工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

大竹さんが本を !

大竹さんの本知人木工家の大竹収さんがご本を上梓されたのでご案内させていただく。
『木工ひとつばなし』とタイトルされた250ページを越える大冊のものとなっている。
一昨日贈呈されて知った刊行だったが、ちょっと軽い驚きを覚えた。
内容はタイトルにも表されているように、木工家具制作に従事するところから体得された、木というものの不思議、木工家具の魅力について縦横に語られたエッセー集と言えば良いだろうか。
大竹さんはこのBlogにも数回のコメントを頂戴しているので、読者にはご存じの方もいらっしゃることと思うが、ご自身Webサイトを管理運営されてもいるキャリアの木工家である。
このサイトでも木工こぼれ話というようなエッセーのページもあるのだが、どうもこれを膨らませ、再構成させる形での編集であったようだ。
なお、貼り付けた画像では分かりにくいが、本の装丁にとてもセンスを感じさせる。


軽い驚き、というのはこの立派な装丁も含む。
デザイン、レイアウト、カラーリング、フォントの選択、。
このことが意味するのは、大竹さんは良い出版社、編集者との出会いがあったのだろうな、ということ。
本屋に置かれ並べられれば、その本がどれだけの力を注いで作られた本であるのかは、一目で見破られてしまうものだからね。
しかし本業の傍らでの執筆、編集というのはさぞや大変な労力であったことと偲ばれるが、その労をねぎらうとともに、心から敬意を表したいと思う。
このBlog読者にはあえて隠すこともないが、ボクは好き嫌いがはっきりしていて、自身の感性に合わない人、あるいは価値観がひどく異なる人とのお付き合いはとても疲れるので遠慮させていただくことが多い。(自身の欠陥のひとつとして自覚しているが、こうした性格というものはどうしようもないよね ははは)
あるいは同業の方々との交流で言えば、やはり木工に真摯に向き合っている人、例え好みのタイプではなくとも、認めざるを得ない才能を持つ人へは素直に敬意を持って接してきている積もりだ。
そうした極私的フィルタリングからも大竹さんはこぼれ落ちることのない、有能で、また熱い思いを持った木工家の一人として接遇させていただいている。
(彼本人にとってははなはだ迷惑な相手かも知れないのだがね)
余談が少し長くなりすぎた。
さて彼は工学畑の人だけあって、どちらかと言えば木工においては仕口であったり、仕上げ品質の高さといったようなアプローチを得意とする理系タイプと見ていたが、文章を読んで分かったのだが、思いの外ソフィスティケートされた文体を獲得し、また広い知見に裏付けされた内容は、我々同業者としても読むに値する内容を持ち、同時に広く一般に木工家具制作というものの豊かさであったり、その重要性についての啓蒙的な意味を持つ内容としてまとめられている感じがする。
それらが彼の知性と人間性を感じさせる文章力で構成されているので、なかなか魅力的な本としてまとめられている。
(正直言えば、まだパラパラと拾い読みしただけで十分な感想を披瀝するほどのものはないのだが……)
なお、最後の方に語れているように、木工家が本を出版することの意味というものを自覚的に捉えられているようなのだが、自分に続いて才能ある多くの木工家が出版界へのこうしたアプローチをすることを薦めている。
ボクのようにこうしたBlogで精一杯のヘタレには、出版などとても足元にも及ばないというのが実態であるので、残念ながら彼の話を簡単に受け入れることなどはできない相談である。(言わずもがな、それだけは願い下げだって、おいおいはっきり言うねぇ)
大竹さんにはぜひ版を重ね、労に報いる販売成果をもたらされること期待したい。
皆さんもどうぞ手にとってご覧下さい。
大竹さん、お疲れさまでした。
あなたはボクよりも○も若いのですから、木工人生、これからもがんばってください。
(贈呈本には贈呈の言葉を記した一筆箋が挟み込まれていたが、できればサインが欲しかったな。ちょっとミーハーかな)
【木工ひとつばなし】
■ 単行本: 253ページ
■ 出版社: プレアデス出版
■ ISBN-10: 4903814211
■ ISBN-13: 978-4903814216
■ 発売日: 2009/3/16
■ Amazon:木工ひとつばなし
PS:このところ、このBlogでは新刊書籍に関する記事が相次いでいるね。
このちょっとしたブーム、良いことだ。
*大竹 収さんのサイト

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • ブログで紹介をして頂き、有り難うございます。
    過分なるお褒めの言葉を頂き、身も細る思いです。
    至らぬ点は多々有るとは存じますが、木を生活の糧にしている者の「思い」のようなものを感じて貰えたらと願いながら、著作を進めました。
    多くの方がこの本読んで下さり、多少の共感を覚えて頂ければ、有り難いことだと思います。

  • ブログで出版の準備をされていることを披露されていましたが、ついに出ましたか。
    読ませていただこうと思います。
    さて、次はartisanさんの番ですね。
    上では否定されていますが、自分の本を出すことに
    artisanさんが興味がないはずがない、と私は思っていますね。期待しています(笑)

  • アマゾンは既に「お取り扱いできません」になってしまいました。
    紀伊国屋BookWebに注文してみました。
    こちらも在庫は少ないようで、さて無事届くでしょうか。

  • 大竹さんは木工と、山と、酒と、ケーナの人(それだけでも十分すぎますが)という先入観は捨てにゃいけませんね。
    加えて独自の世界観を持つ著述をものにする人という……。
    しかし考えても見れば、木工家にとって秀でた知力と世界観を獲得するということは有力な武器でもあるということでしょうね。
    でもこれは木工に限らず、あらゆる表現者にとって必須の要素の1つなのかも知れません。
    acanthogobiusさん、買いかぶってはいけません。
    おだてれば木にも登るお調子者ですので、ほどほどに。
    そんな企て(くわだて)があるならば、もっとソフィスティケートされた文体と、吟味された良質な内容のものを書きますよ。
    恐らくはボクが書く素材など編集者が音を上げて刊行前にポシャッちゃいますね。
    掛けても良い。ははは。
    Blogというフィルタリングの無い世界だから許されるところで書き殴っているだけなんじゃない?
    ……その程度の自覚はあります。
    今、東名高速道のとあるサービスエリアでのタイプと投稿。
    2つもコメントが入っていることをiPhoneで確認し、あわてて投稿。
    大阪府郊外のお客様方への仕事の往復、700km走行で、お疲れモード。
    明日も晴れればよいね。
    大竹さん、acanthogobiusさん、ありがとうね。

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