CLARO Coffee Table

小卓です。
コーヒーテーブルとしましたが、2人〜3人掛け、といったところでしょうか。
これは甲板のサイズから規定されるものですし、しかも耳付き(皮部がそのまま残っている)でもあることから、同じものを作ることはできない、唯一性のものになります。
なぜこんなものを作ったかと言えば、他でも無くクラロウォールナットの端材活用法としての創出です。
甲板(Claro Walnut)

端材とは言っても、ご覧の通り、とても魅力的な杢を持ち、クラロウォールナットの特徴を見事に体現したものです。
バール杢(瘤杢)チジミ杢を醸しつつ、ここにチョコレートブラウンから濃緑、紫、青、黄色とバリエーションに富み発色しています。
また耳付きの耳部分は、ゴツゴツ、トゲトゲ、ウネウネ・・・、これらの杢が原木丸太の表皮にどのように表れるかを見せてくれ、木材を愛好する人にはたまらない魅力があるでしょう。
上下数カ所に、クラックが残っているため、これをアレー型のチキリで抑えています(チキリの材種はローズウッド)。
脚部
脚部ですが、X字型の畳ズリに、6°の傾斜を持たせたテーパー状の柱と、2本の細身のスピンドルで甲板を支える構造です。
設計と加工のキモ
甲板は異形の形状ですので、通常の脚ではつまらない。
この異形の甲板に合わせるかのように設計したのですが、脚を垂直に立てるのもつまらないので、
6°の傾斜を持たせ、かつテーパー状にすることで、ややごっつい形状の脚部も、軽やかに、モダンな姿に変貌します。
加え、甲板の狭い側を支える支柱に、より軽やかなイメージを与え、かつ、チジミ杢のあるカーリーメープル材を使い、こちらは15°の傾斜を持たせています。
面腰による結合と、面取り

なお、この柱と、畳ズリの結合部ですが、30mmほどに大きく面腰で結合させています。
ごっつさを排するための意匠的な処置なのですが、この畳ズリと柱部分は大きなR面で面取りさせる目的のための処置でもあるのです。
前述の通り、柱は6°の傾斜を持ち、かつ畳ズリの方も4°ほどのテーパーに削り込んでいますので、
結合部の面腰加工は、やや、いや結構面倒です。
これらの加工の全ては傾斜盤で行いますが、通常の機能では、この傾斜角を伴う面腰は無理な部分もありますが、ジグを作るなどして、目的とする切削角を作り、胴付き面を斬り込んでいきます。
面腰の加工について1点だけ、そのポイントを上げると、胴付きが1ヶ所ではなく、2〜3ヶ所という複数になることから、その分、高度な加工精度が要求されてくる、ということがあります。
ましてや、今回のように、結合部がカネではなく、傾斜角を持つ場合は、より加工の難易度は高まるということは言うまでもありません。
私のように、決して上手でもない職人の場合、テストピースを準備し、堅めの胴付きから始め、徐々に攻めていけば存外上手くいくものです。
まぁ、後は規矩術とまでは言いませんので、三角関数を操る程度の算数を御せれば問題ありません。
というより、大事なのは、こうした異形のものを加工することの難度というものを、どこまで楽しんでいけるかということでしょうか。
コスト追求の木工からはそのような発想は生まれませんからね。


昨年末に作ったこの手慰みの小卓、後日談もありますので、それはまた次回にでも。
おっと、その前にTop画像にあるアームチェアについて ひとこと。
材木市場を疑え
これはショールームで来客に掛けていただいている椅子でして、制作年は20年ほど昔のものになります。
ご覧のように、チョコレートブラウンの鮮やかな色調を今に留めていることがお判りかと思います。
私はほとんどこうしたもののメンテナンスをしませんで、制作時にオイルフィニッシュしたままの姿です。
乾燥材の商品としてアメリカから輸入されるブラックウォールナットではこのようにはいきません。
この魅力的なチョコレートブラウン色は失われ、灰色に近い灰褐色になっているはず。
努々、ブラックウォールナットだと信じて購入しても、そうした市場で流通しているほとんどのものは、この椅子のように、長期的に原色を留めるものでは、残念ながら無い、ということは自覚しておきたいものです。
市場を疑え!ということですね。
