工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ルーターのフェンスを更新

ルーターマシンのフェンス
ルーターマシン

うちでは大型機械のルーターマシン、いわゆるピンルーターを起業時より導入し、これなくしては仕事にならないほどに依存しています。

今回のルーターフェンスの話しですが、現在使っているのは導入時に作ったもので、1年に1度、平滑性の調整のため、手押し鉋盤を軽く通す程度でこれまで長らく使い続けてきたのですが、

ネット販売のサイトを渉猟中、木工用フェンスに特化したアルミ製のL字型チャンネルが目に飛び込み、胸の高まりを覚え、思わずプチッ。😓
これをベースに新たなフェンスを作ってみようと思い立った次第。

L字型 Tスロット トラック

L字型 Tスロット トラック
L字型 Tスロット トラック

右図がその断面。
フェンス面、75mmという高さは、目的のルーターフェンスとして手頃なものですが、定盤接地面の35mmという幅はやや心許ないのは否めません。
長さは数種あり、1mのものを選ぶ。

ご覧のように、こうしたアルミ鋼材はT字スロットが施されているのが1つの特徴で、拡張性が高くなっています。

ただルーター用のフェンスの場合、このままでは中央部分にあたるところにくる主軸部分のルータービットが干渉しますので、このアルミフェンスに左右、独立した木製のサブフェンスを結合させ、中央部の主軸に対し、開口部を任意にセットするための加工が必要となってきます。

これらのフェンスとサブフェンスの接合には、本体のT字スロットが活きてくるのは言うまでもありません。
ビットの大きさに対応させ、広く、狭く、開口部を任意な幅にセットできるような設計が求められます。

ルータービットも様々ですが、今回はフェンスからサブフェンスの面まで、55mmほどのスペースを設けることに。
うちの最大径のルータービットでもクリアするように設計。

ルーターフェンス カスタム制作

右画像の装填されているビットは軸系が16mm、刃径は75mmのボリュームのボーズ面取りのルータービットです。
25Rの面取りができます。

フェンス断面の寸法ですが、木部が30mm、それに25×50mmのアルミ鋼材を噛ませています。
合わせて55mmの懐になります。

55mmの厚みですが、この全てを木材で叶えるとかなりの重量になってしまうので、うち30mmを木材、残りの25mmをアルミ角材という2種の素材をプレス接合しています。

後は主フェンスのT字スロット部に左右それぞれ4ヶ所にボルトを遠し、任意の位置で接合固定させます。

このT字スロット断面形状に対応するナットを探すのに、少し苦労しました。
結局、アジャストするものは見つからず、それに近いもので対応させることに。
ボルトはステンレス製のトルクス、皿ネジを選びます。

サブフェンス固定はトルクス スクリュー

昨今、ボルトの頭形状は多種多様に市場展開していますが、トルクスは食い付きが良く、長期使用からの破綻も少なく、したがって耐久性が向上していますのでこのようなケースでは好んで用います。

このフェンスの定盤への固定方法ですが、T字スロット対応のGクランプを使います。

これまでは一般的なFクランプを使っていましたが、T字スロットを使わない手は無いですからね。
なかなか使い勝手も良いものです。
このGクランプは国内では見当たらず、中国の通販会社から入手。

また、こうしたT字スロット対応のストッパーなども手軽に入手できますので必要であれば、これも付加させれば良いところですが、うちは量産はしませんので必要ではありません。

冒頭、懸念した35mm幅の定盤接地部分ですが、この懸念は杞憂でしたね。
Gクランプでしっかりと締め付けしさえすれば、カネが崩れることも無く、安定的に運用できています。

他機種の場合

なお、このフェンスですが、うちには大型機械の〈高速面取り盤(SHAPER)〉と、小型機械の〈面取り盤〉の2機種があり、いずれも同様のフェンスが必須ですが、簡単に紹介しておきましょう。

高速面取り盤(SHAPER)のフェンス

高速面取り盤(Shaper)
 INTEGRAL FINGER FENCE
高速面取り盤(Shaper)+〈 INTEGRAL FINGER FENCE〉
Aigner社フェンス
Aigner社フェンス

このアルミフェンスですが、10年ほど前、英国から取り寄せたもの。
ご存じかも知れませんが、世界の木工界で、フェンスと言えば、🇩🇪Aigner社の製品です。
右がそれ。
ただ、高速面取り盤本体が買えるほどの高額なもの。

残念ながら私には敷居が高く、同等品を世界隈無く探しました。
その結果、辿り着いたのが、英国の木工関連ツール問屋・AXMINSTE社の〈 INTEGRAL FINGER FENCE〉
Aignerの数十分の1ほどの価格ながら、近似的な機能を持つ、なかなか優れたフェンスです。(詳細は10年前の弊Blogに)


ルーター盤

ルーター盤とフェンス

Shaperは1インチ(25.4mm)軸で、かなり大きなカッターブロックを装填した、強力な成型機械ですが、うちにはこの半分の太さの12mm軸の面取り盤があります。
アマチュア木工でも良く見掛ける、1/2インチ軸のハンドルーターを定盤に固定したものと同じようなイメージのマシンです。

うちでは大型の面取り盤(Shaper)、およびルーターマシンがあり、9割方はこちらを稼働させていますが、小さな面取りなどでは、こうした小型のルーター盤も有効なものです。

また、ルーターマシンは被加工材に対し、上から当たるのに対し、ルーター盤は、その逆ですので、板厚に無関係に一定の面形状が獲得されるという機能性の違いから有用な場合もあるのです。
(ルーターマシンの方は、面取り加工はその性能の一部でしか無く、さらに多様で汎用的なマシンであり、ルーター盤とは本質的に異なるものです)

こちらのフェンスですが、これまでは80年代頃に取り扱われていた、BOSCHの既製品のフェンスを使っていました。
これは木製のフェンスですが、L字型のベースは薄い鉄板で、あくまでもアマチュア向けの仕様でしかありません。

そこで、今回のルーターマシンのフェンス更新に合わせ、こちらも、Tスロットのトラックを求め、作っていこうと考えているところ。
画像のように、かなりしっかりした断面構成のレールです。

ルーターマシンのフェンス同様、木製のサブフェンスを設けるべきところですが、こちらでは大きなサイズのビットは使いませんので、このアルミフェンスそのものを必要分、切除して用いようと考えています。厚み50mmの半分ほどをカットすれば事足りますので、全体の剛性への影響は無視できる程度かと。(画像、オレンジで囲ったあたりをカット)

定盤への固定は、ルーターマシンのフェンス同様、Gクランプにて行います。
ルーターマシンとはフェンス仕様が異なり、このGクランプも別のものを探しました。
調子は上々

アルミの切削はどうしましょう。アングルグラインダーとか、6mm軸の砥石を装填したトリマーでもいけそうですね。

安全性の追求からもフェンス仕様は重要

フェンスは木工機械における必須の相棒ですが、日本の木工機械メーカー、関連メーカーでは必ずしも使い勝手の良いものを開発しているものでもなく、欧米、中国などで展開されているフェンスの指舐めするほどのものと較べると、あまりにも時代おくれ。

少しでも使い勝手の良いものを自作することを大いに推奨したいものです。
今回のように、主軸を中心に開口部を調整させるというのは、高精度の加工上必須であるばかりでは無く、作業者の安全性の向上にも大きく資することも間違いが無いところです

hr

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