工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

かつを節生産地、焼津での鉋掛け

海
昨日2年前に納品した書棚の抽斗がキツくなったので見てもらいたいという電話が入り、今朝1番で隣接した焼津市の海辺に近いカットサロンに出向き補修作業をしてきた。
ブラックウォールナットのオープン棚に2杯の抽斗が付いたもの。
客の待合いコーナーに置いたものであったが、確かに1杯は固く、片側は引きだすことが困難なほどのキツさだった。
2台の鉋で15分ほどで直したが、もうこうしたことは起きないだろうと思う。
若い女性オーナーが物珍しげに作業を見ていて言った一言。
「かつを節みたいだね !…、」ハハハ全くその通り。ボクが子供の頃はね、この鉋と同じものを箱の上に置いて、一生懸命削ったものです。削り立てを食するなんて、贅沢だったんだよね…、とボク。
無垢の抽斗というものは納めてから季節を1巡しなければその置かれた環境に合わせることは難しい。
今回は2年経過していたので、ほぼ膨らむだけ膨らんでいたと考えられる。この時点でしっかり補修しておけばまず問題ないだろう。
木は時間経過とともに置かれた環境にもよりその推移は様々であろうが、安定期に入った後、徐々に徐々に痩せていく。
今回はその安定期に入ったと見て良いだろう。
余談だが我々家具工房から家具を買い求めるという選択が賢明だということの1つに、やはり補修は制作者が手がけるということが挙げられるだろう。
一般の家具屋であれば通常は店舗の従業員が行う。
大抵は満足に切れもしない鉋で無理やり直してしまうことが多いだろうと思う。
制作者自らが手がければ納品時と同等の水準で整備されるのでカスタマーサービスとしては最高度のものであろうと思う。
さてしかし海辺という環境はやはり湿潤な風が入り込み、かなり特異な環境であるのかもしれない。
この書棚の床に近い部分はかなりカビも付着していたが、これも湿潤なことを示しているのか(あるいは床の水を使った清掃の影響もあるのかもしれない)。
別途店舗で使うこぶりのキュリオケースの製作も頼まれたので、この納品の際に書棚の方も塗装しなおしてやることにしようと思う。
一汗かいて、挨拶を済ませ、近くの海岸に出れば幸いなことに秋空の下駿河湾をはさみ伊豆半島まで望むことができ、しばし海を眺めていた。いつのまにか爽やかな海風に汗も吹き飛んでいた。
比較的海から近いところに居住しているとはいえ、ぼんやり海を眺めるなどと言う風流なたしなみは無い。
しかしあらためてそうした時間の贅沢さというものを感じた。
画像は左から、駿河湾をはさんで大崩海岸、静岡市、右端に日本平。富士は眺望できたが、この小さなサイズの画像ではそれとやっと確認できる程でしかないね。

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  • >「かつを節みたいだね!」ハハハ全くその通り。ボクが子供の頃はね、この鉋と同じものを箱の上に置いて、一生懸命削ったものです。
    そういえば、うちにもあったねえ。なつかしい。
    >比較的海から近いところに居住しているとはいえ、ぼんやり海を眺めるなどと言う風流なたしなみは無い。しかしあらためてそうした時間の贅沢さというものを感じた。
    いいねえ、まさしく《時間の贅沢さ》は、金では買えないからね。
    大崩から静岡市、そして雲の上に顔をだした黒富士を、これまたなつかしく眺めました。
    おっと、写真について、辛口批評を一言:
    前景を入れて奥行きを出そうとしたのはいいけれど、右側の掲示板に注意を拡散され、なんだか「現場写真」みたいだ。
    ここは、思い切って海の中に入り、お尻が濡れるかもしれないけれど、しゃがみこんで海を大きく取り込み、下から煽ったら、もっと迫力のある写真になったなあ。

  • ご指摘の通り、下手な写真ですなぁ。
    もっと力を入れた撮影が望まれます (^_^;

  • きょうは、すこし違った角度からコメントしてみます。
    《焼津鰹節》が、地域団体商標として、本年10月27日に
    特許庁の審査をパスして、登録査定されました。
    http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/hiroba/chidan_touroku_satei.htm
    「地域団体商標」というのは、本年4月1日から施行された
    もので、地域にちなむ商品や役務を扱う事業者からなる団体
    に、要件を満たせば商標権が与えられるものです。
    静岡県関係では、ほかに《駿河湾桜えび》と《由比桜えび》
    が、今回、地域団体商標として登録査定されました。
    すでに出願されているかも知れませんが、《静岡家具》など
    も周知性があるので、登録査定される可能性があります。
    そのうち、《島田木工品》も、登録されるやも……。地域団体商標制度の導入趣旨は、地域の活性化・地域産業の競争力
    強化を図ることにあります。
    ちなみに、滋賀県では、《雄琴温泉》ていうのが登録査定
    されました。出願人は、雄琴温泉旅館協同組合。指定役務は、「宿泊施設の提供」だろうか。

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