工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ミズナラの座卓・進捗

ミズナラ座卓の脚部

ミズナラ座卓の脚部

知人から、最近のBlog、仕事してるの?
との心配、いや冷やかしのメールが届く。
ボチボチでんなぁ、とお応えしていたが、この時季、木工に限らずだろうが、仕事がはかどってありがたい。

秋の深まりというのは、例年も同様にこうした急ぎ足だったのかな、と首をかしげたくなるほどにその移ろいは著しい。
身体の方がついていけないよ。
湿度は時によっては30%を切るほどまでの過乾燥。
少し身体を動かすだけで口の中が枯れる。呼吸器疾患を持つ者としては要注意の時期でもある。

さて、今は複数のものを並行的に進めているが、画像のものがその1つ。
うちの定番でもある座卓の脚部近影だ。


このBlogに良くコメントをいただくacanthogobiusさんのBlogでも取り上げられていたが、材種はご覧の通りミズナラ。
この樹種っていうのは、まず間違えることのない分かりやすい木だね。
環孔材で、髄心から外側に向けて放射状に見られる髄線が特徴的だしね。いわゆる虎斑と言われる細胞組織のことだが、楢材に属する樹種固有の特徴だ。
イギリスのオーク家具と言われるものはこの虎斑を表情に上手く活かしデザインされることが多く、それだけ高く評価されていると言えるわけだが、日本では必ずしもそうでもなく、むしろこの虎斑を見せないような、つまり虎斑を醸す柾目を嫌ってデザイン設計されることも多いと聞く。

しかしこれは如何なものか。acanthogobiusさんも指摘している通り、楢材というのは乾燥途上、反張しやすい(一般的にはこれを“狂う”と言うことが多いが、ボクはこうした用語は用いない)ために、楢材の製材は柾目、あるいは追い柾に挽くというのが基本。
したがって虎斑が全面に醸すのも必然であるわけだが、まぁ、これもデザイン的に上手く活かし、あるいは逃げて、楢ならではの特徴を活かしたいものだ。

因みに画像の材色がかなりピンク掛かってしまっているが、自然光を受け、そのまま撮影したものである(本日14時頃、晴れ)。レタッチはレベル補正とアンシャープのみ。
つまり現物の近似色。
これはかなり昔、地元での全国広葉樹組合優良材市、とかで落札した道産のミズナラ。
三寸板、四寸角などに製材したものからだ。

今はなかなかこれだけの良材の入手は困難かも知れないね。

ところで仕上げ塗装の話しだが、この座卓は拭漆で仕上げるが、楢と拭漆の相性はよい。
環孔材であり、また導管の大きさも漆によるテクスチャーを表出するのに具合がよい。
つまり、言うところの和風のイメージを醸しやすい木目ゆえだ。

最近ではオイルフィニッシュ流行で、何でもかんでもオイルフィニッシュだが、楢のような白木には本来、向いていないように思う。オイルフィニッシュとは元々濃色材向けの塗装手法だからね。

ただ北欧によく見られる、ブリーチングしてのソープ仕上げなどは独特の雰囲気があり、良いと思う。

先月、この静岡県内でも楢枯れの木が見つかったとの報道があった。
いよいよ太平洋側にまで浸食してこようと言うのか。
見つけ次第、切り倒すしかないのだろうね。クワバラ、クワバラ‥‥。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • artisanさんの助け舟を密かに期待していました。(笑)
    ありがとうございます。
    私の乏しいボキャブラリーでは、うまく表現できません
    でした。
    道産の楢には、なんとなくカチッとした印象を受けます。
    確かに漆にも良く合います。
    ところで、artisanさんはメープルはあまり使わないようですね。
    表情があまりに均一になり過ぎる所があるのでしょうか?

  • >私の乏しいボキャブラリーでは
    何を仰いますか。うちとは違い無駄口叩かないだけ、よほどまし(?)
    道産のミズナラと極東シベリア産などとの違いですが、記事中で述べた色の違いはただの見た目でしかありませんが、物理的特性の差も大きいですね。
    道産のものは細胞組織が堅牢なためか、破綻の恐れが無く、またシャキッと仕上がります。
    対し、シベリア産などのものはヘンに堅く、しかし仕上がりは毛羽だつ感じがあり、シャープに仕上がらず、二級品でしかないです。
    メープルは、確かにあまり使っていません。
    原木で挽いたのは3回ほど。
    そのうち1本は、カーリーメープルでして、今も大切に使っていますよ。
    >表情があまりに均一になり過ぎる
    しかしそれも個性ですし、Shakerのように端正な表情をねらうには良い選択であると思いますよ。

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