工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

行商道具屋さんと当世風刃物

新潟三条・平出商店の大きなバンがやってきた。
昔は毎年のように立ち寄ってもらっていたが、このところ断ることも多く、今回は数年ぶり。
ボクは新たに購入すべき道具も特に無いしなぁ、しかし何か買って上げないと……、などと弱気虫が出たり引っ込んだり。
2月ほど前にも小さな角面鉋(ダボ式ミニ角面鉋)含め、数丁送らせたばっかりだったしね。
でも結果的には平出さんとしては十分に営業になったと思うよ。
うちの見習いも5、6丁の鉋を買ったようだし、近くの大工、家具職人にも声を掛けて集まってもらった。
さらにまた近隣の工房にも立ち寄るように取り次ぎさせてもらったりと、まずまず良い商いになったはず。
ボクが買ったのは鉋が1台だけ。
8分の南京鉋だが、裏刃が付いたタイプのもの。
この裏刃付きというのは以前は平出さんは扱っていなかったものだが、数年前から作らせているとのこと。
南京ヵンナこの裏刃付きの南京鉋は「秋田木工」の職人が使っていることは見知っていたし、刃物屋に作らせれば作ってくれるものだが、あえて発注するほどでもなかったので所有していなかったもの。
良い鋼のもので、刃口をポイントにタイトに台を仕込めば裏刃がなくともかなりの水準で逆目は止まる。
ま、でも話の種に(?)1本ぐらい持っていても良いだろうと判断して購入。
次に取り出したのが替え刃方式の南京鉋だった。
これには少し驚いたね。
平出さんからは確たる仕様は示されなかったが、カーバイドチップのような替え刃の付いた南京鉋だった。
試しに削らせていただいたが、フィーリングは悪くなかった。
唐木を多く扱う職人には良いかも知れないね。
こうした伝統的道具の世界も、新たな鋼(はがね)開発とあいまって、進化(退行と隣り合わせでもあるが)しつつあることも確か。
事実、ノコの目立てなどの技術を持つ道具職人も年々その姿が消えつつある現状を省みたとき、替え刃式のノコが無くては困ることも確かなのだから。
しかし、だからこそ地域における道具周辺の技術体系、市場流通の環境が劣化してしまうということにも繋がっていることについては自覚的でなくてはならないだろう。
卵が先か、鶏が先か、という話ではないが、伝統的工法での加工を基本とするぼくたちにとっては無関心ではいられない問題だろう。
そうした視点からあらためて考えてみれば、裏刃付きの南京鉋も職人の道具の仕立て技法の劣化に繋がってしまうというリスクを孕んでいるということになるのかな?(苦笑)。
*画像は上の黒光りしているのが通常の南京鉋(1.4寸)、
 下が今回購入した裏刃付き南京鉋(8分)
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  • 十和田市に在住する61歳の男性です。妻と2人で地域を回り刃物、日用雑貨などの行商をしたいと思っています。全般的なご指導おねがいします。

  • 太田 實さま、コメントありがとうございます。
    >刃物、日用雑貨などの行商を
    というお話しですが、
    はなはだ申し訳ありませんが「全般的なご指導」ができるほどに
    有用なものを持ちあわせてはいません。
    ただより詳しいお求めの内容をお示しいただければ助力できるかもしれませんので、
    メール、お電話などでご連絡ください。

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