工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

“手作り家具”と機械設備(その16)

機械設備と電動工具の差異および選択基準(その5)

これまで木工加工における様々な機械の活用とそれらの機能を一部代替する電動工具についての特性と、差異を確認し、また総じてそれらの選択基準についても考えてきたが、さらにいくつかのジャンルが残っていた。

仕上げ工程における機械と電動工具についてである。

加工を終えた家具の部材は組み上げる前に水引きをし、一鉋(ひとかんな)を掛ける。
うちではまずは一通り「超仕上鉋盤」(スーパーサフェーサー)を通し、ナイフマークを削り取る。
その後「超仕上鉋盤」では困難な逆目の切削などを手鉋で行う。

残念ながらこれらの工程を担う電動工具は存在しないのではないだろうか。
「超仕上鉋盤」か、手鉋か、ということになるだろう。
なお、この鉋削りの工程を省略するというところもあるというので、驚いたことがあるが、高品質な木工家具を作ろうとする者としては、かなり強い違和感のある考え方であることを記しておきたい。

うちでも国内では最高の切削精度を有するという定評の高いプレナーを使用しているが、しかしあくまでもプレナーはプレナーでしかない。


如何に切削精度が高いとはいえ、その機構上ナイフマークが残ってしまうということにおいては、他の類種のプレナーと変わるものではなく、これをいきなりサンディング工程へと移行させるほどには有機素材としての木材は甘くはないと言うことを知っておきたい。

この辺りの考え方というものは確かに木材加工を巡る日本固有の土壌に育まれたものであるのかも知れないし、やや有機自然素材への畏敬の念というようなものに傾斜した思考であるかもしれない。

しかしまた、この仕上げ削りというものが、木工家による家具制作というものの必須の要件であろうところの“丁寧な作り”というものの主要なある部分を占めていることも確かなところではあるだろう。

言い換えれば木工における作家性という生き様に深く関わることでもあるのではないか。

これは、如何に社会が発展し、ハイパーな資本主義の生産様式になった今日においても、なお決してアナクロニズムと蔑まれるような罪なことではないのだから。

さて仕上げ削りが終われば、次はサンディングという工程になるが、このジャンルのことについては、既に10回にわたり「木工家具制作におけるサンディング」というカテゴリーで語ってきたので、ここでは省略させていただこう。

結論的に1点だけ繰り返しを許していただくなら、ポータブルサンダーは研削性能においてあまりにも制約が大きく、ワイドベルトサンダー、横型ベルトサンダー(3点ベルトサンダー)などの機械への正しい認識をすべきだろう。

とりえず以上で「機械設備と電動工具の差異および選択基準」については終わりにしたいと思う。
これまで語ってきた主要な関心事をあらためて確認すれば、機械導入へのためらいというものが、必ずしもそれらの機械への正しい認識に基づいたものではないかもしれないという問いから一歩抜け出て、新たなステージへと向かう道筋を切り開いていくことである。

hr

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