工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

2020東京五輪強行はオリンピック終焉への弔鐘(3)

2020東京五輪は1年延期の末、今や来週末には開幕という差し迫った状況です。

これまでも触れてきたように、多くの識者、メディア、SNS、そしてあらゆる世論調査においても、開催そのものへの疑義が出されている現状は、この開催間際になっても変わりは無いようです。
これはDOVID-19パンデミックのど真ん中での開催になろうとしているからに他なりません。

7月8日 菅首相の記者会見。4度目の「緊急事態宣言」発出

7月8日の菅首相による記者会見では、この新型コロナウイルスの蔓延が続いてきた昨年初から500日余りで何と4度目の「緊急事態宣言」が発出されましたね。

首都圏中心に発出されている「まん延防止重点措置」終了を経た今月12日から8月22日までの6週間です。

これは前回の「緊急事態宣言」解除(6月21日)から、わずかに3週間しか経っていませんし、またこれまでは「緊急事態宣言」の期間としては3週間から4週間ほどの単位でしたが、今回はいわゆるお盆が明けるまでの6週間という比較的長期のものになっています。

そして…、この「緊急事態宣言」のまさにど真ん中でオリンピックが開催されようとしているということです。
これには開いた口が塞がらないというのか、言葉を失う、いわば絶対矛盾としか言いようのない事態でしょう。

首相曰く「緊急事態宣言の下で、異例の開催となった。新型コロナという大きな困難に直面する今だからこそ世界が一つになれること、そして全人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを東京から発信をしたい」

菅首相はこれまで「人類がコロナに打ち勝った証しとしての東京五輪」を掲げ、どれだけ感染状況が厳しかろうがオリンピック東京大会は何が何でも開催ありき、と強弁してきたところですが、これが残念ながら虚妄なものとなってしまったことは明らかだったようで、「全人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけること」などと、「コロナに負けつつある」ことを糊塗し、これに変わり、上滑りの詭弁を弄するものにさらりと切り換えてきたのです。
多くの方のイメージとしては、「人類がコロナに“敗北した証し”としてのムチャクチャ東京五輪」になろうとしているというのが実態でしょう。

菅首相が自信満々で五輪の準備を進めてきた最大の根拠となるものはワクチン接種でした。
「一日100万回」などと河野担当大臣に語らせ、事実、欧米とは数周遅れのTopランナー如くに、闇雲に各自治体に指令を出し、医療従事者から、高齢者向けの接種を進め、この7月で終えようとしているのです。

私も前期高齢者であるところから、ファイザー・ビオンテックのワクチン接種の第1回目を終え、7月末までに2回目接種を控えているという状況。 このmRNAワクチンの接種についてですが、私自身としてはかなりの躊躇があります。しかし、この躊躇を打ち破り、1つの選択として受容したところです。躊躇の中身については機会があれば別稿、改めます

ただこの闇雲なワクチン接種ですが、風向きがだいぶ怪しくなっているようです。
国からの供給量がこのところ激減し、職域接種や、国の大規模接種などはブレーキが掛かり、さらには完全ストップという状況。
「一日100万回」をカウントしたのも束の間。64歳以下の人々への接種はかなり先延ばしされそうです。

こうしたべらぼうなワクチン接種への拍車へのブレーキと都議選が重なりましたね。
それまでは都議会 第1党の都民ファーストへの不人気などを背景に、自民党は50議席はいくだろうと豪語していたものの、蓋を開ければ33議席という大敗。

この大敗が、秋の衆院選を控える菅首相には大きな痛手となったようで、これが引き金となり、「マン防」後の7月12日以降は「マン防」を終了させるどころか、感染確認者の連日の増大もあり、「緊急事態宣言6週間」との決断を引き寄せたようです。
これに伴い、オリンピックの観客も最低限、有観客としてきたことから大きく切り換え、無観客へと決断されたようです。

前後しますが、ここで 感染状況を少し詳しく見ておきましょう。

COVID-19 世界の感染状況

まずはじめに現在のところWHOが把握している感染者数は186,800,000人、死者数:4,195,000人(07/11)となっています。
ただただ、茫然としてしまう数字です。この1つ1つが、この世に生を受け、温かな血が身体の隅々を巡り、それぞれの個性溢れる人生を生きた人の命なのです。

そして現在、この感染状況は終息に向かうどころか、未だに大変厳しいパンデミック状況下にあるというのが実態です。

以下、簡単ですがこのCOVID-19感染状況を概観してみます。
上のグラフはロイターによる統計の図版(COVID-19 Global tracker)からの引用です。

このReutersのグラフは動的なものとなっており、任意のグラフの任意の箇所にマウスオンすることで、それぞれの統計数値が表記され、それらの推移、他との差異などが読み取れる内容になっています。 試みてください。

感染状況が酷いのは南米のブラジル、コロンビア、インド、ロシアなどですが、南アジアのインドネシア、コロンビア、ロシアではブラジル同様に現在、ピークを示しつつあるというのがその実態です。
ロックダウンを解除するとの報がきてる英国ですら急激な増大を示しているではありませんか。

このようなパンデミック状況下での、「世界の祭典」「平和の祭典」を掲げた2020東京五輪の開催強行はまさに狂気の沙汰としか形容できない代物です。

また、この感染病が発生して以来、1年半の年月が経過し、感染抑制の切り札とされているワクチン接種ですが、人口あたりの接種率では5割を超える先進国など、かなりの進捗状況にあることは確かなようです。

以下はロイターによるワクチン接種状況の世界大的な接種状況の統計図版です。
COVID-19 Vaccination tracker〉(右図はその一部)


これからは、先ほどのグラフ同様に、ユーザーが任意に選択した国々の接種状況が見て取ることができます。

因みに日本を見ますと、その接種率は50番目にランクされています。
この順位が果たして高いのか、低いのか?。
ここで言えることは、いわゆる低開発国のカテゴリーに分類されてしまう順位である事は一目瞭然のようです。

先に上げた菅首相の記者会見でも「自治体や医療などの関係者のご尽力により、今や世界でも最もスピードで接種が行われていると言われてます」(原文ママ)と語っていますが、これは真っ赤なウソ。
1度でも接種した人の割合も、2度接種した人の割合もG7で最低です。

河野新型コロナワクチン担当大臣も得意の英語版ツィッターで、瞬間接種速度を示すグラフと共に「日本のワクチン接種。悪くないでしょう?」と誇ったのでしたが、これが世界的に大炎上。(朝日 Biglobe)
河野太郎 Twitter


「瞬間風速」を誇っても、単なるマスターベーションでしかないでしょ。
河野大臣は世界に向け、恥をさらしただけに終わったようです。(朝日記事Biglobe記事

▼ 参照記事:BuzzFeed:菅首相「ワクチン接種、先進国の中で最速」はミスリード。会見で強調、実際は…

ただ私は日本のワクチン接種状況を必ずしも悪し様に言うつもりはありません。むしろ、低開発国の人口あたりの接種率が10%に満たない国々のなんと多いことかと、そちらの方で呆れてしまいます。

疫病のパンデミックは言うまでも無く、世界的規模での対策が欠かせず、その意味ではワクチン接種が開始され、半年以上も経過するというのに、世界保健機関・WHOも各国政府もとても成功しつつあるとは言えないお寒い状況にあると言わねばなりません。


日本のパンデミック状況

 AFP 2021.07.11 関連記事より

AFP〈特集:新型コロナウイルス感染症「COVID-19」〉より
日本の感染者数の推移

先ほどと同じくReutersの統計から確認しますと、累積感染者数は821,296人。同じく死者数は14,970人(07/11)。
Reutersの「日本の感染状況

むろん、世界的に見れば、2桁に近いほど、日本より酷い国々があることも確かなことですが、ノーベル受賞者の山中伸也教授が言うところのファクターXなるものが、効いているかもしれないアジアの国々、中国、韓国、台湾、ベトナム、シンガポール、ミャンマーに較べれば、日本は突出して高いことが窺えますし、そこを抜きに欧米と較べて感染状況は悪くない、などと安全神話を振りまくのは如何なものかと思いますよ。

デルタ株と言われる変異株の怖ろしさが伝えられ、インドでの感染爆発は正視に耐えないものがありますし、またインドネシア、フィリピンではインドを追い掛けるように酷い感染状況になっています。
これらは元々衛生状況が悪く、またワクチン接種がまったく届かないという国情を考えれば、感染への耐性が脆弱である事は想像するに余りあるわけです。

WHOや国連が危惧する通り、先進国としての使命は果たしていかねばならないのは当然なことでしょう。

東京の感染状況

さて、五輪開催の会場となる東京ですが、上図のように、20日間連続で前週の同じ曜日の感染者数を超えてきていることから、感染状況は増大基調と見なければならないことは異論の挟みようがありません。

前回の「緊急事態宣言」が解除され、まん延防止重点措置に切り換えられ、今日に至るわけですが、直近3週間はこの規制がまったく効いていない状態です。

今後、22日からの連休、さらには夏休みと続き、多くの人が行き交う季節を迎える中、新たに「緊急事態宣言」が掛けられます。
どうか、これを機に感染状況が反転し、抑制への契機になってくれることを祈るような思いで見つめていますが、この願いとは逆に、連休、夏休み、そしてオリンピックの開幕という感染拡大にとっては絶好の状況を迎える中、感染拡大は収まらないのではとの思いがよぎります。

既にご存じの通り、この「緊急事態宣言」と「まん延防止重点措置」とは何が違うかと言えば、せいぜい飲食店での酒の販売の有無程度です。他はほとんど何も変わらず同じなのです。

であれば、この間の「まん延防止重点措置」がほとんど奏功せずに推移したことを思えば、例え「緊急事態宣言」に切り替わったとはいえ、確かに言葉の持つ厳しさの違いはありますが、連休、夏休み、そして五輪と続く今後の暦を視れば、安心安全な状況が約束されているなどと、どうして考えられるでしょうか。

五輪開幕を控える東京における脅威と、政府、組織委の対応のまずさ

日本ではこうしたウイルス感染への対策は、お願いベースでしか掛けられないのが実態です。
この間の感染拡大も、500日続いたCovid-19パンデミック下の様々な規制に疲れ切って、ガマンの喫水線が切れ、街中へと繰り出し、路上呑みで仲間との邂逅を楽しんでいるというのが実態でしょう。

かてて加えて、この五輪開幕。
なぜIOC、JOCの連中がパーティーを繰り広げる中、自分たちがガマンしてろ、というのは、それは無理というもの。

例え無観客で競技が繰り広げられることになったとしても、日本のアスリートのトライアル、そしてファイナルともなれば、競技場周囲は大いに盛り上がり、成果が上がれば、歓声と共にビールの栓は開けられ、盛り上がり、中には抱き合って喜ぶ人も出るでしょう。
静かに楽しみましょう、などと言われても、現在の渋谷や新宿の街路の状況を視れば、何をかいわんや、歓喜の爆発ですよ。

他方、夏場の楽しみなサマーフェス、あるいは各地の大小のお祭り、スポーツイベント、これらが軒並み中止に追いやられる中、なぜオリンピックだけが許されるのか。
8日の記者会見でも、同じような内容での記者からの質問に対し、何ら説得力のある説明は為し得なかったのが菅首相。
いや、これは首相でなくても、誰もまともに答えられないでしょう。
それほどにおかしなオリンピック特別枠なのです。

また、この感染のウイルスですが、 L452R 、デルタ型といわれる感染力の強いウイルスがスクーリング検査対象の23%ほどと、徐々に増えてきていて、やがて、この夏から秋にかけ、アルファ型と言われる既存の変異型から置き換わるのは必至だと言われています。

例え、このデルタ型に置き換わらずとも、7月中に感染者数は1,000人を越え、状況によっては8月には本年初に経験させられた、2,000人台もあり得るとするのが専門家の見立てだそうです。

2020東京五輪の中止こそ、感染を抑える切り札

そこで、今回の結語になりますが、あらためて申しあげれば、この感染状況を抑え込む最大の方法を上げよと言えば、何にも増して「2020東京五輪の中止」ということになるのです。
これこそが最大の感染抑制の切り札でしょう。(続きます

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