樹からもぎ取って、砥部焼の花器に投げ入れたもの。
この時季にあっては暖色の華やかな花なので好きです。

椿

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  • はじめまして、ナナと申します。
    サイトを拝見していて、悠さんの優雅な作品に魅了されました!高級感あふれる家具の数々に、思わずため息です。
    広い部屋に引っ越したら、ワインバーキャビネットが欲しいな〜と思いました。部屋に置いてあったら、素敵な存在感を発揮してくれるでしょうね。
    こちらのサイトを、ブログで紹介させていただきました。
    http://blog.odn.ne.jp/lifestyle/bizmt/page/2006/03/post_235.html
    また、遊びに参りますね。

  • ナナさん BlogからこのようなLinkをいただくのはボクにとってはめずらしいことでもありますが、まずはお礼申し上げたいと思います。
    どのようなルートで探されたのかは興味のあるところですが、具体的な作品名を上げていらっしゃるところを見れば個人的関心も反映しているのかなと思っています。これはうれしいことですね。
    アクセス数がうなぎ登り、でしょうか。期待しましょう。
    ありがとうございました。

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