工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

コロナ禍と私たち(この世界をどう生き延びるか)

全国の感染者の推移と主な出来事(朝日別刷り06/21)

4月7日に発出された「緊急事態宣言」は5月25日に解除され、その後に出された「東京アラート」も先週11日に解除。
今、日本社会は徐々に長い眠りから目覚め、再起動しつつあるかのよう……。

私はと言えば自身の工房に籠もり、日々木と対話し、淡々と木工に勤しむ、そのおかれた環境というものはコロナ禍に席巻されている世界の状況を考えれば、とても贅沢で恵まれたものだという自覚も芽生えつつあるところがだが、今日は私自身の新型コロナウイルス(Covid-19)を迎え撃つ中間的な総括として記述してみたい。
やや長い記述となるが、お付き合いいただければありがたく思う。

木工房的生き方の贅沢さを噛みしめ…

工房に籠もり木工に勤しむという恵まれた環境というのは、数ある職業の中では確かに稀少な事例だろう。

ホワイトカラーの会社員は職場での事務作業はソーシャルディスタンスが取れないといったことから感染リスクの高い職場から抜け出、妻子が待つ自宅に籠もり、zoom を起ち上げ、リモートワークに精を出す。
…、かといって家事をするわけでも無く、家人は「夫は元気で留守が良い……」状況から何らの心の準備も無くいきなりの転換を突きつけられ、揚げくストレスを高じさせる…。

スーパーマーケットはこのところいつも賑わっているが、ペラペラのビニールの遮蔽膜で覆われたレジボックスで、これまた慣れないゴム手袋を着けさせられレジ打ちする女性たちの感染リスクはさぞ高いのではないだろうかと本当に心配になる。

先日はその事を伝えようとレジ打ち女性に話しかけたのだが、妻に「かえってあんたの方が感染リスク高めてるじゃん」と戒められる始末 ^^;

私はあまり縁が無いが、街中の裏通りにあるスナック、キャバレーやクラブ、バー、といった接客を伴う店は軒並みシャットダウンさせられ、当然にも収入は断たれ、オーナーはスタッフの給料、月々の家賃の捻出に頭を悩まし、中にはいつ夜逃げするか、とばかりに電卓片手に苦悩に沈む人もいるだろう。

これではとても生活できないとばかりに、こっそりシャッターを開け、酔客を招き入れる店舗オーナーもいるに違いないが、今の日本社会はそれを許さない。
たちまち後ろ指さされ、張り紙され、ネットでバラされれば、全国から酷い言葉が投げつけら、やがては閉店に追いやられていく。

また一方では医療従事者を励まそうと決められた時刻になれば一斉に拍手をする姿や、ゴミ袋を上手に加工して防護服を作ったり、3Dプロンターでフェイスガードを作ったりと、医療従事者を感涙で顔を濡らすという奇特な人もいるようだ。

こうしてコロナ禍は日本社会の深層にある倫理性、公共概念というものをゆっさゆっさと揺さぶっているのだが、その狭間からは様々な相貌が見え、人間世界のいくつもの断章が展開され、なかなか興味深いものがある。

ウイルスは人を選ばず、人がいるところであれば場所を選ばず、均しく誰もが罹患する状況下にあるとはいえ、私のように木と対話することで仕事は回り、他者との過度な接触を必要としない者と、上述のような人々とは明らかに対Covid-19ウイルスにおいて次元の異なる生存様式と言われかねず、そこは深く自覚し、他者への想像力を失ってはいけないのだろうと戒める今日この頃である。

メメント モリ

ただ私も仕事の性格上、Covid-19感染リスクからの埒外であるからとのんびりと構えているということではない。
Covid-19の重症化リスクの高いのは高齢者、そして糖尿病などのいくつかの持病を持つ人だとされていて、私は20年来の呼吸器疾患 喘息を抱え持つ身であり、また隠しようも無く前期高齢者であるところから、このハイリスク対象者としてはビンゴ!だ。

突然だが、私が死を意識したのは、若い頃の一時期、あることに関わることで1度、そして今回は2度目である。

万が一感染すればハイリスクの私などは重篤に陥ることも大いに考えられ、最悪の場合ECMOを必要とされるケースにも。


そのような場合、日本の医療体制ではECMOでの救出はs実に限られた患者にしか適用されないとされ、トリアージを求められる医療現場では前期高齢者である私は当然にも若者に譲ることをあらかじめ申し出ておこうと考えている。(ただこうした「命の選別」は「優性思想」にも繋がる思考だとして批判される向きもあり、安易に語ることは許されないとの思いもあるのだが……。)

そんなわけで、「メメント モリ」は私にとり決して遠いものでは無く、今、身近なものとなっている。

それは同時に、日々WHOから発せられる感染状況の報道に一喜一憂し、Covid-19感染拡大に怯える世界の多くの人々と同時代を生きているという感覚の共有でもあるという意味では、妙な歓びさえ漂う。

「類としての困難」を地球的規模で同時に想うというのは、私にとってはかつてなかった感覚だ。

それはともかくも、日々、自身の恵まれた環境から、国内に留まらず、遠く中国・武漢や香港、台湾、シンガポール、さらにはイタリア・スペイン・ドイツ、フランス、英国 、はたまた米国、南米の国々の人々のCovid-19の時代の生き方を垣間見ることを日常としている。

そこからは多くの事が見えてくるのだが、麻生財務大臣、副総理の例の「民度のレベルが違う」発言などは、いかに幼稚な思考様式で、幻覚に囚われた戯れ言で、つまりは世界のパンデミック状況というものへの想像力の欠片もない発言であり、こんなのが政権中枢に居座っているならば日本社会へのコロナウイルス浸蝕というものはとても阻むことは無理なんだろうなという哀しみの思いを胸に「絶句」してしまう。(06/05朝日「麻生氏「日本人、誇っていい」 民度発言への批判に対し」

「新たな危険な段階」に入った(WHO)

WHO(世界保健機関)は19日、Covid-19のパンデミックは「新たな危険な段階」に入ったとアラートを発した。

主要には南米の国々を対象とした分析と研究による見解だが、南アジア、中東地域でも感染者増大は見過ごすことのできぬレヴェルにあると言う。
(AFPBB:「コロナ流行「危険な新段階」とWHO 新規感染が過去最多に」)

(BBC:「ブラジルで新型ウイルス感染者100万人突破 アメリカに続き2カ国目」)

さらには、ロックダウンなどで急迫事態を何とか越え出て、徐々に規制を緩和させ、経済活動の再開を急ぐ国々の報道が賑やかだが、そうした国々では既に第二波の兆候も出てきている。

ここではアフリカの国々の状況は触れられていないが、日本のように「手洗い励行」を推奨されても、彼の国では水道などは都市部の一部のみで、水の確保さえとても困難なところが多く、あるいは中東に展開する多くの難民キャンプなどでは、いったいどうやってソーシャルディスタンスを守ってもらうのか、悩ましく、医療アクセスなどはほぼ絶望的な環境を強いられている。

翻って日本国内であってもホームレスをかこつ人などは簡単に手洗いなどできようもない。

こうして私のようないわば安全圏で過ごすものは、異次元の困難な状況を強いられる人々への想像力は欠かせず、そこへの立脚なくしては何も考えられないと思うべきなのかも知れない。

この新型コロナウイルスのパンデミック、地球規模での感染拡大は、いかに国境封鎖しようとも、侵入を阻むことは至難。例えある国で感染を大幅に抑止し、感染者の拡大を抑えたとしても、国境封鎖を緩めれば、たちどころに感染者を招き入れ、国内での再感染へと繋がっていくというのが感染症というものの特性だ。

〈COCOA〉が意味するもの

日本国内でも数日前にリリースされたAppleとGoogleが協働して作り上げた COCOA(接触確認アプリ)だが、これはOS領域のAPIで、各国の個別のアプリではそれぞれの国の保健衛生当局が管理運営することとなっていて、この種のアプリで常に問題になってくるプライバシー保護をめぐる対策も、開発者AppleやGoogleに依存するわけでは無く、各国当局者のアプリ活用における考え方を反映させたシステム構築に依存している。

今やこのITアプリに象徴的なように、感染しない、人にうつさない、などの防疫に寄与するには国家による統治システムに依存することが有効とされてきているわけだが、このCovid-19感染状況の効果的な対策を考える場合、こうした国家という単位による監視ツールの活用に依存せざるを得ないというのは、コロナ禍対策を考えるにあたって、国家と市民の関係性を考えるケーススタディの1つとなっているのかもしれない。

ところで、このCovid-19は中国・武漢に発するとされ、1月から2月に掛け猛威を振るい、次々と死者の数が鰻登りに報じられ、間もなく医療崩壊も起き・・・、こうしてCovid-19の怖ろしさは世界に脅威を与えていったのだが、今にして思えば、米国の感染者数225万人(死者数12万人)、ブラジルの感染者数103万人(死者数5万人)、などに較べれば、大国中国では感染者数8.3万人(死者数0.43万人)と桁違いに低く、このことを素直にみれば、中国は感染症対策に見事に勝利したと言えなくも無い。(数値はNHKデータによる)

同じく、2〜3月のかなり初期の段階では感染爆発状況を呈していた、お隣、韓国は感染者数1.2万人(死者数280人人)と、日本と較べてもなお少ない数値で推移している。(グラフは朝日05/28「各国の新規感染者数」)

中国は中国共産党という一党独裁政権ならではの強力な統制力の投入による文字通りの都市封鎖(ロックダウン)が可能であることを背景に、その初期段階の混乱を乗り越え、武漢では感染者がゼロというところにまでウイルス感染を封殺させ(報道それ自体、中国共産党の配下にあることで、その信頼性は疑問があるが)、

方や韓国ではかつてSARS、致死率40%と言われるMARSというアジア大の感染拡大に晒され、多くの経験知を有していて、この度のCovid-19感染拡大においては、世界に範となるほどのPCR検査体制と、防御策が講じられていたと言われ、これら二国の感染症対策は欧米においても高く評価され、それぞれ自国の対策にも取り入れられているようだ。

高度な国家による統治能力による感染防護という問題

また、特徴的な事として、今回はほぼ全員が携行するスマートフォンなどのAI/ITを駆使した個人の動態の完全把握をベースとし、世界に冠たるPCR検査体制の充実を背景とし、感染者の実態を掴み、ここに医療を集中的に投下し、重篤化に至るかなり早い段階で手厚い治療を施し、死に至る悪化を防いでいる。

この2つの国の成功事例を見るとき、山中伸也教授が語る「ファクターX」(日本を含む東アジアの国々、中国、韓国、台湾などでは感染拡大に見舞われてはいるものの、欧米、南米と較べれば、その感染規模は1つも2つも桁が小さいという事実にフォーカスし、これはいったい何を意味するのか、という問いである)の要因もあるのだろうと考えられるが、早期にピークアウトへと辿り着くには、上述のように国家が個人の動態をビックデータとして把握、分析することで、リスクを可能な限りに事前防護し ていることの成果であることは注目したい。

IT/AIによるセンシング(感知)、トラッキング(追跡)を把握し、このビックデータから、リスキーな人間の行動を抑制させ、リスキーな場、リスキーな人間へのコンタクトを避けるべく、個人のスマートフォンへと知らせる。こうした道徳律が広く受容され、発揮されている。

こうした集合知というべきものを国家に委ね、これを活用し、市民社会の防疫を貫徹していく。
こうしたことを受容し、道徳律にまで高めたところが、怖ろしいコロナウイルスを排除し、安寧な日常を取り戻すことのできる強力な市民社会として武装されていくというわけである。

さて、日本ではどうだったのか、簡単に振り返ってみる。

(続く

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  • シーダーマウンテン 貴科
    木香には抗菌抗体作用、薬理があります。仕事にリラックス効果、集中力アップ、健胃・消炎をするキュアーファニッシン、
    メディカルWとなる。ローズウッド系にも自然薬多く、やる気木、木理の美しさを味わい、芳香をあびる工房ライフの尊さが身にしみます。
    無垢材の鉋かけでは、削り華屑、微細放散成分を吸い込見、皮膚から吸収されます、漢方和方でホウの木・松柏類・樟・杉・檜など
    「和漢三才図絵」巻第八十二  香木類 図入り事典(江戸期正徳年間)に
    柏 樅 檜 椹 栂 松 五葉松{姫子松)落葉松 杉 桂 楠 樟 楓 などを列記。現在、小職は

    薬用樹キハダ、ニガキ、銀杏、櫟・コナラ、更に欅の抗菌除菌力にも注目板しております。
    COVID-19 では、プラスチック・ステンレスの表面に3−4日生存し、木材は3時間、病院・機材はすべて至福、イメージは大きくかわりますね。木の内科担当abe

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