工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

芹沢銈介美術館・企画展〈小さきものへのまなざし〉

121228a芹沢銈介美術館から、次の企画についての案内が来ていた。
〈小さきものへのまなざし〉と題された、芹沢の小さなコレクションを展覧しようという企み。

燐票、書票、人形、小布、などとあるのだが、この「燐票」、「書票」というのは、恥ずかしながら分からなかった。

燐票とはマッチ箱のラベルであり、書票とは蔵書に貼るための所蔵者の名入りラベルのことだそうだ。
しかし、マッチ箱といっても、若い人には馴染みが無いものになってしまっている。
昭和は遠くになりにけり、である。

70年代の頃の話になるが、静岡市内の、とある喫茶店のマッチが印象に残っている。

ラベルも印象的なデザインであったが、マッチ棒先端の燐が紫色をしていて、着火すると、炎もまた紫に輝き、その妖しさに見とれたものだった

この店はその後、場所を変え営業を続けていて訪ねたことがあったが、雰囲気がかなり変わってしまったと言うこともあり、通うということにはならなかった。
たかがマッチの箱につられて足を運ぶ、などといったことなどは、今のタバコ規制が当たり前のカフェ文化全盛の時代では考えもよらないだろう。

緑のセイレーンが、シアトルから来たカフェの客を引くアイコンであるとすれば、往時はマッチ箱、マッチ棒が客を引いたのだった。

121228b芹沢銈介の愛らしくも力強いデザインの燐票もまた、カフェでは競って制作依頼しただろうことも容易に想像できるし、客もまた、この燐票目当てに店のドアを開け、紫煙をくゆらしたに違いない。

書票については、書にそれほどの思い入れがあるわけでもないので作ることもしてこなかった。
ゼネコン社員だった親父は、ボクなどよりよほど読書家で蔵書印を持っていたが、所有欲がさほどあるわけでも無いボクは、作っていない。

しかし、古書の裏付けに見掛けることのある書票は、書に込めたオーナーの思い入れ、小さきものへの慈しみを感じさせ、ハッとさせられることがある。

そんな思いを掻き立ててくれそうな本展には、ぜひ足を運んで見たい。

【シリーズ・芹沢銈介の作品と収集Ⅲ 小さきものへのまなざし

■会期:2013年1月4日(金)~ 5月12日(日)
■◎第1部 芹沢銈介の燐票と書票
 ◎第2部 芹沢銈介の収集品より 人形と小布

■詳細情報 静岡市立芹沢銈介美術館・公式サイト

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