工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

大雪、お見舞い申し上げます。

日本列島、大荒れ。寒冷地では吹雪いているとのニュース。
レーダーを見ると確かに典型的な冬型の荒れた雲の様子が伺える。
南は山口から、北海道まで北日本一帯が雪雲で覆い尽くされている。
当地には今年は雪を降らせてくれないのだろうか
今日は久々に青空で日中は日射しが強く射し込み、工房は温かかった。
朝晩の冷え込みは0度近くまで落ちるけれど。
庭には可憐な水仙も咲いている
日本列島は東西にも長いが、こうしてあらためて気象条件を見れば、日本海側、太平洋側では大違い。
表日本、裏日本という呼称は、いかにも差別的なニュアンスが伴うのでいやなものだけれど、明らかに風土の差異は大きい。
この風土の差異はそこで暮らす人々のエトス(心性)にも大きな影響をもたらすということは否定できないことだろう。
友人は言う。スタッフを雇用するんだったら、日本海側から東北出身の若者が良い、と。
その精神性、肉体的資質を出身地で評価しようというものだが、当たらずも遠からず、かもしれない。
厳しい自然に鍛えられた身体と精神に宿る力は信ずるに足るものと思いたい。
久々に晴れ上がったので、中断していた新たな仕事の木取りを始めた。
ある注文の家具の制作に入るのだが、1台のところ、材種とサイズ、他少し変えて2台を制作する。
これは1台だと、なかなか制作経費が抑えられないための処方。
残る1台を在庫させ、展示会用にとストックさせる。
ただ材種を変えるのは、制作費用の抑制には繋がりにくい。
これまで独立経営して20年、様々な材種を材木市で競り落とし、乾燥、管理してきたが、実はこのやり方には反省多とするところがある。
言うまでもない、様々な材種で様々な家具を制作できる環境にあるということの裏には、とても採算性を悪くして、その実態を見えなくしているという側面がある。
この世界、成功者のスタイルを見れば、共通していることとして単一の材種で制作するというのが重要な要件となっているということは知っておきたい。
明日も晴れるだろう

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  •  私は横浜生まれ横浜育ちなのですが、学生時代は6年ほど新潟で過ごしました。その後、就職で関東に戻った際、新潟ならば毎日曇天で雪や霰が降り、風が吹きすさぶ冬の時季に、日本海側から比べればうららかで脳天気な晴天が続く関東の陽気を再体験して、「罰が当たりそうだ、」と感じたことを思い出しました。「これだけ気候が違っていれば、ものの考え方や人間性に影響が出るのは当然だ、」としみじみ思ったものです。
     「成功者のスタイルを見れば、・・・」というお話しは、初めてお聞きした話ですが、なるほどそう言う要素も有るのかと納得させられました。ですが、作り手として経済的な成功を度外視すれば、色々な材を扱ってみたいと思うのが人情だと思います。上手に両立していく方法は無いものでしょうか?

  • 木工舎さん、丁寧なコメントありがとうございます。
    >「罰が当たりそうだ、」と感じた‥
    ハハハ、ボクたち、罰当たりですよね、全く。
    もちろんこれは単に気質を言い当てているだけで、人の1つの属性でしかありませんけれどね。
    日だまりで暮らす“脳天気”な人間にはラテン気質が好感を与えたり、固有の美質を持っていたりするでしょうから、多様な社会とは良いものです。(こんな風に、まとめちゃおうという悪いクセは、どんな風土を出自とするのだろう? 笑)
    >「成功者のスタイルを見れば‥」
    もちろん何事にも例外はあるもので、木工舎さんには“上手に両立”する魁となてもらいましょう。Do your Best !

  • 「単一の材種で制作する」場合artisanさんがどういう
    材種を選択するのか非常に興味があります。
    ブラックウォールナットでしょうか?

  • acanthogobiusさん自身としては何が良いとお考えでしょうね。
    難しい質問です。
    功利的に考えるとしても、これはなかなか難しい。
    ここ数年で材木市況は大きく変貌しています。これは国内市場だけではなく、国際的な需給関係の影響も大きく、先の予測を困難にしています。(北京五輪後、市況は少し動くでしょうね)
    さらには年々地球環境の保護という国際的な共通課題が木材の計画的な伐採をも困難にしてきているという要素も加わり、いよいよ見通しを難しくしていますからね。
    こうした市況の中で、安定的供給力のある材種は何であるのかを考えねばなりません。
    もちろんここに制作者の考えるデザイン、作風に合う材種を考えねばならないのは当然です。
    なお、材木屋は常に海外へと足を運び、日本の市場に受け入れられる材木を探しています。未開地ということでターゲットにされるのが南半球に自生している材種ですが、なかなかこれも難しいです。(加工性、美的価値など)
    マホガニー、チークと言った材種がワシントン条約などで入手困難になってきているように、ウォールナットだって、使いすぎれば枯渇していきかねませんしね。
    CLAROの現状はなかなか困難なようですし。
    こうしたところからも、如何に持続的に有効に材木を使っていくのかということは今のボクらの世代の使命ですね。
    全然質問の答えになっていませんでした。
    ウォールナットだけで継続的に制作できればありがたいのですがね。

  • artisanさんの答えはだいたい私が想像した通りです。
    簡単には決められないですよね。
    私は何でも使ってみたい方なので決められませんし、アマチュアの私は
    特に決める必要も今の所はありません。ただ、何でもかんでも集めて
    お金がかかってたいへんです。(笑)
    プロの方にとっては「使いたい材」と「使える材」が違って来る
    こともあるでしょうし、「成功者」になるためには犠牲になる物も
    あるでしょうね。毎日同じ材だと私は飽きてしまうかもしれません。

  • acanthogobiusさんにはお見通しでしたね。
    職業木工家にとっては、“表現行為の素材”としての材木という位置づけが基本にありますが、この素材が思うように手当てできないという現状は悩ましいものがあります。
    材木の種類、品質に過度に依拠しない、デザイン性の高度化などで高品質なものを追求していかねばならなくなったとも言えるのでしょう。
    それとともに何でもかんでも無垢というのではなく、欧米に見られるようなランバーコアの活用などで銘木を効率的に使うということも大切になってくるでしょう。

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