工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

『サヨナラ民芸。こんにちは民藝』(続)

〈承前〉
順序が逆になってしまったが、『民芸 』(あたらしい教科書 11)は小型の本ながら、サブタイトルの通り確かに「教科書的」構成の書で、「民芸」を概括的に捉えるものとして好書かもしれない。
そうした性格の編集のためか、柳宗悦の工芸思想へと深く分け入るというものではない。
民芸 (あたらしい教科書 11)むしろ特徴とされるのが「新しい民芸」という項目。
プロダクト製品を含む、現代の「民芸」をBEAMSバイヤーらの「眼」で見いだそうとするものとなっており、これに大きく割かれている。
いわゆる従来からの民芸ファンからはお叱りを受けそうなものもあえて取り上げるという大胆な企画ではあるものの、若き監修者(濱田琢司氏)ならではの切り口と言えるだろう。
この書もたまたま汐留パナソニックミュージアムの関連書物コーナーで見付けたものだったが(「バーナード・リーチ展」の時だったと記憶する)、「民芸」の現代的風景を見ることができる。
先に挙げた「サヨナラ民芸。こんにちは民藝」の対談1を読むことで、この監修者・濱田琢司氏という人の生の声を聞くことができ、よりこの書の定位置がはっきりしてくる。

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『サヨナラ民芸。こんにちは民藝』

ここに「民藝」というものをあらためて考えさせてくれるる3冊の本がある。
「民芸」(新しい教科書シリーズ)監修:濱田琢司
「近代工芸運動とデザイン史」(デザイン史フォーラム編:藤田治彦責任編集)
「サヨナラ民芸。こんにちは民藝」(月刊「目の眼」7月号別冊)

出版順に並べたが、上2つは2年ほど前に購入したもの。
3冊目の「サヨナラ民芸。こんにちは民藝」を最近買い求めた。

目の眼増刊 サヨナラ民芸。こんにちは民藝。 2010年 07月号 [雑誌]『目の眼』という雑誌の別冊になるのだが、書店でたまに手に取る程度のもので定期購読しているわけでもない。
いつものように書店の立ち読みで『目の眼』を手にして、この別冊があることを知る。
しかし既に出版元にも在庫が無く、古本でやっと入手できた。

300頁近い大冊だが、対談が6つという構成で、一気に読むことができた。
対談ゲストの過半は初めて知る人達だが、「民芸」というものが、こうした専門的に関わる人によっても、実に様々に解釈されてきたことを知ることになる発見の本だった。

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TVキャビネットを地デジ対応に

AVキャビネット


昨今、このようなものをテレビボードと呼ぶのだそうだが、これって英語圏で通じる用語なのかな?
彼の地では「TV Entertainment Center」とか、「TV/Game Cabinet」といったような呼称が一般的なようだが、とりあえずここではTVキャビネットと呼ばせていただこう。

お恥ずかしい画像で恐縮ながら、これは我が家のキャビネット。
独立自営して直後に制作したものだから、かれこれ20年の余は経過する古色蒼然とした佇まい(ちょっと大げさかな)。

いわゆる自家消費ということだね。
うちは古く狭いチープな住まいだが、家具のいくつかを自身の物で占める。
紺屋の白袴というのもそれはそれで職人が置かれた社会環境を自嘲気味に語るもので好ましくも思うが、必要かつ可能であれば大いに使ってやりたいもの。

我が家では展示会出品物の売れ残りを設置することも無いわけではないが、多くは新しいデザイン、仕口の試作を兼ねたものが多い。
これを実際に使うことで、そのデザイン、機能、使い勝手、さらには経年変化などをテストする。

ところで、TVはご覧のように未だにブラウン管のアナログ受信のものでしかない。
購入して5年余り経過するが、とても良い映りで満足している。

ボクは地デジへの移行には以前より政府総務省、家電業界、放送業者の利権絡みの策謀でしかなく、TV買い換え消費を強制する弱者イジメでしかないと考える立場だし、そもそも放送されるTV番組もゴミばっかりだし、子供の正常な情操、発育を阻害するものでしかないと考えているので、フン、受信できなくても良いワイ、などと、買い換えにうずうずしている妻の懸念をよそに居直っている。

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宮古から秋の便り

サンマ1

三陸宮古の港から活きの良いサンマが届く。
氷詰めのトロ箱がクール宅急便で送られてきた。
まだ氷が残っている状態であれば刺身でいけるだろう、と確信は持ったものの、送り元の漁港事務所に電話を掛けて確認を取る。
「昨日の水揚げのものだから、全く平気ですよ。まずは生で味わってください・・・」とのこと。

既に用意してあった夕食メニューを変更して、刺身でいただくことにした。
普段はB級、C級グルメも、今日ばかりは不漁だと言われている稀少グルメのサンマのお造りである。
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奥会津・三島

コスモス奥会津に入ったのは9月最後の週末だったが、黄金色に色づく田んぼは稲刈り寸前の様子で、日曜日に家族総出での稲刈りという時期だったようだ。

画像は投宿させていただいた民家脇の空き地に咲くコスモス。

近頃は外来種のキバナコスモスの勢力が拡大していて、あまり良い気分にはなれないのだが、このような在来種であってはじめて秋を代表する花として愛でることができる。

山紫陽花次は山紫陽花だが、巨樹見学の途上、休憩地の雑草の中から見付けた花。

こうした野生原種は開花期も様々なようで、この時期に咲いているのはめずらしいことではない。

決して艶やかではないものの、薄く渋いピンク色の花を付けて入山者を楽しませてくれるのは嬉しいもの。

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巨樹の森への旅

栃の木


秋分の日を過ぎたとはいえ、残暑の残る下界をおさらばし、深い山へと分け入ってみた。
昨年の「新月伐採」立ち会いの企画者からの誘いで、今回は栃の木の巨樹見学会に参加者させていただいた。
(昨年の記事:「神無月、新月の日には巨樹伐採へ」「同、続」
「栃の王国」見学会と銘打たれた奥会津での企画。

昨年の新月伐採の山懐からさらに数Km先に分け入った地点になり登山距離も少し長くはなったが、沢伝いに歩を進めるのは自然との交歓をより深くするものともなり、心躍る時空となった。

画像の栃は樹齢500年ほどのものと推定されるが、実に見事な樹形である。
ゴツゴツと節の塊が出っ張り、豪雨、台風、地震、豪雪などあらゆる荒ぶれる自然現象にも耐え、一人の人間の生命の10倍もの年月を数えてきた荘厳なまでの存在感を持つ。

これほどまでにこうした栃の木がこの山に残ってきたのは何故か。
他でもない、食用のためである。
栃の実[種子]は渋抜きをすることでデンプン、タンパク質を含む食用となり、栃餅などにして主食、あるいは飢餓作物とされ重宝されてきたという歴史がある。

地元の木樵(きこり)に訊ねれば、最近ではいなくなったものの、炭焼きの人々が山深く住み着いていたそうで、コナラなどの広葉樹は伐採されてきたものの、彼らの食のためにこの栃の木だけは残されてきたのだと言う。

わずかに数十年前ほどの頃まで、子連れで山に入り炭を焼いていたそうだ。
里の小学校まで子供達はかなりの距離を歩いて通学していたらしい。

山も里も豊かで、人と自然の循環系が保たれていた時代は決して遠い昔のことではなかったということだろう。

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Tool Test プランジルーター(FWW誌から)

ルーターテスト1


Fine Woodworkingマガジン #214(最新号)に〈Heavy-Duty Plunge Router Tool Test〉が掲載されている。

このBlogにも詳しく紹介してきたようにうちではFestool社のOF 1400という2-1/4hpのものをメインのハンドルーターとして快適に使用している。
今回はFestool社のものを含む3hpのプランジルーターを対象としたテストではあるが、興味深く見較べることができた。(Blog内 インプレッション記事

読後、結論的に申せば、OF 1400という機種選択は全く正しかったことを傍証するものとなっていて、その意を強くしたというところである。

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南京鉋は、Push or Pull ?

南京鉋


家具制作における木材加工の仕上げには、手鉋での仕上げ作業は欠かせないが、曲面切削で活躍するのが南京鉋。
台裏の曲率を様々にすることで、ほとんどの凹曲面から凸曲面まで良質な仕上げを叶えてくれる家具職人としては欠かすことのできない鉋。

南京鉋という名称からして大陸伝来のものであることは明らかだが、いわゆる平鉋という台鉋が日本固有の発展を遂げて今に至る経緯を辿ったのに対し、この南京鉋はかなり原型を留めているところから名称もそうしたものとして意味付与されているのかもしれない(日本における道具史の研究家でもないのでこれ以上詳細には立ち入らないでおこう)。

今日はこの南京鉋を使う職人としての技について気になったところを考えてみる。
難しいことでは無い。
引くか、押すか、の違いについて、である。

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葬送行進曲を

この夏の異様な暑さについては気象庁を中心として分析が行われているようで、いずれまたエルニーニョ、ラニーニャなどといった専門用語が飛び交うようになるのだろうが、ボクにとっては(最近ではボクテキニハ‥‥、などと言った気色の悪い言い方があるが、あれはどうなん?苦笑)暑く、げんなりさせられた要因はもっと他にあった。
ここ数週間にわたる民主党の代表選、そしてその報道ぶりのこと。

TVをつければ不自然な笑いを振りまく代表戦候補者、二人が握手するシーンでは目を合わさずに作り笑い。
共同記者会見場では隣に座った相手へのあからさまなネガティブスピーチ。
新聞を開けば、候補者への一方的な断罪、パッシングの嵐。
何だ、俺は三流タブロイド紙でも取っていたのか、と愕然とする。

政治記者も、識者と言われるTV芸者もそれぞれの候補者の政策の解説、評論はそっちのけで、耳にタコができるほどに聞き飽きた「政治とカネ」問題、下ネタスキャンダルへの焦点化での政治ショー。

まあ、結果はご存じの通りで、まだ残暑厳しいお彼岸前なのに、悪寒をもよおすものとなった。

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成形加工における治具づくり、1つの考え方(補記1)

倣い成形に用いる刃物を紹介しよう。
もちろんこれはうちの機械環境(ピンルーター、および高速面取盤)において、という限定的なものであるが、とりあえずは基本的なものを取り揃えていると考えていただいて結構だろう。

画像の順にいこう。

ルーター刃

倣い切削に用いられるルーターの刃

うちのピンルーター(ルーターマシン)はチャックが1/2インチ、12mm、16mmのつ3のサイズに対応する(もちろんスリーブを介せば 8mm、1/4インチ、6mmなどにも対応)。

倣い切削の場合、できるだけ大きな径のビットが安定的、安全に、かつ良好な切削肌を獲得することができるものだが、ルーターマシンの構造上(回転数を含む)当然にも限界がある。

かつてドイツ製の50φほどのものを購入しようとしたことがあったのだが、メーカーサイドから危険だからと拒否されたことがあった。
ここでの“危険”という注意勧告だが、間違ってはいけない。作業者にとって危険ということではなく、マシンそのものの性能を超える負荷への懸念だ。
もちろんこれは作業者に及ぶことも考えられるので、避けるというのが賢明。
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