工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

2020東京五輪強行はオリンピック終焉への弔鐘

世界的なCovid-19パンデミック状況下、IOCを先頭として、我らが日本政府、組織委、JOCは、8割の人々が、ぜひ止めて欲しい、せめて延期を!と祈るような思いで反対の声を上げるという大変厳しい状況に立ち至ってるにもかかわらず、開幕まで1月半余りとなった今も、東京五輪へと突き進もうとしているようです。

このトンデモ無い五輪暴走、いや五輪ファッショとも形容せざるを得ない状況はスポーツを愛する私たちにとって、いったい何を意味しているのか、少し冷静に考えてみなければと思います。

これは一義的にはCovid-19、新型コロナウイルスという新規感染症。つまり外部要因からの翻弄と言えるものであることは当然ですが、どうも、伝えられてきているこの間の五輪を巡る様々な不可解な事案、そしてIOC 他、組織委、日本政府の強引なまでの開催強硬は、オリンピックゲームというイベントそのものの闇をこのコロナ禍が白日の下に晒しつつあるように思えてなりません。

私はスポーツはもちろん好きです。今でこそTV観戦という情けない接し方ですが、高校まではサッカーボールを蹴っていましたし、社会人になってからは職場代表の駅伝選手として選出されたりもしたもの。
身体を動かし、汗を流し、他者とゲームを争う、この爽快さは身体が悦ぶことを伴うだけに、何にも代えがたい快楽をもたらすことは誰しもが体感できるものです。


先頃開催された五輪代表最終選考会でもある「水泳日本選手権」は大いに湧きました。

100mバタフライ、100m自由形、50mバタフライ、そして締めくくりの50m自由形と、4種目に優勝した池江璃花子選手の驚異的な活躍は多くの人をTVモニターを前に釘付けにし、涙と共に大きな拍手に包まれました。

白血病に倒れたのが一昨年。選手生活の継続すら危ぶまれたと言うのに、過酷な治療と闘病を乗り越えた驚異的な回復力は周囲の期待を超え、彼女自身の言葉からも本人も驚くばかりの復活劇だったのは間違い無いのでしょう。

このエポックは、彼女に競技する場を与えてやりたい、すばらしいパフォーマンスをみて感激したい、との思いに駆られた方も多いはずで「五輪反対派」を覚醒させるに十分なものと思えたものです。

またこの池江選手の活躍に対し「池江選手こそ五輪反対の立場に立って欲しい」などとする「反対派」からの声が上がり、彼女自身を大きな困惑に巻き込む形になるというサブストーリーまで派生させましたが、それも含め、開催強硬派は勢いづくものだったかもしれません。

彼女のような、いわば孤高のスポーツ選手、スーパーエリートアスリートの闘いに私たちは感動し、人間の限りない力の発揮と、努力の姿にエールを送り、非日常の祝祭的時空を謳歌するもののようです。

オリンピックはこうしたスポーツ選手にとり4年に1度の晴れ舞台。これに挑み、チャンスを我がものとして代表選考を勝ち抜き、スタート台に立つのです。

ただ、現実的なオリンピックはそうしたあり得べきピュアな姿の影に、金と欲望、国家の見栄と栄誉が渦巻く、いわばイベント資本主義としての強欲とそれゆえの矛盾の塊のようなものでもあるのです。

ましてや、今大会は1年半前からのCovid-19パンデミックによる社会的疲弊のど真ん中で開催されるという、オリンピック史上においても稀有な事例となっており、開催するにしても、これを断念するにしても、私たちとオリンピックの関係というものを、あらためて深く問い直す契機になっていますし、その意味では良い機会だと思うのです。

ラグビー元日本代表・平尾剛氏の提言

数日前、池江選手と同じく、スポーツ選手だった、ラグビー元日本代表・平尾剛氏(神戸親和女子大教授)のインタビュー記事がありました。
これは私の思いと通底する内容でもあり、意を強くしたものです。

以下、平尾剛氏のインタビュー記事から簡潔に引用させていただきます。

コロナが流行する前の2017年から反対している。社会的に弱い立場にある人たちに負担をかけていることがその理由だ。シンガポールのコンサルタント会社「ブラックタイディングス社」に(東京五輪招致委員会がコンサル業務として)約2億3000万円を振り込んだ件の疑惑があやふやになったままなのもおかしい。

IOCはコロナ禍でも必ずやるという姿勢を崩さない。開催国への配慮もなく、国民の命も顧みない。ここまで露骨な態度にはあぜんとする。(日本側の説明も)筋が通っていないし、社会全体をきちんと見た上で物事を決めているとは思えない。大会組織委員会が看護師500人の確保を要請したことで一線を越えた。今、多くの医療従事者がコロナ対策の最前線で身を削っている。それが分かっていればこんな要請はできないはず。

そもそも開催の目的が何なのかがはっきりしない。見込まれる経済効果も試算がずさんで、インバウンド需要が期待できなくなった今は絵に描いた餅となった。国民経済ではなく、関係者の利益を優先しているにすぎない。「夢や感動を与える」「国民同士の絆を」とも言っているが、もしそれが目的なら今は開催する必要はない。夢や感動、絆は安定した生活を送ることができる平時において感じられるものである。

(五輪は)いったん、やめてはどうか。マイナーチェンジだけでは抜本的な解決はできないと思う。IOCを解散し「参加することに意義がある」という理念に立ち返って、これまでとは違うまったく新しい大会を創設してはどうだろうか。

東京五輪を中止するべきだと考えるか、との問いに

もちろん中止にするべきだ。開催すればかなりの確率で感染者が増えることが予測される。再び緊急事態宣言を発出する事態にもなりかねない。宣言発出による経済的な損失は莫大だ。それと中止による損失をてんびんにかければ、今からでも中止にしたほうが損失は少なくなる。社会にかかる負担が軽減されれば、国民一人ひとりの生活も回復傾向に転じるはずだ。もう一線は越えてしまった。対話すらできない現実をしっかり捉えた上で、再びスポーツの価値を一からつくっていかなければならない。

東スポから引用させていただきました。感謝

一読してお分かりのように、スポーツを愛し、スポーツの力を信じるからこそ、ラガーマン平尾さんはこの2020東京五輪の迷走を憂い、深く考えを巡らせ、大いなる反発を喰らうことは必至の状況下、あえてこうした苦言を呈しているのです。

2020東京五輪を巡る関係者の発言や、判明してきている五輪の闇

まず簡単に時系列から。

招致決定のIOC総会会場での安倍首相のスピーチ

東日本大震災、2年後の2013年、あの〈 お・も・て・な・し 〉のIOC総会・プレゼン会場でのもの、
多くのIOC委員が懸念する、福島第一原子力発電所過酷事故の影響について、安倍首相曰く「汚染水の影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメール範囲内の中で、完全にブロックされている…。アンダーコントロール」と大見得を切る。

しかしその実態ですが、汚染水のタンクが1,000基を越え、総量は125万トンに達し、空き地が満杯になり、その地域の漁民の強い反対を問答無用とばかりに押し切り、海洋放出へ向け動き出しているのです。

詳述は避けますが、ALPS(核種処理装置)を通しても、全く処理できないトリチウムを含む処理水と呼ばれる汚染水をそのまま海水で希釈して放出されるとのこと。

「アンダーコントロール」などと、その発言から8年経過した現在もなお、許しがたい虚言だったことは忘れないようにしたいものです。

国立競技場の建築を巡る混乱

ザハ・ハディドというイラク人女性建築家のデザインがいったん決まったものの、その建築費用が膨大に過ぎやしないかとの指摘を受け、「計画を白紙に戻す」とされ、その半年後、建築家の隈研吾さんの木をふんだんい使った「軒庇」を取り付けるなど、伝統的な日本建築の技法を取り入れたデザインに決定。

ただこれも、事前に環境破壊は行わないとの約束は反故にされ、南洋材の大量伐採による合板利用が指摘されたり、木の用い方に疑問を呈したくなるところも多いようです。(引用元

エンブレムのデザイン パクリ問題が浮上(2015年7月)

アートディレクターの佐野研二郎氏によるエンブレムのデザインが決まったものの、その直後、ベルギーのグラフィックデザイナーが作ったロゴマークと瓜二つと指摘され、これも白紙撤回。
その後あらためてコンペを実施し、青の市松模様であしらった野老朝雄氏のデザインに決まります。
(予断ですが、この確定したエンブレム、最初の印象を言えば、なんだかインパクト、高揚感と華やかさに欠けるものだなと思ったもの。今ではさすがに見慣れてきてるけど…、でもやっぱり現在の東京五輪の迷走を象徴するように暗鬱だ。 苦笑)

マラソン会場の変更

マラソンの日程は8月8日(女子)、8月9日(男子)。
日本ではもっとも厳しい真夏。炎暑の中を42.195Km走るのはいかにも無謀。殺人行為です。
小池都知事は、みんなでバケツを持ってコースに打ち水しましょう、などと悪い冗談で誤魔化そうとしていましたが、それはあんまりだとばかりに、IOC主導で札幌会場へと変更(2019年10月)。小池都知事は「合意なき決定だ」などと怒っていましたっけ。

迷走気味の東京五輪

海外メディアからの警句

パンデミック状況下での2020東京五輪を巡っては、世界の主要紙が正鵠を討つ厳しい内容の記事を配信しています。
日本国内のことだから、よその国があれこれといちゃもん付けられるのは御免だ、との思いもよぎりますが、オリンピックは世界規模でのイベントであり、これに聴く耳を持たねば開催にも辿り着けないでしょう。

日本で新型コロナウイルス感染が収まらずワクチン接種も滞る中で東京オリンピックを開催するのは「最悪のタイミング」であり、日本と世界にとって「一大感染イベント」になる可能性がある

 運動面で「このままの五輪でいいのか」と題した評論記事は、人権問題絡みでボイコットの動きがある北京冬季五輪を含め「五輪の在り方を再考すべき時」

「五輪開催を進める必要があるのか」と題するもので、「海外の観光客は入国を認められないが、何万人ものアスリートや大会関係者、メディアが日本の首都に押し寄せ、五輪開催は非常にリスクが高い。日本とIOCは五輪開催を正当化できるかどうか自問する必要がある」

朝日新聞 社説「中止の決断を首相に求める」

朝日新聞社説
朝日新聞社説 05/26

また国内メディアとしては、先月26日、この東京五輪の公式スポンサー企業に名を連ねる「朝日新聞社」が「中止の決断を首相に求める」とした大型の社説を配信。
言い方は綺麗じゃ無いが、公式スポンサーでありながら、背中から切りつけるようなものですね。

他にも新聞社として公式スポンサーに名を連ねたのはは日経、毎日、読売などがあるが、朝日を含め当然にもぬえ的なスタンスに終始していた中で、この社説は突出したものとして、それなりのショックをもたらすにふさわしいトリガーだったようで、海外主要紙もこれを引用する形で、2020東京五輪開催を巡る状況の一段の厳しさを伝えるものとなっていました。

公式スポンサーまでが開催中止を求める、という異常事態ですが、世論としても同様のよう。


支持を失ってしまった東京五輪

日本人ほど、オリンピック大好き国民性はないのではと思われるほどの人気です。
熱狂的ですらあります。
サッカーやテニスなど、各競技団体が独自に組織する競技会があり、世界的規模での大会で大いに盛り上がるものですが、それでもなお、五輪には特別の思い入れがあるのか、高額報酬のプロ選手たちも、報酬抜きに、いそいそと参加者リストに名を記したがるもののようです。

このように様々な人気スポーツ大会を越えた存在を誇るオリンピックであるようですが、しかし今回ばかりは多くの市民がオリンピックの中止、再延期を強く求めていることは、あらゆる世論調査の結果から明らかです。

  • 読売:「中止」59%、「開催」39%(05/10
  • 毎日:「中止」「再延期」が6割超、「開催」33%(05/22
  • 時事:「中止」「再延期」が6割超 65.4% 「開催」28.9%(04/16)
  • 朝日:「中止」「再延期」が83% 「開催」14%(05/17

6割から8割にまで「中止」「再延期」を求めるという、オリンピック大好きな日本人としては、やや異様な感じさえ覚える調査結果で驚きます。

また開催中止を求めるchange.org上での署名運動の盛り上がりもすさまじいものがあり、今日時点で40万人を越え、目標の50万人を見据えるような勢いです。

このchange.org は米国に発する様々な思いをネット界で集めるオンライン署名の代表的なサイトですが、日本版サイトではこの「五輪反対」署名は歴代最多の署名数とのこと。
5月5日からのスタートで、歴代最速ペースで署名数を伸ばしています。

〈この署名の呼び掛け人、宇都宮けんじ さんの弁〉
「五輪開催の名の下に、貴重な医療資源や莫大な財源が、東京五輪に割かれようとしています。もうこれ以上 五輪のために貴重な医療資源や財源を使うべきでは無い。その思いから開催中止を求める活動を開始しました」

続きます


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