工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

相模原・障害者施設における惨殺事件の衝撃(その2:諸団体からの声明など)

障害者関係諸団体などからのメッセージ

ここでは、相模原、知的障害者施設における殺傷事件を受けての、関係諸団体のメッセージのいくつかを紹介します。

それぞれ、後段に全文を転載させていただきます(改行などを除き、原文のママ)。

障害者関連諸団体からのメッセージは、たぶん、他にもあるのだろうと思われますが、Web上から取得できたものを網羅的に渉猟したつもり。

後段に記すように、あるメッセージからは、私自身、強く関心を呼び起こされ、思考の深みを問われ、自身の立場を問いかけられる「意見」もあった。

前回、書いたように、安倍首相からは特段の声明などは発せられておらず[1] 、政府当局からのものを探したところ、文科省からのものがあった。(「相模原市の障害者福祉施設の事件を踏まえた大臣メッセージ」)

当然ながら、この犯行に対する怒りのほとばしりなどあるはずも無いとしても、いかにも官僚的な作文という感じが否めない。

こうして、首相からは何ら有為なメッセージは発せられることなく、所管の文科省から型どおりの官僚的なステイツメントが出されたという状況。
これらは、現政権・最高政治指導部の障害者へのお寒い関わりの在り様を象徴しているというわけである。

ホワイトハウスからのステイツメント

関係諸団体の声明の前に、まずホワイトハウスからの弔慰のステイツメントを紹介しておこう。
whaitehouseStatement by NSC Spokesperson Ned Price on the Knife Attack in Japan

《アメリカ国家安全保障会議のネド・プライス報道官の殺傷事件への談話より 》

米国は、日本の相模原で起こった極悪非道な殺傷事件で犠牲となった人たちの家族その他近しい皆様に哀悼の意を表します。
また、負傷された方々の一日も早い回復を祈念しています。
このような暴力事件に言い訳(excuse)はあり得ませんが、障害者のための施設で発生した事件ということで、より憎むべき無慈悲な事件です。
アメリカ人としましては、失われた命を悲しむ日本の皆さんと共にあります。

米国務長官ケリー氏も、当日、滞在中のラオス・ビエンチャンでの記者会見の中で弔意を示し、「(事件は)一種のテロだ」と非難しつつ、日本への連帯を示している(こちら)。

きょうされん常任理事会(日本障害者協議会)

kyousanren

《障害者入所施設で起こった悲惨な事件について》

本日未明、神奈川県相模原市の障害者入所施設で起こった悲惨な事件は、日本各地に 大きなショックをもたらしました。とりわけ障害のある当事者や家族、関係者の受けた 衝撃、そして不安や悲しみは言葉であらわすことができません。

なにより、犠牲となった障害のある当事者、そのご家族に哀悼の意を表するとともに、 負傷した方たちの一日も早い回復を祈ります。ならびに、同施設で事件に遭遇した方た ちの心の傷が時間をかけながら癒されることを切に願います。

容疑者の卑劣な行為は、いかなる理由があるにせよ決して許すことはできません。一 方で、なぜこのような事件が障害者入所施設で起こってしまったのか、戸惑いと疑念が 晴れません。こうした事件を二度とくり返さないためにも、事件の背景や真相が究明さ れることを願います。
なお、報道によると容疑者には入院歴があったとされていますが、今後、精神障害に 対する誤った認識や差別が助長されないよう、各機関には慎重な対応を求めます。

最後に、本事件の報道に触れて、全国の障害のある当事者、その家族、関係者には動 揺と不安が広がっています。障害のある当事者と家族のみなさんには、できるかぎり冷 静さを失うことなく、普段どおりの生活を送られることを呼びかけます。あわせて、関 係者のみなさんには、障害のある人とその家族の気持ちに寄りそい、個々に応じた特別 な支援・援助を行なっていくことを呼びかけます。

きょうされん(日本障害者協議会)・藤井克徳・専務理事へのインタビューがありますので、YouTubeを貼り付けます。

聞き手 迫田朋子(ビデオニュース・ドットコム

全国手をつなぐ育成会連合会(会長 久保 厚子)

teotunagu

《津久井やまゆり園の事件について(障害のあるみなさんへ》

7月26日に、神奈川県にある「津久井やまゆり園」という施設で、
障害のある人たち19人が 殺される事件が 起きました。
容疑者として逮捕されたのは、施設で働いていた男性でした。
亡くなった方々の ご冥福をお祈りするとともに、そのご家族には お悔やみ申し上げます。
また、けがをされた方々が 一日でも早く 回復されることを 願っています。

容疑者は、自分で助けを呼べない人たちを 次々におそい、傷つけ、命をうばいました。
とても残酷で、決して 許せません。
亡くなった人たちのことを思うと、とても悲しく、悔しい思いです。

容疑者は「障害者はいなくなればいい」と 話していたそうです。
みなさんの中には、そのことで 不安に感じる人も たくさんいると思います。
そんなときは、身近な人に 不安な気持ちを 話しましょう。
みなさんの家族や友達、仕事の仲間、支援者は、きっと 話を聞いてくれます。
そして、いつもと同じように 毎日を過ごしましょう。
不安だからといって、生活のしかたを 変える必要は ありません。

障害のある人もない人も、私たちは 一人ひとりが 大切な存在です。
障害があるからといって 誰かに傷つけられたりすることは、あってはなりません。
もし誰かが「障害者はいなくなればいい」なんて言っても、
私たち家族は 全力でみなさんのことを 守ります。
ですから、安心して、堂々と 生きてください。

 平成28年7月27日

全国手をつなぐ育成会連合会
 会長  久保 厚子

公益社団法人 全国精神保健福祉連合会

titekisyougaisya

《「津久井やまゆり園での事件について」(声明文)》

平成 28 年 7 月 26 日未明、神奈川県「津久井やまゆり園」において、施設を利用さ れている方が刃物で切りつけられ、19 人が亡くなり、26 人が重軽傷を負うというたい へん痛ましい事件が発生しました。
亡くなられた方とご遺族、関係者の方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、 負傷された方の一刻も早い回復と、その場に居合わせた方々が一日も早く以前の暮らし に戻り心の傷を癒せるよう願ってやみません。

事件の容疑者は同施設の元職員ということが明らかとなり、障がいのある人の存在や人 格を否定する供述をしているとの報道がなされていますが、罪もなく抵抗もできない多く の人たちの命を奪った卑劣で残忍極まる事件に強い憤りを禁じ得ません。
障がいのある方のご家族はもちろん、日ごろより障がいのある方の福祉の向上を目指し、 命の尊さや人権尊重を第一義に懸命に支援に取り組んでいる施設職員、福祉関係者の方々 は、二重にも三重にも驚き、胸が切り裂かれる思いを持ったことでしょう。
事件の詳細は今後の捜査によって明らかにされるものと思われますが、障がいの有り 無しで命を選別することは、絶対にあってはなりません。どんなに重い障がいのある方も同 じ地域の一員です。この世に生を授かった誰しもが楽しく幸せな生活を求め、共に支えあう 社会の実現を心より願っています。
私たち福祉施設は社会から遠ざかることなく、近隣住民の皆様のご協力を頂きながら、障 がいのある方の支援にあたっています。障がいのある方だけでなく、地域住民の皆様をはじ めとするすべての国民の皆様の安心・安全のためにも、ぜひとも障がいのある方への支援に 高い志を持つ方に福祉現場で働いて頂きたいと願うとともに、私たち自身もより良い人材 の確保と育成に向けた取り組みを続けていかなくてはなりません。

あらためてこのたびの事件でお亡くなりになられた方の尊い命に哀悼の誠を捧げますと ともに、障がい福祉サービスを利用されている方の不安が増幅されることのないよう、 私たち福祉施設も日々の取り組みに万全を期し、広く国民の皆様への障がい福祉の理解の 促進に努めていきたいと考えております。

最後に、今後二度とこのような凄惨で悲しい事件を繰り返さぬよう、国民の皆様の障がい のある方へのご理解と、障がい福祉へのご協力を切にお願い申し上げます。

平成28年7月29日

公益財団法人 日本知的障害者福祉協会
会長 橘文也
副会長 菊地 達美
副会長 榊原 典俊
副会長 井上博

COMHBO 地域精神保健福祉機構

《相模原障害者施設殺傷事件の報道について緊急要望書を提出》

日頃、貴社におかれましては社会正義のため迅速で正確な報道のためご尽力されていることに対し深甚なる敬意を表します。
私たち「認定NPO法人地域精神保健福祉機構」は、2007(平成19)年1月に設立したNPO法人で、通称をコンボと称します。

私たちは、「精神障害をもつ人たちが主体的に生きていくことができる社会のしくみをつくること。そのために地域で活動するさまざまな人たちと連携し、科学 的に根拠のあるサービスの普及に貢献すること」を使命とし、精神保健福祉関係者、ご本人・ご家族の皆さまに、ご指導・ご支援をいただきながら活動しており ます。
このたびの相模原市で起きた事件について、被害にあわれた方の一日も早い回復を願うとともに、亡くなられた方々に対し深く哀悼の意を表します。またご家族の皆さまの驚きや悲しみをお察し申し上げます。

さて、この事件で逮捕された男について、一部報道では、措置入院の過去があったと報じられています。私たちは、事件の背景・動機などの詳細が不明な段階で、精神障害による犯行とするような報道を危惧しております。
「精神病院に入院」「通院」といった部分記述は、事実であっても、その一文(以下、病歴報道)によって、読者には「精神疾患」が事件の原因であり、動機で あると読まれてしまいます。その結果、「精神病者(精神障害者)はみな危険」という画一的なイメージ(=偏見)を助長してしまうと考えるからです。

2001年の大阪教育大学付属池田小学校事件では、精神障害者の犯行として大々的に報道され、精神障害の当事者に多大な報道被害をもたらしました(※添付の調査報告書をご参照ください)。

現在、入院患者だけで約30万人、精神障害者保健福祉手帳だけでも約75万人が取得しており、約396万人が精神科に入院・通院しています。こうした人たちの立場や気持ちにも配慮した記事づくりをお願いいたします。

特定非営利活動法人 DPI(障害者インターナショナル)日本会議〉

DPI

《相模原市障害者殺傷事件に対する抗議声明》

わたしたちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害の種別を越えて障害者が障害のない人と共に生きることができる社会づくりのための運動を行っている団体であり、北海道から沖縄まで91の団体で構成されている障害当事者団体である。

2016年7月26日未明に相模原市の障害者施設で起きた障害者殺傷事件によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

現時点で事件の全容は不明でありその解明は今後を待たなければならないが、報道によると容疑者は深夜に施設に入り、障害者を刃物で次々と襲い、殺傷し、神奈川県警の調べに対し「障害者なんていなくなればいい」という趣旨の供述をしているとも伝えられている。

もし、これが事実だとすると、障害者を「あってはならない存在」とする優生思想に基づく行為に他ならず、私たちDPI日本会議はここに強い怒りと深い悲しみを込めて断固として優生思想と闘っていくことを改めて誓う。
近年、閉塞感が強まる中、障害者をはじめとするマイノリティに対するヘイトスピーチやヘイトクライムが引き起こされる社会状況の中で、今回の事件が起きたことを看過してはならない。

ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを許さず、それらが引き起こされる社会状況を変革し、誰もが排除したりされたりしないインクルーシブな社会づくりを進めていくことが求められている。
障害者分野では、2014年に障害者権利条約が批准され、今年4月からは障害者差別解消法が施行されるなど、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会=インクルーシブな社会づくりを目指した取り組みが進められてきた。

私たちは、今回の事件にひるむことなく、障害者の生命と尊厳がまもられ、様々な権利が行使できるように、インクルーシブ社会に向けた活動をより一層強める決意である。

なお、容疑者とされる者の入院歴等が一部マスコミで取り沙汰されているが、事件の全容が解明されていない中で偏見と予断を煽りかねない報道は差し控えられることをあわせて求めるものである。

相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見(DPI日本会議)

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議

議長 平野みどり

日頃より障害者の権利の増進のためにご尽力いただき、心より感謝申し上げます。
わたしたちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害の種別を越えて障害者が障害のない人と共に生きることができる社会づくりのための運動を行っている団体であり、北海道から沖縄まで91の団体で構成されている障害当事者団体です。

2016年7月26日未明に相模原市の障害者施設で起きた障害者大量殺傷事件によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
また、深い悲しみや恐れを持たれているご家族に対しても心からお見舞い申し上げます。

私たちは、事件の全容と背景の解明を行うことを最優先とし、推測などをもとにした拙速な対応は、障害者への偏見や差別を助長する恐れがあるため、避けるべきであると考え、以下、意見を述べます。

1.今回の事件に関する基本的な立場
相模原での障害者大量殺傷事件で問われるべきは、むき出しの優生思想に基づく行為とそれを生み出す社会状況である。排除的な社会ではなく、インクルーシブ[2] な社会への転換が求められる。

2.で述べる通り、現在打ち出されている「再発防止」は、障害者を社会から隔絶、排除する方向に進む危険性を有していると考える。
もし、そうした方向が打ち出されるならば、今回の事件の目的として言われている「障害者がいない世界」に私たちの社会は進んでいくことになる。
あってはならない今回の事件に対して、その問題点をしっかりと受け止めた上で対応をしていくことが求められる。
あやふやな情報を元にした「対策」によって、方向を見誤らないようにして頂きたい。

DPI日本会議声明
共同通信2016年7月27日配信記事

2.「再発防止」として示されている事項について
(1)「施設の安全対策」について
通常の社会生活における安全対策は必要であろうが、「防犯」名目の下、障害者入所施設がより社会から隔絶された状況になり、入居者の外出や地域の人々との出会いが制限され、入居者のQOL[3] が低下することになってしまわないか、大きな懸念を持たざるを得ない。

(2)「措置入院の在り方の見直し」について
報道によると、容疑者は犯行後、警察の取り調べに対して「障害者なんていなくなればいい」と語ったという。
また、重度重複の人たちを狙い撃ちにしたこと、家族に対しては「突然関係を絶つことになり申し訳ない」と述べているが、障害者本人に対する謝罪はないとも伝えられている。絶対認められない考えではあるが、「優生思想」という点では一貫したものを見て取れる。しかし、「思想」の問題を精神医療の対象とするのは間違いである。そもそも、容疑者が措置入院の対象者であったかについても検証が必要である。今回の事件を受けて、「措置入院の在り方」を見直すのは、さらなる誤謬である。こうした検討は精神障害者への偏見と隔離を強めることになり、私たちは検討会の設置に反対する。

3.今回の事件を受けてなすべきこと
2014年に批准した障害者権利条約や、それに基づく改正・障害者基本法、障害者差別解消法などに示されている、「障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会」(インクルーシブな社会)を基本とした対応がなされるべきである。

(1)施設からの完全な地域移行計画と地域生活支援の飛躍的拡充を今回の事件の背景に、とりわけ重度の知的障害のある人、重複障害のある人、高齢の障害のある人の地域移行が遅々として進んでいない状況があるのではないか。
事件に遭われた施設の管理体制を直接批判するものではないが、今後の在り方として入所施設ではなく、地域での生活を基本に進めていくべきである。
国も「施設からの地域移行」を掲げて10年余り経つが、今回の事態をきちんと受け止めて抜本的な地域移行策を打ち出すべきである。
施設や病院に誰も取り残されることなく完全な地域移行が可能となるような計画と、どんな重度の障害があっても地域で暮らせるように重度訪問介護などの地域生活支援を飛躍的に拡充して頂きたい。

(2)「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」との毅然としたメッセージを社会全体で
多くの障害者、関係者は今回の事件に強い衝撃と怒り、悲しみとおそれを抱いている。
私たちDPIは優生思想を絶対認めない。「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」といったメッセージを社会全体で共有していく
ことが求められている。

優生思想というと、戦前のナチス時代にあった過去のことと受け止められがちである。
しかし、日本では「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に掲げた
優生保護法が1996年まで続いた。

障害者や関係者の粘り強い運動でようやく廃止されたが、優生保護法下で行われた不妊手術などの被害者に対する謝罪や補償は、いまだになされていない。
過去を反省し、「優生思想は認めない」とのメッセージを託し、政府は優生保護法の被害者に対する謝罪・補償を早急に行うべきである。
なすべきは、措置入院制度の在り方検討会の立ち上げではなく、まず優生保護法の被害者への謝罪を行い、検証・補償の検討会の立ち上げを行うことである。

以上
ハイライトは私によるもの。

《関連すると思われる記事》

♦ 脚注
  1. 総理指示・談話など〉および〈総理の演説・記者会見〉などには、関連する情報を探し出しても何もない []
  2. インクルーシブ:社会的包摂 []
  3. QOL:「quality of life」の略 []
                   
    

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