工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

滅入る、この寒さ(稀少材の破断)

もがれるように折損してしまった破断面


連日35℃を超える猛暑のこの時節。

前回のエントリの続きで、ベニアリングのためのCLAROウォールナット単板を作っていた時のこと。
ムラ取りした単板をプレナーに通そうとしたところ、バリバリッ、メシメシッ、と怖ろしい異音が。
プレナーから出てきた単板、先端部分、約40mmほどが消失しているではないか。
それは心臓が凍り付くほどの衝撃。

手持ちの虎の子、CLARO・バール杢単板からギリギリのところで木取りしたもので、ほとんどと言って余裕が無く、この1枚の単板の破損は寒気をもよおすほどの打撃。

うちのプレナーは求め得る国内最高水準のマシンと認識しているので、機械のせいでは無い。
問題はCLAROの木理の方。
CLAROのある特有の個所、例えば根っこに近い部分、あるいは今回のようなバール杢(瘤杢)、この板面に表れるのは、板目、柾目、コブ、時には木口に近いものまでが複雑多様に分布し、このことにより得も言われぬ豊かな表情を醸すわけなのだが、逆に一方、物理的特性としては脆弱な個所を含むことがある。

今回の破損、一部消失というのは、これを原因とする。

ただ、これが一定の厚みがあれば特段問題になることは無いのだが、今回はわずかに1分強の厚みとあれば、この脆弱さがモロに表れてしまったというところ。
また一定の厚みのベニアに練り上げれば、こうした意図せぬプレナーの“暴れ”は回避できる。
要するに今回の失敗はわずかに3mmほどの厚みであることの切削困難と、CLARO複雑木理であることの困難の二つが掛け合わさった結果だ。

結局最初の1枚は断念するとして、他の全ては機械削りは諦め、手鉋で削り上げることにした。
この猛暑の中でのバールを含む複雑木理を延々と削るのは楽な作業ではないがが、先のコメント氏にあった「大好きな作業」への達観を極めるべく勤しんだというところ(その結果は?まだまだ俗人だな)

手鉋シコシコムラ取りの図


さて、身も凍る話しがもう1つ。
ベニアリングのための芯をこしらえている時、外枠と中芯(ランバーコア材)を繋ぐ仮止めのためのエアタッカーが壊れてしまっていた。
エアのダダ漏れである。作業は中断。

このエアタッカー、恐らくここ数年使用していなかった。
大手メーカー製で信頼のおけるマシンであるはずのものが、数年間もほったらかしで機嫌を損ねたのか(メンテナンス不良とも言う)、ダメだった。

悪いことは連続して起きるものなのか。

やけっぱちからではないが、今日の気分といえば、Sting で 〈Shape of my Heart〉を。
映画「Leon」(リュック・ベッソン監督)の挿入歌

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=j3zuZL4sQOY[/youtube]


閑話休題
今朝、庭の一角でクマゼミの羽化があった。まだ1匹だけだが、今年も昨年のように次々と“湧いてくる”のだろうか。
昨年のBlogを見れば7月17日に記録があるので、今年は数日早いだけだ。
明日は満月。

クマゼミの羽化

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  • あーあ!、という感じですね。
    私だったら手鉋でも端が飛びそうです。
    その前に、私だったら削れないか(笑)

    このセミ、随分不安定な所で羽化を始めたようですが
    無事だったようで、良かったです。

    • 手鉋での削りですが、確かに単板ならではの困難は伴いますが、フツーに削る技能があればさほどではないはず。
      CLARO固有の特徴から言えば、確かに木理が錯綜した細胞配列になっているための困難さはありますが、一方でCLARO特有の粘り、緻密さもあり、削る楽しみも味わえるというものです。
      刃を良く研ぎ上げ、腰で削れば百戦危うからず、です。

      クマゼミ、言われてみれば確かにアクロバティックな姿態ですな。
      各地、放射線汚染の被害を受け、どのような生態なのか、気になるところですね。

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