工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

“手作り家具”と機械設備(その13)

機械設備と電動工具の差異および選択基準(その2)

前回に続いて〈木取り〉の続き

帯ノコ(バンドソー)は丸鋸昇降盤では過負荷な厚板、あるいは曲面成形を目的とした木取りにその能力を発揮するので、そうした家具を制作する工房では整備されているものと思われる。
ここでは帯ノコの解説はしないが、基本は適切な刃の選択と、セリーの調整に全てが凝縮されるということだけ触れておこう。

一方これに対し、電動工具ではジグソーというものがある。
これも手軽に荒木取りに使える工具だ。
切削能力は厚みで50mmほどが限界か。
BOSCHの専用刃はなかなか切れ味も良いのでそれなりに木取りにも使えると思われるが、ただやはり機構上の制約から切削スピードはとても遅く、また直線性においてこのジグソーに求めるのは精度の点において無理があるだろう。
やはり曲面切削に特化させた使い方になる。
なお、この種の切削ではバリが大きく出てしまうので、機種によってはバリ押さえのアタッチメントがあると思うので、これを取り付けての作業を心掛けるべきだろう。


さて次は板の平滑面を出すための工程について

機械では「手押し鉋盤」がこれを担ってくれる。
その能力は一般に定盤の広さということになるが、工房スタイルの木工所ではどの程度のものが一般的なのであろうか。うちは305mmしかないが、ほぼ同等程度ではなかろうか。
これを越える幅のものはどのように平面を出すのか。
これはここで解説できるほどに簡単なものではない。
何故ならば製材、乾燥された板というものは固有の形状を持っていて、したがってその方法は一様ではないからだ。
ただ基本的なことについては言えることもあるので、そうした限定的なものとして解説してみよう。

まずその板がどのように変形しているかを良く判断する。
その変形に応じて、凸部が多い面(一般に木裏)の凸部を削り、基準面を出していくことになるが、この場合定盤に板の幅全てが納まれば問題ないが、これをはみ出すことになれば、フェンスを外し、これを越えての送材となるかもしれない。
また手押し鉋盤の能力ぎりぎりまで使い、削り残りを電動プレナー、および手鉋で補うということも良くあること。
方法としてはここで解説するまでもなく、手押し鉋盤で削りだした板面を基準面として残りをこれに合わせればよいだけだ。
こうした手押し鉋盤の応用でかなりの程度に平滑面を出すことも可能だが、出来ない場合も多いもの。

これはもう機械ではなく、電動プレナーという工具で切削するしかない。
その基本的な考え方だけ述べれば、
木口側両端に同じ形状、寸法の木の定規を置き、その2本の定規最上部延長線上から、この板のおおよそのネジレを目で確認する。
これを目安として、直定規を使いながら、高いところから徐々に削っていけばよいだろう。

一般には繊維と直交する、いわゆる横削りを活用することで、さほど困難な作業ではなく、平滑面が出せるものである。
電動プレナーの刃の出を徐々に少なくしながら削っていくのが基本だが、最後に長台鉋(手鉋)で横削り、縦削りを縦横に使いこなすことで、かなり品質の高い平滑面が表れるだろう。
(一般にはこの後、自動一面鉋盤を使うので、あまりきっちりと削らねばならないというものでもない)

注意を要するのは全体に目配せしつつ、均等に削ること(初心者はこれができないもの)。一応の目安としては4つの角の厚みを均等に維持することで、歩留まりを最大にすることができるだろう。

被加工材が自動一面鉋盤の能力を超える幅のものであれば、両面とも同じ方法で削らねばならないということになるが、片面が出せたなら毛引きでぐるりと厚み決めをして、残る面を同様の方法で削ることになる。

これで一応〈木取り〉に関するところを終わりとしたい。

hr

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  • 久しぶりにお邪魔致します。
    正にその木取りのためにFESTOOLのガイド付き丸ノコと
    ジグソーを導入したばかりなので木取り前編?と併せ
    とても興味深く読ませていただきました。
    幅広の基準面を出すために
    電気かんなを使って徐々に・・・というくだりで
    あぁ!その手があったか!と膝をうちました。
    滅多に幅広の材を扱わないせいもありますが
    全くもって不明でした(恥)。勉強になります。

  • AUDINさん、お久しぶりです。
    やや難渋とも思える解説にお付き合いいただき感謝でありまする。
    木工機械の性能には限界があることは言うまでもありませんので、目的に叶う手法を編み出して活用するするということになりますね。
    >FESTOOLのガイド付き丸ノコ
    すばらしいですね。(うらやましい)

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