工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ネット社会の裏側に…(工具輸入・ボクの過ち)

海外からの個人輸入(通信販売)で良質、上質なものを求める、というのは密やかな楽しみでとてもありがたく享受させてもらっていた。
発注書の履歴を確認すると90年代初頭からだから15年ほどのものになろうか。
最初は LLビーンであったり、REIと言ったスポーツウエアの類であったが、すぐに木工関連グッズが米国の関連会社から入手できそうだ、と判って、池袋サンシャインのジェトロに出掛けカタログを漁ったものだった。
最初は恐る恐る、初恋の人に声を掛けるような仕草で…、徐々に大胆に大物までも…、
しかしこの幸福な時間は長くは続かなかった。
まずLLビーンが日本国内での直営店展開を始めたことで、カタログは日本向けのものとなり、国内店舗価格と変わらない、つまり米国内の価格帯とは異なる価格帯での入手を余儀なくされるという事態に追い込まれてしまったのだった。
REIも遅れること数年、町田に巨大な直営店が出店することで、米国からの入手にハードルが掛けられるようになってしまった。
しかしこの町田の店舗も1年ほどで閉鎖(現在はモンベルかな?)。
そして電動工具だ。
時代はネット社会。クリック1発で垂涎の木工関連グッズが入手 !,できたはずのものがどうもおかしい。
それまで様々な米国内の販売店が日本向けにも発送してくれていたのだがamazonが伸張する過程で、それらの販売網はことごとくamazonの傘下に納まり、もはや日本からの個人輸入のゲートは著しく狭く、困難になってきてしまった。
そして、多くの方々に謝罪せなばならない事態が生起しているとのことを聞き及び、エントリすることになってしまった。
このBlogでFESTOOLのルーターについてレビュー記事を上げたのだったが、どうもこの記事を端緒として、他のところでもFESTOOLの入手についての記事が上げられ語られているそうで、そうした一連のことがきっかけとなって、日本国内の代理店からの締め付けとしか考えられないような日本向け販売の中止という事態になってしまったようなのだ。
国内代理店における価格設定にはその会社としての合理的な理由があるのだろうが、しかしあまりにも現地価格と比し高すぎ、当然のように海外から入手を試みようとするのは必然的な流れだ。
そうした煩雑なことをしなくても国内業者から購入することのメリット(メンテナンス、部品入手などの)を含め、いくらかは高くても国内で買いましょうという判断を与えてくれるような経営戦略を持ってくれたなら、大いにその会社への信頼は増し、需要も増加するだろう。
しかし残念ながら実態はそうではない。
ビジネスのスタイルは自由。最大の利潤を上げようという動機は何ら恥ずべきものではない。しかし世界大的に開かれたマーケットから自国を閉鎖的に囲い込むということがもしあるとするならば、それは賢明なものではないように思うし、最大の利潤を追求するという目的を遂げることには繋がらないだろう。
先のレビュー・エントリ内容については、このような事態をもたらすとは予測できなかったとはいえ、いささか配慮に欠けたものであったことは否めない。今後は記述内容についてはさらに注意したいと思う。
皆さんごめんなさい。
ネット社会から享受できる快適さと、それ故に閉鎖的になってしまっている販売網の断絶。このパラドックスから逃れることは困難なのだろうか。
宮本さんのBlog「名古屋日記」にトラックバックします。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • artisanさんのおっしゃる通りだと思います。
    困ったものです。2−3週間前からwoodcraftのHPでも
    festoolの販売は北米50州に限られるという記載があり
    気になっていました。
    ただ、今回の件はartisanさんが謝罪するようなことは何も
    ないと思います。輸入が禁止されている商品を違法に輸入した訳でもなく。festool社から感謝状が届いても良い位だと
    思います。
    festool社の日本国内代理店のHPを見ても同等商品はまだ
    販売されておらず、現在は入手経路がない状態ですし
    仮に発売されたとしてもおそらく10万円を超えるような
    価格設定になると思われます。
    性能の良さは認めるとしても、かつてのラメロのように
    特許に守られた技術がある訳でもなし、このルーターでなけ
    ればできないことがあるとも思えません。
    ということは他社製品を選択することになると思います。
    今回の措置はfestool社の利益にならないだけでなく国内代理店の保護にもつながらないということです。
    この手の商品の国内マーケットの小ささに起因するところも大だとは思いますが、どこから買うかの選択ぐらいは消費者の自由にさせてもらいたいものです。

  • 貿易事務などにもお詳しいように思われるacanthogobiusさん、やはり日本の商慣行は特異なものがあるようですね。
    今回のことに関しては、まずは既存の狭い入手ルートをさらに狭めるようなリスクを負うような記述は避けようという主旨、ということでご理解ください。

  • woodcraftのfestool製品輸出取り止めの件。実は私のクレーム申告に起因するところ大では、と思っています。
    9月末にブランジカラムが錆びていた件を伝えましたが、原因を調査する、よくあるようでスチールウールなどでふきとれ、など、それも1回の返事に10日あまり、此方から送るメール作成にも手間取り1ヶ月近くかかっても埒が明かず。
    そこで、充分過ぎるくらいの画像を添え、この錆びを取るのは不可能。もし取れたとしても精度が損なわれると伝えた上で、クレーム不可なら返品したい、OKなら運賃着払いで送りたいのでアカウントNOを知らせて欲しいとつたえました。11月半ばになって ようやく本体のみを軽く、小さく包装して、フェデックスで送れとNOを知らせてきました。
    ところが、ここで思いもよらぬことに立ち至りました。
    荷つくりを終え、フェデックスに書類等の事で問い合わせると、次のようなアドバイスをしてくれました。
    クレームであっても、日本→米国 米国→日本 両方に関税がかかる(ことがある)その負担について話が付いていますか? 書類に負担者を問う項があるので先方が負担してくれる旨の返事を得た上で発送して下さい。
    税関に尋ねると、日本の運送業者なら申告すれば戻るが、外国の業者では不可との事。
    早速 カスタマーサービスに申し入れましたが、途中一度督促も入れて もうすぐ一ヶ月 未だ梨礫。
    悲しいけど諦めるキャ。トホホ。
    他社の機種ではベース底部からロッド部の脱着が可能な物もありますが、festoolは出来ないみたいだし。交換方法が解ればクレームパーツを送ってもらう手も。チョッと押し下げて見た感じでは今のところ違和感はないようですが、実操作では? このまま磨いて使用すればロッド表面が錆でザラついているため 切削屑や樹脂が付着してスムーズに動かなくなるのでは? どなたか詳しい方 教えて戴けませんか。

  • ぼん平田さま クレーム処理が思うようにいかないようですね。
    以前もコメントしましたように錆び付きという思いも掛けないトラブルにはただただお気の毒なことでしたが、適切に処理されるよう望みたいところです。
    関税処理の責任分担の問題が残るものの、基本的には返品に応じようということのようですので無事処理されることを期待したいです。
    万が一ダメでも、スチールウールでの錆び取りでの処理は有効なのではと感じます。過度に施すのは精度が崩れるでしょうから避けたいところです。
    その後、メッキ処理、無理であれば樹脂塗布などをしておけば大丈夫なのでは?
    切削屑の影響が不安でしたら、フレシキブルなチューブ(電材で各種入手可)で覆う、ということになるでしょうか。
    部品での交換も可能なのではないでしょうか(ロッド+ベース、のアッセンブリ)
    以上あまり役立たない回答ですがお許しください。

  • ナショナルのインパクトドライバー

    プロ・玄人向けの電動工具、インパクトドライバー。新型やメーカー商品情報。マキタ、日立、ナショナル、比較の手助けに。

  • 初めまして、artisanさん、
    いつも木工の参考にさせていただいています。
    個人輸入を楽しんでいたあの頃がよかったですね。
    rei,LL-Bean,Tool Crib,懐かしいです。
    辞書を引きながら、為替レートに一喜一憂しながら
    オーダーしてました。
    なぜか、NiftyのDIYのフォーラムに
    個人輸入のコーナーがあって、
    名古屋の宮本さんも出入りしていたような気がします。
    現在はartisanのおっしゃるとおり、
    個人輸入は難しくなりました。
    代理店制度の締め付けか?
    その輸入方法ではなく、価格差のメリットがなくなったからです。
    Waterfoodのストーブ(これはアメリカでも取り扱い中止)
    Hasquevarnerのチェーンソーなど
    まだ内外価格差の大きな欲しいものが
    たくさんあるのですが、
    これらはアメリカの知人に購入依頼を
    して送ってもらってます。
    本当に便利なったのか、不便になったのか?

  • yamashowさんご訪問、コメントありがとうございます。
    同じような感慨を持たれていらっしゃるようで、ご同慶の至り、というところですね。
    現在のような状態が永劫続くとも思いませんが、得るものが大きければ失うものも同等分にあるのだな、と達観するしか無いのでしょうかね。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.