マホガニーのデスク
構成としてはシンプルな平机です。
以前、〈エレガント小袖デスク〉というものを制作していますが、このデザインのバリエーションになります。
小袖部分を無くし、大小3杯の抽斗を横1列に並べたものです。
各部位における面処理なども意匠を配慮しつつ丁寧に削りだし、エレガントな装いを凝らしたところは小袖デスクと同様。
また、稀少材、ホンジョラスマホガニーで制作することで、優美さを引きだしたのも同じです。
750mmの奥行きですが、2枚矧ぎという、この材種にしてはかなり贅沢な木取りで納められたのも、嬉しいことです。
今回の制作依頼は初めてのお客様でしたが、〈エレガント小袖デスク〉に魅入られ、お子たちが学齢期になるのを機会に、同じようなデザイン、材種で制作したいとの意向を示され、デザイン、構成などにつき、何度ものやり取りを経て、完成させたものです。
学齢に達する子供さんのためのデスクですが、こうした小さな子のためのデスクとして、いわゆる学童机というものではなく、最初から大人向けの本格的なものを与える、という親は少なく無く、何度もこうしたケースがありました。
体格的に発達途上の子へのデスクですので、このままでは使いづらいところも少なく無いでしょうが、椅子の高さなどの調整で、かなりの部分は補正できます。
市場にあふれかえる、いわゆる学童机というものの、過飾に過ぎ、荒っぽい使い方をすれば、たちまちフラッシュ構造の脆弱なところが露わになるようなものではなく、本来の真っ当な木の机を与えたい、との親の思いは良く理解できます。
しかも、有り体のものではなく、親の審美眼に適ったものを吟味し特別に誂えるというのは、消費社会の現代にあってとても豊かな発想法だろうと思います。
依頼されたのは聖職者の若いお父様でしたが、この決断には相応の勇気も求められるものだったろうと思います。
こうした親に恵まれた子は幸せです。
今回はマホガニーという稀少材で制作しましたので、それなりの制作費用になりましたが、ミズナラやカバ材などで作れば、市場のフラッシュ構造のものとさほど大きく乖離した価格帯になるわけでも無いので、よくよく考えられて選択した方が良いでしょうね。
かくいう私も、以前はスチールデスクを使用していたのでしたが、この度の移転、工房のRenewalに合わせ、無垢材の大きなデスクを設えたのでした。
これまでの紺屋の白袴からの脱皮だったというわけですが、やはり制作者が自分で使うことで、その良さも、問題点も、よりビビットに判るというものです。
■ 参照:以前制作した〈マホガニーの小袖エレガントデスク〉