工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

マホガニー 三題

矧ぎ口

TOP画像はマホガニーで甲板を作る工程、矧ぎのための準備だ。
デスクの甲板なので700mmほどの幅を穫るが、今回はぜいたくに2枚矧ぎでの構成。

この矧ぎ口の精度を確認しているところだ。
矧ぎは、その接合部の密着度がとても大切であることは言うまでも無いが、この加工プロセスには大きく2つの方法がある。

ジョインター(手押し鉋盤)で作る(削る)方法、そして手鉋(長台鉋)で作る方法。

それぞれきちんと使いこなせるようにしたい。
要諦は、全体の長さにもよるが、中スキ(隙)に削り合わせるということになるが、長台鉋を適切に使いこなせれば、難しいことでは無い。
訓練校の受講生でも簡単にやってしまうだろう。

ただやはり鉋の運行はスムースに、しっかりと制御できるよう、安定的な操作が求められる。
つまり矩(カネ)が崩れないように、かつビミョウな中スキに仕上げる技能が必要というわけだ。

さて、そこでTopの画像なのだが、何をしているかと言うと、しっかりと良い矧ぎ口が獲れているかの確認だ。

2枚の甲板材料を合わせ、この中央部分をハタガネで軽く締め合わせる。
そして、木口部分、2枚の接合部を両方の手でズラして見る。
これがずらせるほどであれば、失格。甘い。
堅く接合し、とてもずらせるようで無ければ合格。
ただそれだけのことである。

っと、矧ぎ口を穫る方法。
2つめの「ジョインター(手押し鉋盤)で作る」方法だが、前テーブルを微妙に下げ、前後を微妙にハの字型に設定すればできる。
ただこれは、ジョインターの機種にもより、その方法は一律では無いかもしれない。

大きな木工所では、複数のジョインター(手押し鉋盤)を設置していて、1台は矧ぎ口専用にセットしているところもあるだろう。
うちは1台しかないので、その度に再設定するのだが、なかなか首尾良く行かない場合もあり、悩ましいプロセスではある。
良質な中スキ加工ポイントは、+ – 数mmというほどに微妙だからね。

さて、この2つの方法を、どのように使い分けるかだが、
矧ぎ枚数が多い場合はもちろん、いちいち長台鉋で穫っているようでは仕事にならない、ということであり、ジョインターによる矧ぎ口造りはマスターしておきた技法だ。

マホガニー削りのフィーリング

同じく甲板だが、久々のマホガニー削りで、そのフィーリングにより、一時期、かなりのボリュームでこの材種を使っていた頃にバックラッシュしてしまった。
さらさらと心地よく削り上げることができる。

ご覧のように、素直な板目なのだが、板目は順目で削れば何のことは無いが、柾目はなかなかやっかい。
その多くがリボン杢を呈し、両逆目になりやすいからだ。

しかし基本的な鉋使いができれば、他の材種同様、美しく仕上げることができる。
つまり、鉋の仕込みと研ぎの問題である。しっかりと逆目が止まるまでの仕込みと研ぎが為されれば完璧な仕上げができる。

なお、画像手前の白く変化している部分だが、マホガニー固有の細胞膜から表れるもので、特段、加工、あるいは塗装仕上げにおいて阻害するものでは無い。

ブックマッチのマホガニー


説明無用。
34mmの荒木を2枚に割り、14mm厚の鏡板を作る。
板目なので、割ることで反りが出るのは覚悟し、12mm(×2枚)ほどにしかならないと思われたが、ほとんど反りは出ず、高い歩留まりで仕上がった。
こんなつまらないことまで嬉しくなるのが、家具職人というわけだね。

大変暑い天候が続いているが、こうした木の仕事に関しては、梅雨の時期よりはるかに仕事はしやすい。湿度は50%を超えることは無いからだね。
問題はしたたりおちる額からの汗が、木の表面を濡らすことぐらいか。

この過酷な時季、スイカと梅干しで乗り切っていこう。

hr

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  • ありがとうございます。
    理屈は分かっているつもりなのですが。
    頑張ります。

    • acanthogobiusさん、いきなりの感謝の言葉で恐縮しますが、
      どの部分に対してでしょうか ?
      ジョインターでの技法かな?

      職業的、日常的に木工に向かっている者と、週末に限定されての木工とでは
      自ずから習熟の環境ベースが異なりますので、一概には言えませんが、
      マチュアならではの、時間を気にせずに集中できるという優位性もありますね。

      acanthogobiusさんは高度な木工をされていますし、
      常に努力を怠らない構えは立派なものです。

  • 時間を見つけて、集中的に板矧ぎの習得を図りたいと思っています。

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