キリスト教 Y教会、礼拝堂の講壇

横浜の郊外に佇む美しい教会に納めた〈講壇〉。
まずはこのような高貴な仕事の機会を与えてくださったYキリスト教教会には深い感謝を!
以前、これより少し大振りの講壇を京都の教会に納入しましたが、その時に用いた材種と同じマホガニー材によるものです。
嘘偽りの無い、真正マホガニー材。
本格的にマホガニーを使うのは久々でしたが、あらためてこの樹種の素晴らしさを再確認されつつの制作工程でした。
細部加工において破綻しがちな木材加工ですが、材の物理的安定性が高く、靱性、剛性も高いマホガニーですので、そのような懸念からは自由で、また南洋材などに観られる、切削工程で弾き出されるオガ粉による刺激的な臭気も無く、快適な加工工程であったことは言うまでもありません。
ただ今回はともかく予算が大変厳しく、材料代に機械設備運用経費を載っけただけのような契約でしたが、一切の手抜きもせず、精一杯作らせていただきました。
何せ、教会における調度品の中にあっても最重要なものの1つの〈講壇〉でしょうから、最善を尽くすのは当然ではあるでしょう。
教会への納品、設置
教会の講堂は100名を超える信者が集えるほどの広さがあり、この舞台にしっかりと鎮座させてもらいました。
制作依頼していただいた牧師らからもその出来具合には過分なお褒めの言葉を頂き、苦労も報われたといったところ。


〈構成〉
本体
今回はご覧のようにとてもシンプルな意匠と構成によるもので、講壇という教会調度品として求められる基本的な要請を満たしつつ、過飾性を排しながらも存在感のあるものとしました。
本体は、正面、側面共に框組とし、それらの接合部は〈蛇口〉(馬乗り)としました。
38×75mm という断面を持つ柱を、いわゆる〈五平〉で配し、重厚感を持たせています。
一般に箱物の場合、38×75mmという材であれば、38mmを見付(正面)にし、75mmを側面(見込側)にしますが、今回はあえて幅広の方を見付側にすることで、視覚的に見え方を主張させているのです。こうした考え方をも取り入れるのが框組における妙です。
また、蛇口(馬乗り)ですが、あえて面腰にしなかったのは、横框がかなりの幅を持たせているところからです。
上が120mm、下が150mmほどの幅広で、これは経年変化での痩せが無視できず、留め接合部に隙をつくりかねない怖れからの配慮からです。
蛇口であれば、いくら痩せても隙は生じませんからね
書見台

長短、3:2 の比率の板ですが、縦横の枠板を留めにより接合し、ここに羽目板を落とし込むという構成です。
羽目板は、3:2 の比率から求められる角度でカットした4枚の厚突き板を展開張りし、これを同じマホガニーの厚突き板に錬り付けるという構成。
枠材とその内部に納められる羽目板、交叉する対角線が見事に合わされ、綺麗です。
実際やってみると、決して難しくは無いものの、相当に慎重さが要求される加工ではあります。
4枚の展開張りを、3:2 の比率から求められる的確な角度で、寸分の隙も無く合わせていくこともさることながら、外枠との隙を作らず、かといって、少しでも大きいと枠組みの留めが甘くなるので、すべてにおいて高度な精度が要求されます。
この書見台の接合部ですが、LAMELLOの〈 テンソー〉という雇い核を使っています。
傾斜角を持つ書見台ベース部の留め、そして最下部の台輪の留め2組も同じです。
LAMELLOの〈 テンソー〉、安くは無いマシーンですので、こんな時こそ大いに使わねばなりませんからね。
今日はここまで。
次回は講壇正面に取り付けた Cross、十字架の仕口などに触れてみようと思っています。
