工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

“手作り家具”と機械設備(番外編 その4)

超仕上鉋盤a

超仕上鉋盤という機械がある。

このシリーズの(その16)で簡単に取り上げた機種だが、今日はこの刃の交換を行ったついでに撮影したので、あらためてこの機械について少し詳しく記述してみたい。

“手作り家具”に機械の鉋かい?、と訝る向きもあるやも知れない。
その懸念を払拭することができるかどうかは読者に委ねるとして、手鉋、超仕上鉋盤、横型ベルトサンダーなどそれぞれに使いこなしてきた者として、この機械の特徴と使用するに当たっての留意点を述べていこう。

木工に従事する人は、使用経験の無い人でもその機構については知っているものと思う。
手鉋をひっくりかえしたような定盤の上に分厚いゴムのローラーが動力回転し、その間を被加工材が送材されていく、というものだ。

つまりは原理的には手鉋と同じような機構をしたところに動力の力を借りて、圧着されつつ押し通されるのであるから、その結果は手鉋と同様、一定の厚みを持った鉋屑が排出されるということになる。

普段ボクらが使う手鉋の刃口は1.8寸(スンパチと呼称する)というのが基本だろうと思うが、うちの“超仕上鉋盤”の場合、250mmほどもある。この種の機械での最大の刃幅がどの程度あるのかは詳しくは知らないが、600mmの幅を持つ“超仕上鉋盤”で削ってもらったこともあるが、それはそれは素晴らしい機械だった。


良く研がれた刃物で、適正に調整された“超仕上鉋盤”であれば、この600mmという幅の鉋屑が吐き出されるということになる。驚異的と言って間違いではないだろう。

幅広の鉋屑が出ると言うのは、これは大きなメリットがある。
生産性が高いということとともに、その幅以内であれば、いわゆる鉋枕が無いということであり、これはすこぶるありがたいということになる。

この機械を導入していないある木工家が訪ねてきて、この機械は欲しいね〜、とすぐにでも導入したいような口ぶりであったが、彼曰く「引き出しの側板には絶対だね‥‥」と。

これはつまり引き出しの側板は一般的にはサンディングすることなく、鉋の掛け放しで納めることが多く、そのためには鉋枕のない、しかも一定の厚みで削ることのできる“超仕上鉋盤”が望ましいということを意味している。
引き出しの側板というものは、組み終わり、仕込みの段階で削り合わせるということが一般的であるが、〔被せ〕(かぶせ)ではそれは困難だ。
一発で決めねばならない。
そこにこの“超仕上鉋盤”が威力を発揮する、ということになる。

無論、これはサンディングができない側板ならではの特殊な事例であるが、うちでは基本的には全ての部材を一端この“超仕上鉋盤”を通すことにしている。
框組みなどでもとりあえず通しておいて、組み終わった後の手鉋による目違い払いをしながらの仕上げで、完璧な平滑性と切削肌を産み出すようにしている。

また、例えば幅広の大きな鏡板などの部材は、プレナーを通した後、加工前に、まず“超仕上鉋盤”を通すと言うこともある。
これは加工過程で反ってしまい、鉋掛けが困難になる前に、プレナーのナイフマークを取り去る、という目的でのことだ。

さらにまた、数枚を合わせて大きな幅の1枚の板に矧ぐような時にも、まず矧ぐ前に一通り“超仕上鉋盤”を通す。
これは矧ぎ上がって後の鉋掛けに少しでも助けになるようにとのことだ。

一般にプレナーを通された部材は様々な加工が施され、組み上げる前に水引きをして一通り鉋掛けをするのだが、この工程の一部を“超仕上鉋盤”に委ねることで、手鉋作業の領域を助ける、あるいはより精度の高い鉋切削を求めると言うことができるのだ。
つまり手鉋であれば、プレナー仕上げのものは、いわゆる「中仕込」から「仕上げ」と最低でも2丁の鉋を必要とするだろうが、“超仕上鉋盤”を通したものであれば「仕上げ」鉋1丁で事済むこととなるだろう。

こうして、無垢材を扱う工房では、あまりにも当たり前のように設備され活用されている“超仕上鉋盤”であるが、恐らくはこの機械が設置されていないようなところがあるとするならば、それはあまりにも家具制作の現代性からかけ離れたものと言わねばなるまい。
一方まさかプレナーを通し、様々な加工を経た後、鉋掛けもせずに、いきなりサンディングというプロセスもあり得なくは無いが、それは無垢材での家具制作と言うには、相当の勇気が必要となりはしないか。

超仕上鉋盤の刃さてところで、画像は刃物の交換をしているところだが、これが簡単なようでいて、なかなか容易ではない。

まず、刃のブロックに取り付ける前に、本刃と裏刃を結合させるのだが、手鉋と同様に、ほんの少しだけ裏刃を引っ込めるのだが、このさじ加減がビミョウ。
あまり開け過ぎると、逆目が止まらない。
逆に詰めすぎると、今度は切削抵抗が大きくなりすぎ、適正な送りができなくなる。
この辺りも手鉋と同じ事だ。

ただやはり、その刃の幅、送材速度は手鉋とは大きく異なるので、したがってその間隙は0.1〜0.2mmほどか。(これはうちの機械の特性←機種差はある)

次にブロックに組み込むのだが、ここでも刃の出の調整は難しい。
手鉋のように木槌で調整という訳にはいかない。
何度も何度も試し削りをしながら最良のポイントを見つけなばならない。
うちの場合、この作業に1時間以上の時間を要することもあるので大変である。

導入仕立ての頃は、排出される大きな幅の鉋屑がもったいなくて、何か活用できないかと考えたこともあるほどだが、今ではそうした牧歌的なことには思い至らず、薪ストーブの良い焚き付けにと消えていく。

hr

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  • あけましておめでとうございます。
    初めてコメントいたします。
    均整の採れた考察は私を始め、読み手に好印象だと…。
    私も超仕上げ持ってますが、参考になります。
    これからも楽しく読ませて頂きます。
    では。

  • まきまきさん、コメント嬉しいですね。
    2年近くも前の記事だけに、よりインパクトの強いコメントですよ。
    (そうか、こんな記事も書いていたんだ、とあらためて気付かされた思いです。 苦笑)
    >読み手に好印象だと…。
    ワォ こんなこと言われた例しがないので面映ゆいですね。
    (プリントアウトしてMacモニター袖に貼り付けておきましょうか)
    超仕上鉋盤はとてもアナログでシンプルな機械ですが、無垢の仕事には欠かせません。
    他国では製造されていない日本が世界に誇る機械の1つです。
    刃のセッティングがもう少し高精度に制御できれば良いのですがね。
    今後もどうかよろしく !!

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