工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ミズナラの食卓

初夏の頃に納めた食卓。
1.800w 850d 710h

ミズナラですが、これは全て原木から製材管理された国産材です。
こんな物言い、ちょっと気が引けると言いますか、昔であれば当然のスペックしょうが、現在、国産材で良質なミズナラを用いるのはかなり難しい市況であるのが実態です。

ますます、この傾向は強まっていくでしょうから、何度も口酸っぱく言ってきましたが、若い木工家、家具職人は経営資金が許せる限り、お酒の消費を減らし😎、良い材を確保し、乾燥管理していくようにしたいものです。

さて、このミズナラのテーブル、実は同様の意匠のものがうちのショールームに展示してあり、これをご覧になった客が、ぜひ、このデザインで、という意向を示したのでした。
これも同じくミズナラ材でした。

ま、私の古くからのオリジナルで定番のデザインということです。
左右の板脚を1本の貫で固め、これを甲板に寄せ蟻で結合させるというシンプルな構成。

板脚

板脚ですが、台形にカットし、長手側からもハの字に転ばせています。
視覚的な安定感と、実際の安定性が確保されます。

またここがポイントですが、板脚の断面は、なだらかな円弧状に切削してあります。
これにより柔らかなラインを醸し、同時に板脚のボリューム感を出しています。

円弧状の切削加工

丸鋸傾斜盤で数度に分け、エッジをカットし、
その後、可能な限り、傾斜盤、ルーターなどを用い円弧状に成形していきますが、最後は平鉋ですね。
画像に黄色ラインで示した流れで、平鉋で斜め掛けで成形していきます。
左右2枚で、1日掛かり(苦笑)

鉋を使わず、サンダーで成形したいと考える人もおありかと思いますが、
なめらかな円弧状に成形するにはサンダーでは無理というものです。
台鉋ならではの切削規制があればこそ、任意の滑らかな形状が得られるのです。

サンダーでは、この切削規制の機能は備えていませんので、サンダーを掛ければ掛けるほど、凹凸のデコボコの高さの差異は強まる一方でしょう。

おっと、その前の工程がありました。
この板脚は、2枚の板で構成されています。
柾目の部位を木取り、この2枚を矧ぎ合わせ、1枚の板脚を構成します。

矧ぎの際、「雇い」として濃色材を用い(ここではローズウッド)、これを見付側、矧ぎ口にあえて見せるようにしています。
矧ぎ接着の増強、あるいは、矧ぎ位置の規制のための「雇い」ですが、同時に全体のアクセント、意匠をも意図したものです。

この柾目に木取るというのは、明確な意図があります。
この板脚は甲板の吸い付き、寄せ蟻の桟に結合されますので、可能な限り、反張を避けたいところだからです。

ま、その結果、画像にあるような、楢材特有の虎斑(トラフ)が見事に醸されています。
オレは楢材だぞ!と自己主張しているようで、私としては好感しているのですがね……、

床に接地する部位、最下部、中央部位に、エンゼル意匠を施します。
これは、床の設置を確かなものとするためです。

加え、このエンゼル意匠部位のエッジにやや大きめの角面を施しました。エンゼル意匠をあえて強調するためのものです。
面取りはルーチンで考えていてはいけませんね。意識的に施すことで、望む意匠をよりよく追求することができるものです。

次は貫のための開孔です。
板脚は傾斜させますので、この開孔はその角度のジグを造り、ハンドルーターで行います。
材の厚みは2寸板からの木取りで、仕上がり50mmを越えます。

ここに傾斜角を持たせたジグが挟まれますので、ビットの長さ、最長の50mmでも足らず、数度に分けての開孔、切削作業となりますね。

なお、ここで用いるビットの径が開口部分の隅Rになりますので、貫の枘の方の角も、このRに合わせ、加工します。

甲板

今回は中杢の板を中央に、左右に柾目を配した3枚矧ぎで構成。
国産の楢ですので、目も詰み、比較的おとなしい感じでできました。

画像は、ワークベンチのショルダーバイスに挟んでの圧締ですが、
ワークベンチを設備されていないところでは、こうした長い板の木口へのアプローチの作業の場合、どのようにされているのでしょうかね。

クランプで挟めば、同様の姿形で行うことは容易ですが、若い、これからの木工職人の方には、ぜひ高機能なワークベンチを自作されることを進言しておきましょう。

hr

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