工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

CLARO天板鉋掛けの妙

CLARO鉋掛け
台風通過中ですね。皆さまのところでは被害がありませんように \(__ )
こんな湿潤な環境なのに、天板削ってるんです。
展示会まで時間があまり無い。削っているのは クラロウォールナットという米国材。この樹種はとても安定していて比較的環境から影響を受けにくい。
荒木で幅が1,250mm(この原木はつまりは太さが1.3mを越えるものだったということだよね)、長さ1,500mmのもので厚みは60mm。これをポータブル電動鉋→手鉋で平滑性を出し、仕上げていく。1,250mmという幅であるにもかかわらず、歩留まりは良く50mm以上には仕上がってくれた。
この地域では900mm幅までのものであれば削ってもらえるプレナー屋がある。(バーチカルではなく普通の自動一面鉋盤)
この範囲内であれば、片面の基準面を出し(平滑性を出す)、持ち込めば綺麗に削って貰える。後は手鉋で仕上げればよい。
しかしこれを越えるとなると両面ともえっちらおっちら、定規で平滑性を精査しながらポータブル電動鉋と手鉋で基準面と反対側での厚み決めをするしかない。
でも何故かあまり苦ではない。にやけた顔をしながらパワフルに削り作業に専念する。


以前須田賢司氏のお話を伺ったことがあったが、彼の祖父、父親の時代は全て手鉋で、6分板(4分だったかな)を1日で背丈の高さほどまでに積み上げていたという。(ウム、何枚になるかな ? )
大きさは1.5×2尺ほどのものだろうか。
信じられないかも知れないが、それがちょっと前までの木工というもののありふれた姿だったのだろう。
今では幅が1m越えるものもバーチカルプレナーとかいう機械でイッキに仕上げてしまうというスタイルが当たり前になってきているようだ。
中には基準面も出さずにいきなりプレナーに放り込む輩もいるというから驚くが、ただ厚みを一定に削れればよいと言うものでもあるまい。プロペラになってしまう。
機械の能力と、これに使われてしまっている人間の思考と‥、
今回も幅を少し落とせば、このバーチカル・・を設備している工場に持ち込み削ってもらっても良いだろう。しかしあのバーチカル・・の削りというものは木の繊維をずたずたにしてしまうので、結局あらためて手で削り直さねばならないという羽目に陥ることも多いと聞く。
しかし彼らはその仕上げ段階を手で削るなどというまどろっこしいことはしない。
バーチカル・・で削った板はそのまま今度はワイドサンダーという奴でサンディングして終わりだ。手鉋など関与する暇など無い。
これはこれで1つの高い生産性を確保するための現代的手法だ。
しかし待って欲しい。オイルフィニッシュ仕上げ、あるいは拭漆仕上げなどを伴う高品質な木工には残念ながら不向きと言わねばならないだろう。
表面の仕上げ精度に関わることであるが、鉋で削ったものとサンディングで仕上げたものでは自ずからその表面の仕上げ精度はかなり異なる。サンディングで削った表面はいかに番手を追って仕上げていっても荒れているので、オイルフィニッシュ、拭漆には不向きだ。
したがってボクらは人間プレナーに変身し、良質な表面を出していく。
須田さんの祖父の時代のように最初の段階から手鉋に依るしかなかった頃とは異なり、ポータブル電動鉋が使えるだけでもこれはすごくありがたいと思いたい。
ところでこの記事をご覧いただいている木工関係者に1つ教えていただきたいことがある。
電動鉋のことだが、裏刃がしっかりと効いて、逆目切削に強い電動鉋の機種があれば教えていただけないだろうか。
ボクはこうした規格外の天板削りの時にしか電動鉋を使うことがないので、あまり詳しくない。
現在はマキタのありふれた110mmの替え刃(超硬刃)の電動鉋を使っているのだが、クラロウォールナットのように杢が絡む樹種ではその部分が大きく欠損してしまう。
海外の機種を含めて、裏刃のセッティングがシビヤに出来るものがないのだろうかね。

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