工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

大門 嚴 木工芸展から今年もスタート

ファサード
昨年末最期のエントリでは〈ネットにへばりつくことなく、足で探すことで良い作品との出会いを求め、真のスキルを持っているであろう諸先輩を訪ね教えを請うという、アナログなフットワークをこそ鍛えるべき‥‥〉などと、ネット信奉者からはそっぽ向かれるような記述をしたからというわけでもないのだが、言い出しっぺとしてさっそく元日からの実践。
大門 嚴さんが葛城北の丸で個展をしていたので木工家Mさんを伴い恒例の表敬訪問。
彼はこのヤマハリゾートホテルでの個展は4回目かな?
周知のようにFIFAワールドカップ韓国・日本大会の時の日本代表チームの合宿施設となったところ。
そうしたこともこのホテルのステータスがをあげる要素になったのか、全国から富裕層が年越しのためにゴルフ、温泉宿泊に利用しにくるという高級ホテル。
大手門
ホテル敷地に入ると入り口から延々と数kmを走行したところにやっと見えてくるのが大手門(画像上)。
この手前の脇にある駐車場に車を留め、身繕いをしつつ門をくぐるとファサード、大きな広場が拡がり豪壮な屋敷様の正面の本館入り口にたどり着く(画像Top←退去したのが日没後のため夜の帳が降りてしまった)。
かつては毎年10月末、紅葉の季節にはここでヤマハの「工芸展」が開催され、とても楽しみな催しだったことを懐かしく思い起こされる。
基本的には現代作家のものが中心であったが、気鋭の若手作家から人間国宝にいたるまで、ほとんど全てのジャンルの工芸を、広大なホテル施設の大部を使う恐らくは規模においてもその質においても、日本最大のものとも思える展覧会であった。
ここは立地は決して良いものではないのだが、全国から工芸ファンが殺到したものだ。
ただ木工芸のジャンルだけはヤマハ所属の職人による加飾の漆のものが中心であった。
しかし、このホテル施設そのものの建造物、あるいは内部の建具、金具、調度品において見るべきものが少なくなく、木工修行で日の浅いボクには古式豊かな伝統的数寄屋造りを学ぶにあたってとても有益なまたとないチャンスでもあったのだった。
残念ながら10年ほど前にはこれも途絶え、ここに訪ねるのも大門さんの個展があればこそのものとなってしまった。
さて前振りが長くなってしまったが、大門 嚴、木工展。


ボクが稚拙な紹介をするまでもなく、J・クレノフからの信頼も厚くカリフォルニア、「College of the Redwoods fineFURNITURE」での講義もこなすファイン ウッドワークでは第一人者の大門さん。
今回も新作を中心にすばらしい木工家具、木工品を旭川から持ち込んでくれている。
彼とは2年ぶりぐらいの再会だったが、展示品の解説を丁寧にしていただき、また久々に楽しい話しを伺うこともできた。
今回はご子息も参加され、より作品世界が拡がった感がある。
看板
会場はフロント脇、ギャラリーショップを上がったところのFIFA WC記念展示を兼ねた大小2つの部屋。(画像上)
道産の様々な広葉樹。ウォールナット、チェリーなどの北米材、それぞれの持つ質感、色調を木の特性を活かしながら、見事に1つの木工家具作品として昇華させている。
もうあっぱれと言うしかないようなデザインセンス、精緻な造り込み、オリジナルなハードウェア、仕口のアイディア、フォルム、斬新さである。(画像下)
作家+作品
冒頭〈ネットにへばりつくことなく‥‥〉との戒めを補強するつもりはないが、恐らくはこの展示会の情報はネット上には皆無ではないだろうか。
しかし日本における現代木工芸(Fine Woodworking)の1つの極北がひっそりと、これを愛で、使いこなすことのできる現代の数寄者向けに提示されているというのも、知られざる一面として愉快なことではないか。
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